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特集 コロナパンデミック後の病院スタッフのメンタルヘルスケア 総論:病院スタッフのメンタルヘルスケアを考える
医療スタッフを襲うコロナ・トラウマとそのケア—クラスター発生に焦点を当てて
著者: 前田正治1
所属機関: 1福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座
ページ範囲:P.109 - P.113
文献購入ページに移動われわれを襲う災害には数多くの種類がある.例えば台風や津波,地震といった自然災害や,大規模事故などの人為災害などがある.そして2019年から現在まで,世界中の人々にとって大いに脅威となった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは,その規模,影響の広さを考えてもまさに災害の一つであるといえる(Chemical, Biological, Radiological, Nuclear and Explosive disaster:CBRNE災害と呼ばれることもある).もともと感染症大流行は,自然災害とともに歴史上極めて大きな災厄であって,それに絶えずわれわれは脅かされてきたのである.19世紀の産業革命以降,科学技術災害が非常に増加した一方で,医療技術は発展し,確かにこうした感染症による災厄は減少していた.しかしながら今次のCOVID-19パンデミックは,スペインインフルエンザ以来となる大規模な流行,感染症災害となったのである.そしてCOVID-19パンデミックは,他の大規模災害の例にもれず,住民のみならず,あるいは住民以上に,その矢面に立たされた支援者,レスポンダーに重大なトラウマをもたらした.
本稿では,COVID-19パンデミック下にあって苦しむことになった,こうした支援者,とりわけ対応を余儀なくされる医療従事者に焦点を当てて,メンタルヘルス上の問題とそのケアについてまとめてみたい.とりわけクラスター発生時には,職員を襲うストレスは極限化し,そのトラウマもまさしく災害時におけるそれとなる.従って本稿では,特にクラスター発生時のトラウマやメンタルヘルス問題に焦点を当ててみたい.
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