特集 これからの重症度,医療・看護必要度
重症度,医療・看護必要度の考え方
「看護必要度」の開発過程と展望—変容する疾病に対するマネジメントツールとして
著者:
筒井孝子
ページ範囲:P.200 - P.205
■はじめに:「看護必要度」と「重症度,医療・看護必要度」
看護必要度は,患者へ提供されるべき看護量の推定と,提供されている看護サービスの量的・質的評価との連動を目指し,1996(平成8)年から研究が開始された.
一方,看護必要度が診療報酬の算定要件として利用された際の呼称は,「一般病棟用の重症度・看護必要度」「特定集中治療室用の重症度」「ハイケアユニット用の重症度・看護必要度」,回復期リハビリテーション病棟入院料1では「重症度・看護必要度」,回復期リハビリテーション病棟入院料2および3では「日常生活機能評価」注1であった.
このように看護必要度が20年近く,患者の重症度を評価し,看護要員数を規定する役割を担ってきたことは,歴史的事実として重要と考える.また,「看護必要度」の考え方を基盤とした評価や,算定における基準は,日本の臨床データの分析結果をエビデンスとして用いていることは,大きな特徴と言える.
なお,本稿における「看護必要度」は,狭義には,筆者が1997年から研究し,開発してきた看護必要度を指すが,広義には,開発された看護必要度の項目を利用した「重症度基準」「重症度,看護必要度基準」「一般病棟用の重症度・看護必要度」も含むものとする.
昨今の診療報酬改定の度に話題となり,項目や評価方法が2年ごとに変更されている「重症度,医療・看護必要度」は,前述した「重症度,看護必要度」という呼称に「医療」がついたものとして,2014(平成26)年度に導入され,さらに2016(平成28)年度に侵襲性の高い治療を評価するものとしてC項目が新設され追加された.
これらのC項目は,手術,検査等を評価する項目であるが,各医療系学会や団体が意見を出し,厚生労働省(厚労省)が意見をとりまとめた評価項目群であり,臨床における看護量や医療サービス量との関連性についての検証はなされていない.
このことは,「重症度,医療・看護必要度」と看護必要度とが,出自は同じであるが,似て非なるものであることを示している.
本稿では,前述した広義の看護必要度の開発研究の概略とその背景を説明し,次に,変容してきた患者の疾病やその病態によって,断続化されている医療システムに看護必要度がいかなる役割を果たせるかについて述べることとした.