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雑誌目次

雑誌文献

病院83巻10号

2024年10月発行

雑誌目次

Interview

遠隔支援新時代のケア—未来の看護のあるべき姿と人材育成

著者: 高橋弘枝 ,   石川賀代

ページ範囲:P.753 - P.760

技術革新や高齢者ケアの需要増加などにより,看護師の将来的な労働形態は大きな変革が予想される.
一方,臨床の現場では,多職種によるチーム全体のパフォーマンス向上に寄与することも期待されている.
遠隔支援技術の発展は,より柔軟な働き方をもたらすのか.
未来の看護の在り方や看護師の将来像について,公益社団法人日本看護協会会長の高橋弘枝氏に聞く.

特集 遠隔支援の新時代—未来のビジョンとその実現に向けて

扉/本特集の論旨が分かるPoint一覧<遠隔支援の新時代—未来のビジョンとその実現に向けて>

著者: 石川賀代

ページ範囲:P.770 - P.771

 高齢化により増え続ける医療ニーズと,それに対応するスタッフの人材不足や業務負担が増大する中,医療現場には新たなチャレンジが求められている.
 本特集では,先端のテレヘルス技術やオンライン診療などの遠隔支援技術の可能性,そして実践を通じて,医療スタッフの業務範囲を拡大し,専門的なスキルだけでなく,柔軟に多様な業務を実践できる能力を育む可能性を考える.
 遠隔支援技術の進展とともに,地域内で人材価値の循環を行い,限りある専門職をいかに有効に活用していくのか.医療現場でマルチタスクな能力を持つ人材をどのように育成していくのか.遠隔支援技術の導入による業務の効率化や,日常業務の軽減を図り,質の高い医療サービスの提供をサポートし,このプロセスを通じて,医療のフロントラインでのマルチタスクをこなす人材の育成と,持続可能な医療提供体制に向けた新しい可能性を模索したい.

アフターコロナにおけるオンライン診療の可能性

著者: 桐山瑶子 ,   原聖吾

ページ範囲:P.772 - P.778

Point
コロナ禍における需要の高まりによりオンライン診療は社会に根付きつつあるものの,医療DXが余儀なくされているアフターコロナ期の現在,医療アクセスの確保という観点から一歩踏み出したオンライン診療の価値を再考する必要がある.

テレナーシングの重要性と人財育成における課題

著者: 亀井智子

ページ範囲:P.779 - P.785

Point
テレナーシングとは何か,定義やその動向,具体的な実践例,システマティックレビューとメタアナリシスに基づくエビデンスを紹介するとともに,テレナーシングに関する看護職への教育の現状を概説し,今後の課題を述べる.

総務省における医療・健康分野の取組について—遠隔医療およびPHRに関する取組

著者: 山崎敬太郎

ページ範囲:P.786 - P.792

Point
総務省における医療情報化の取組について紹介する.総務省においては,「遠隔医療の普及」と「PHRデータの活用」という2つの柱で取組を行っている.これらを通じて,医療情報化に貢献していきたい.

遠隔支援システムの医療における将来性

著者: 花谷行雄

ページ範囲:P.793 - P.798

Point
オンライン診療システムについては,システム的な懸念点に対する改善案を提案し遠隔診療の事例を紹介する.遠隔看護・見守り支援については,AIなどICT(Information and Communication Technology)の技術革新に伴い急速な拡大が予想され,医療の効率化や看護師の精神的な負担を軽減するために,これらの迅速な導入が求められる.今後の働き方,業務効率化のご検討の一助になればと思う.

加速する病院へのスマートフォン導入とその先の展開—5GサービスとIOWNによる未来の医療展望

著者: 久保田真司

ページ範囲:P.799 - P.805

Point
2019年4月に施行された改正労働基準法で「36協定で定める時間外労働の上限規制」が見直された.新法では,医師を含む医療従事者への労働時間規制がなされ,病院においても働き方改革が急務となっている.本稿では,スマートフォンの活用による病院DX展開,ドコモグループが考える医療分野に活用可能な新しい技術,ネットワーク戦略,NTTグループが提唱するIOWNを含め今後の展望について解説する.

遠隔体験デバイスの事例と医療分野への適用可能性

著者: 荻野孝士

ページ範囲:P.806 - P.813

Point
WEB会議システムなどのリモート手段が定着し,「現地でしか達成できない事柄」以外はリモートでも許容されるようになった.このような時代の中で,「遠隔体験とは何か」を事例を含め紹介し,遠隔体験の医療分野への適用可能性についても検討する.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・117

荒尾市立有明医療センター

著者: 三井透江

ページ範囲:P.762 - P.767

■はじめに
 「荒尾市立有明医療センター」は2023年10月に新病院を開院した.荒尾市民病院の現地建て替えとして2018年11月に基本設計を開始し「荒尾市立有明医療センター」として開院するまで5年.そして現在は既存病院解体とその後の外構工事中で,2024年11月にグランドオープンを迎える計画を紹介する.

