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文献詳細

雑誌文献

病院83巻10号

2024年10月発行

文献概要

連載 医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・42

施設入所契約書式見直しの注意点

著者: 長谷川葵1

所属機関: 1弁護士法人 色川法律事務所

ページ範囲:P.814 - P.818

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■1 はじめに
 超高齢社会や少子化,核家族化の進展に伴い,介護事業のニーズが高まっています.高齢者向けのサービスを提供する施設には,介護保険法に基づく介護老人福祉施設,介護老人保健施設および介護医療院★1,ならびに,介護保険法に基づかない施設である有料老人ホームなどがあります.このうち,医療法人としては,病院と併設するなどして介護老人保健施設や介護医療院を開設するケースがしばしば見られますし,医療法人と同じグループの社会福祉法人が介護老人福祉施設を開設するケースもあります.また,居宅サービスとして,通所リハビリテーションおよび短期入所療養介護を提供する医療法人もあると思われます.今回は,このように,医療法人が開設する各種の介護施設における施設入所契約を検討します.
 そもそも,病院に通院する場合でも,医療行為を受ける目的での準委任契約(診療契約)が成立していると考えられますが,一般の診療契約においては,契約内容を書面化しないことが通常です.その理由としては,日々診療に訪れる多数の患者との間で契約書を交わすことが現実的ではないということも大きいでしょうが,患者の状態やタイミングによって診療の具体的な内容や期限,診療報酬などを特定することが難しいこと,準委任の内容を明確にしなくても医師は患者に対し最善の治療を行う高度な注意義務を負っていると考えられることなどがあるのではないかと考えられます★2
 これに対して,施設入所の場合,ある程度長期の継続したサービス提供が想定されますし,利用者の求めるサービスと施設側の提供するサービスについて食い違いが生じないよう内容を明確にしておく必要性が高いことや,利用者の生活の本拠となることで日常的なさまざまなトラブルも予想されることなどから,契約内容の明確化および将来におけるトラブル防止のために,契約書を交わすのが一般的ではないかと思われます.
 以下では,医療法人が設置することが多いと思われる介護老人保健施設を念頭に,施設利用契約についてご説明します.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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