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雑誌目次

雑誌文献

病院83巻1号

2024年01月発行

雑誌目次

特集 超高齢者激増時代の病院経営戦略

扉/本特集の論旨が分かるPoint一覧<超高齢者激増時代の病院経営戦略>

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.18 - P.19

 高齢化の進展が医療現場に対応の変革を求めている.急性期病院においては脳梗塞や股関節骨折といった入院目的の傷病の治療に加えて,高血圧や認知症などの併存する慢性疾患の治療やADLの維持向上のためのリハビリテーションやADLケアの必要性が高まっている.また,回復期リハビリテーションでは,重症度基準の導入により,従来よりも看護や介護でのケアを必要とする患者が増加し,現在の人員基準では対応が難しい状況が生じている.
 今回の特集では,このような高齢化の進展が,入院医療にどのような影響を及ぼしているかについて,現場の状況を明らかにし,今後の改善に向けた提言を行うことを目的とする.

わが国の入院医療における高齢化の現状

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.20 - P.26

Point
社会の高齢化に伴い複合的な医療介護ニーズを持った高齢患者の入院が増加している.この変化は,入院医療体制の在り方,救急医療の体制,職種間連携および施設間連携の在り方に変革を求める.地域医療構想調整会議では,高齢化の進行に対応するために具体的な医療提供体制の変革について議論することが必要である.

急性期病院における高齢化の現状と課題

著者: 山本修一

ページ範囲:P.28 - P.35

Point
急性期医療における高齢患者の急増と,それによる医療費の増加は,財政当局から目の敵にされ,診療報酬改定の議論も常に圧縮の方向に誘導される.医療技術の進歩によって,侵襲性の高い治療が高齢者にも適応拡大され,その一方で高齢患者の介護需要が増大する等,厳しくなる一方の急性期医療の現場の状況を直視すべきである.

回復期リハビリテーション病棟における高齢化の現状と課題

著者: 橋本康子

ページ範囲:P.36 - P.41

Point
高齢化と現役世代の減少が日本の医療介護提供体制に影響を及ぼしている.要介護者や寝たきり状態の削減が解決策となる中,回復期リハビリテーション病棟は寝たきりを防ぐ「最後の砦」としての役割を果たしている.今後もこの役割を維持するためには,急性期,回復期,在宅とそれぞれの機能向上が必要である.

高齢者の入院医療の地域連携の現状と課題

著者: 亀谷博志

ページ範囲:P.42 - P.49

Point
ケアを要する高齢者が住み慣れた地域で安心して生活を送るためには,シームレスな医療・介護サービス提供を行うことが重要である.函館市医療・介護連携協議会では,地域で質の高いサービス提供体制構築のため2018年より地域で統一された情報共有ツール「はこだて医療・介護連携サマリー」を作成し,医療と介護の多職種による内容にばらつきのない迅速かつシームレスな連携を実現させ,ICT連携にも注力している.

看護の視点からみた入院医療における高齢化の現状と課題

著者: 岡本充子

ページ範囲:P.50 - P.55

Point
高齢者にふさわしい医療・ケアを提供していくためには,統合的に患者を看てケアを提供していく必要がある.また,エンド・オブ・ライフ・ケア(EOLケア)の提供も重要である.看護職は高齢者の特性を理解し,個々の高齢者に合ったケアを提供するためのスキルを日々磨いていく必要がある.

Interview

高齢化に対応した病院医療の課題

著者: 武久洋三 ,   松田晋哉

ページ範囲:P.1 - P.8

高齢化が進展し,慢性期疾患を持つ高齢患者の急性期治療のニーズが増える中,基準リハビリテーションや基準介護を導入するなど,急性期から慢性期の全ての病棟において高齢者ケアを行える体制作りが求められている.
リハビリテーションや慢性期医療をけん引してきた武久洋三氏にその背景と課題解決に向けた展望を聞く.

研究

DPCデータを用いた急性期病床における介護需要の経年変化の分析

著者: 井原正裕 ,   神田真人 ,   井上貴裕 ,   山本修一

ページ範囲:P.56 - P.61

■要旨
 人口減少や高齢化等の変化を見据えた医療制度改革が進む中,急性期病床においても高齢の入院患者が増加しており,介護需要の変化をDPCデータにより定量的に検討した.2018年4月から2023年2月までに地域医療機能推進機構の病院群で急性期一般入院基本料を算定した患者の患者一人一日当たりの平均B得点,入院時および退院時の平均B得点,退院時B得点が悪化した患者割合,認知症(日常生活自立度判定基準Ⅲ〜M)と要介護患者の割合について一元配置分散分析法およびJonckheere-Terpstra検定を行った.傾向検定の結果,患者一人一日当たりの平均B得点(p=0.012),入院時の平均B得点(p=0.016),退院時の平均B得点(p=0.006)および退院時B得点が悪化した患者割合(p=0.040)の全てで2018年度から2022年度にかけて有意な増加が認められた.認知症および要介護では有意差は認めなかった.入院患者に良質な医療・介護サービスを提供する観点から,介護福祉士を含めた多職種でケアを提供する体制の構築が望まれる.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・108