医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・42

施設入所契約書式見直しの注意点

著者: 長谷川葵

ページ範囲:P.814 - P.818

■1 はじめに
 超高齢社会や少子化,核家族化の進展に伴い,介護事業のニーズが高まっています.高齢者向けのサービスを提供する施設には,介護保険法に基づく介護老人福祉施設,介護老人保健施設および介護医療院★1,ならびに,介護保険法に基づかない施設である有料老人ホームなどがあります.このうち,医療法人としては,病院と併設するなどして介護老人保健施設や介護医療院を開設するケースがしばしば見られますし,医療法人と同じグループの社会福祉法人が介護老人福祉施設を開設するケースもあります.また,居宅サービスとして,通所リハビリテーションおよび短期入所療養介護を提供する医療法人もあると思われます.今回は,このように,医療法人が開設する各種の介護施設における施設入所契約を検討します.
 そもそも,病院に通院する場合でも,医療行為を受ける目的での準委任契約(診療契約)が成立していると考えられますが,一般の診療契約においては,契約内容を書面化しないことが通常です.その理由としては,日々診療に訪れる多数の患者との間で契約書を交わすことが現実的ではないということも大きいでしょうが,患者の状態やタイミングによって診療の具体的な内容や期限,診療報酬などを特定することが難しいこと,準委任の内容を明確にしなくても医師は患者に対し最善の治療を行う高度な注意義務を負っていると考えられることなどがあるのではないかと考えられます★2
 これに対して,施設入所の場合,ある程度長期の継続したサービス提供が想定されますし,利用者の求めるサービスと施設側の提供するサービスについて食い違いが生じないよう内容を明確にしておく必要性が高いことや,利用者の生活の本拠となることで日常的なさまざまなトラブルも予想されることなどから,契約内容の明確化および将来におけるトラブル防止のために,契約書を交わすのが一般的ではないかと思われます.
 以下では,医療法人が設置することが多いと思われる介護老人保健施設を念頭に,施設利用契約についてご説明します.

ケースレポート 地域医療構想と病院・61

済生会熊本病院—アライアンスの深化による医療介護複合ニーズへの対応

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.819 - P.825

■はじめに
 社会の高齢化によって進む医療介護生活ニーズの複合化に対応するためには,病院も複合的なサービスを提供できる体制を整備することを求められる.その方法として本連載で紹介してきた事例としては,日本海総合病院のような連携推進法人の形成1),博仁会志村大宮病院2,3)や大誠会内田病院4),あるいは豊生会東苗穂病院5)のような医療介護生活複合体の形成がある.歴史的に小規模な中小民間病院が地域医療を担ってきた日本の場合,米国のCCRC(Continuing Care Retirement Community)やACO(Accountable Care Organization)のような大規模な複合体は形成しづらい.特に介護事業者の場合,中小零細事業者が多く,また株式会社組織の形態をとるものが少なくないことから,医療介護を総合した連携推進法人を形成することが容易でない社会風土的な条件がある.
 しかし,医療介護生活ニーズの複合化は,水平・垂直両方向の連携を求める.国も連携を推進するために,診療報酬や介護報酬で各種加算を設定しているが,なかなか連携が進まないのが現状である.介護保険制度発足当初,二木立氏(前日本福祉大学学長・名誉教授)は連携のための調整コストの高さが障害となり異なる事業者の存在を前提としたネットワーク型のサービス提供体制は国の期待通りには進まず,複合体が複合ニーズに対応したサービス提供体制としては優位になると予想した6).そして,現実は二木氏の予想したとおりになった.
 高齢化の進行は,急性期入院医療も巻き込んだ医療介護生活の連携を要求するようになっている.その背景には肺炎や股関節骨折,心不全の増悪などの高齢者救急の増加がある.そして,こうした介護と急性期医療との連携の必要性はCOVID-19の流行により顕在化した.2024年度の診療報酬および介護報酬の改定では,介護施設がその医療ニーズを支援する病院と契約することで,双方に加算が付く仕組みが導入された.そして,医療側ではその受け皿として地域包括医療病棟が新設された.この地域包括医療病棟は特に今後急増する高齢者救急の受け皿として期待されている.しかし,この仕組みについては,高齢者救急であっても救急は救急であり,看護配置基準の低い地域包括医療病棟では,それを受けきれないのではないかという意見もある.
 いずれにしても,高齢化による医療介護複合化の進展は医療・介護施設間の連携を求める.ただし,その在り方は地域におけるこれまでの医療提供体制の状況に依存する.本稿では,医療・介護施設とのアライアンスを構築することで,医療介護複合ニーズへの対応を行っている済生会熊本病院について紹介する.

臨床医が病院長になった日・10

患者目線のマインドをもった病院に—“町立温泉丸”の船長「信じて任す!」

著者: 山本康久

ページ範囲:P.826 - P.827

 この度は執筆の機会をいただきありがとうございます.大変恐縮しております.私は1956年3月14日三重県生まれの68歳です.幼少期から和歌山県に転居し小中高を過ごし,1982年和歌山県立医科大学を卒業しました.その後同大学第一内科(現 糖尿病・内分泌・代謝内科)に入局し,和歌山県内と大阪府南部の関連病院で総合内科/糖尿病代謝内分泌内科の実臨床での研鑽を重ねてまいりました.今まで故 宮村敬名誉教授,南條輝志男名誉教授(現 和歌山ろうさい病院院長),赤水尚史名誉教授(現 隈病院院長)に,現在は松岡孝昭教授にご指導をいただいております.

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目次

ページ範囲:P.768 - P.769

Back Number

ページ範囲:P.829 - P.829

次号予告

ページ範囲:P.832 - P.832

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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