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文献詳細

雑誌文献

病院82巻8号

2023年08月発行

特集 病院経営から考える医薬分業

医薬分業のあるべき姿

統計データから見た医薬分業の問題点

著者: 坂巻弘之1

所属機関: 1神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科

ページ範囲:P.662 - P.667

文献概要

■はじめに
 2012年1月に刊行された『医薬分業の歴史—証言で綴る日本の医薬分業史』1)は,わが国の医薬分業の歴史を学ぶうえで欠かすことのできない書であり,重要な資料集ともいえる.本書によれば,1974(昭和49)年の処方せん料引き上げをきっかけとして,その後,医薬分業が進展したことから,この年を「分業元年」とする考え方が主流とされる(1974年より前は処方箋料交付1回につき6点だったものが50点に,調剤報酬も処方箋受付1回につき80円が200円にそれぞれ引き上げられた).
 その後も,伸び悩む分業率に対して関係者のさまざまな努力があった.その一方で,いまだ医薬分業に対する批判的な意見は多い.2015年3月の規制改革会議で医薬分業の在り方が議論され,医薬分業が二度手間になる一方で便益が享受できていないなどの指摘があった.こうした批判的意見もあり,厚生労働省は,同年10月に「患者のための薬局ビジョン」を公表し,「かかりつけ薬剤師としての役割の発揮に向けて,対物業務から対人業務へ」のシフトを今後の方向性として掲げた.同ビジョン公表後8年経つが,例えば,2023年の財政制度分科会での指摘2)にもあるように,当初の医薬分業の目標や対人業務へのシフトも十分には達成できているとは言えない.
 本稿では,改めて,薬局数や調剤医療費などの統計データを見ながら,医薬分業の課題について考察してみたい.

参考文献

1)秋葉保次,中村健,西川隆,渡辺徹(編):医薬分業の歴史—証言で綴る日本の医薬分業史.薬事日報社,2012
2)財務省:財政制度分科会(令和5年5月11日開催)資料2.pp83-84,2023 https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20230511zaiseia.html
3)厚生労働省:第1回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ資料「薬局薬剤師に関する基礎資料(概要)」(令和4年2月14日).2022 https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000896856.pdf
4)OECD:Health at a Glance 2021-OECD Indicators, Pharmacists and pharmacies https://www.oecd-ilibrary.org/sites/d6227663-en/index.html?itemId=/content/component/d6227663-en
5)厚生労働省:衛生行政報告例 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/36-19.html
6)寺脇康文,飯島康典(監):世界の薬剤師と薬事制度.ムイスリ出版,2011
7)厚生労働省:国民医療費 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/37-21.html
8)厚生労働省:令和3年度 調剤医療費(電算処理分)の動向.2022 https://www.mhlw.go.jp/topics/medias/year/21/dl/gaiyo_data.pdf
9)内閣府政策統括官(経済財政分析担当):政策課題分析シリーズ14「調剤・薬剤費の費用構造や動向等に関する分析—調剤技術料の形成過程と薬局機能」(平成29年8月).2017 https://www5.cao.go.jp/keizai3/2017/08seisakukadai14-0.pdf
10)厚生労働省:第10回 医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会(令和5年3月17日)資料.p35,2023(第12回,令和5年4月27日正誤表) https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001091180.pdf

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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