医療法人社団秀峰会 川村病院 緩和ケア病棟|いまここ|

著者: 石井敏

ページ範囲:P.10 - P.15

■緩和ケア・ホスピス
 1967年に英国のシシリー・ソンダース医師が,がん患者が抱えるさまざまな痛みや苦痛の緩和を通して,その人が,その人らしく生きることを支えるチーム医療を実践する場として聖クリストファー病院に「ホスピス」を開設した.「緩和ケア」は「ホスピス」とほぼ同義だが,日本の制度上は「緩和ケア」の名称が使われており「がんその他の特定の疾病に罹患した者に係る身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安を緩和することによりその療養生活の質の維持向上を図ることを主たる目的とする治療,看護その他の行為」と定義されている(がん対策基本法).WHOの定義(2002年)では,「緩和ケア」は「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを,痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで,苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチ」である.
 全国の緩和ケア病棟の数は466施設,病床数は9,625床となっている(2022年11月15日時点,日本ホスピス緩和ケア協会).

臨床医が病院長になった日・1【新連載】

新米病院長奮闘記

著者: 赤井裕輝

ページ範囲:P.62 - P.63

 伝統ある月刊誌『病院』の新企画に,執筆の機会をいただきましたこと深く感謝いたしております.
 私は昭和54(1979)年に弘前大学を卒業.初期研修後,後藤由夫教授率いる東北大学第三内科(現 糖尿病代謝・内分泌内科,消化器内科)に入局,豊田隆謙先生(現 名誉教授)にご指導いただきました.この間,愛知県岡崎市の国立生理学研究所の受託大学院生として,矢内原昇教授のもとで消化管ホルモン・インクレチンを勉強しました.その後,米国NIHに2年半留学.帰国後,東北大学第三内科助手を務めた後,仙台厚生病院に新たに糖尿病内科を立ち上げ13年間,さらに恩師豊田先生が病院長の東北労災病院に異動し9年間勤務,副院長,東北大学臨床教授を務めました.糖尿病性腎症の寛解を目指す治療法の開発がライフワークとなっていました.勤務医経験の長い叩き上げの糖尿病専門医ですが,東北医科薬科大学に新設された医学部に病院教授として着任,そして内科学第二(糖尿病代謝内科)教室の初代教授に就任し大学の基礎作りに参画しました.糖尿病,肥満,脂質異常症など代謝疾患の診療を担当し,学生教育,若手医師の育成に努めました.医学書院の『今日の治療指針』に何度か執筆機会をいただき,また人気の専門誌『糖尿病診療マスター』(休刊)の編集委員も務めさせていただきました.楽しい思い出です.

医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・33

無料求人広告のトラブル

著者: 髙橋直子

ページ範囲:P.64 - P.68

■1 無料求人広告の仕組み
無料キャンペーンの勧誘には要注意
 無料求人広告のトラブルが全国で生じています.
ハローワークなどで求人を出している医療機関に,「無料キャンペーン期間だからネット求人広告も出しませんか」と電話勧誘がなされます.無料ならと応じると,申込書や契約書に,「無料期間が経過後は,事前に解約の連絡をしない限り,自動的に有料掲載に移行する」旨の条項が入っていて,無料期間終了後に,掲載料金の請求がなされます.

事例と財務から読み解く 地域に根差した病院の経営・43

医療法人林病院—病床再編と職員負担軽減で持続可能な体制へ

著者: 佐藤夏海

ページ範囲:P.70 - P.75

 医療法人林病院(以下,同院)は,福井県越前市に所在する急性期・回復期機能を併せ持つ病院である.特急も停車する武生駅の目の前にある同院は,二度の建て替えを経ながら同地で医療を提供し続け,2023年で設立110周年を迎えた.
 長きにわたって地域の急性期医療を担ってきた同院は,2014年,二度目の建て替え計画が始動したタイミングで医療機能の見直しに取りかかった.さまざまな角度からの検討を重ね,急性期病床を半減させて総病床数の4分の3を回復期とする構成に再編した.また,近年では職員の負担軽減のため,時間外診療の選定療養費導入や外来の休診日拡大も行っている.本稿では,同院のこうした取り組みについて紹介したい.

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目次

ページ範囲:P.16 - P.17

BOOK REVIEW 職場のメンタルヘルスケア入門

著者: 井上幸紀

ページ範囲:P.69 - P.69

Back Number

ページ範囲:P.77 - P.77

次号予告

ページ範囲:P.80 - P.80

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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