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文献詳細

雑誌文献

病院83巻10号

2024年10月発行

文献概要

連載 ケースレポート 地域医療構想と病院・61

済生会熊本病院—アライアンスの深化による医療介護複合ニーズへの対応

著者: 松田晋哉1

所属機関: 1産業医科大学医学部公衆衛生学教室

ページ範囲:P.819 - P.825

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■はじめに
 社会の高齢化によって進む医療介護生活ニーズの複合化に対応するためには,病院も複合的なサービスを提供できる体制を整備することを求められる.その方法として本連載で紹介してきた事例としては,日本海総合病院のような連携推進法人の形成1),博仁会志村大宮病院2,3)や大誠会内田病院4),あるいは豊生会東苗穂病院5)のような医療介護生活複合体の形成がある.歴史的に小規模な中小民間病院が地域医療を担ってきた日本の場合,米国のCCRC(Continuing Care Retirement Community)やACO(Accountable Care Organization)のような大規模な複合体は形成しづらい.特に介護事業者の場合,中小零細事業者が多く,また株式会社組織の形態をとるものが少なくないことから,医療介護を総合した連携推進法人を形成することが容易でない社会風土的な条件がある.
 しかし,医療介護生活ニーズの複合化は,水平・垂直両方向の連携を求める.国も連携を推進するために,診療報酬や介護報酬で各種加算を設定しているが,なかなか連携が進まないのが現状である.介護保険制度発足当初,二木立氏(前日本福祉大学学長・名誉教授)は連携のための調整コストの高さが障害となり異なる事業者の存在を前提としたネットワーク型のサービス提供体制は国の期待通りには進まず,複合体が複合ニーズに対応したサービス提供体制としては優位になると予想した6).そして,現実は二木氏の予想したとおりになった.
 高齢化の進行は,急性期入院医療も巻き込んだ医療介護生活の連携を要求するようになっている.その背景には肺炎や股関節骨折,心不全の増悪などの高齢者救急の増加がある.そして,こうした介護と急性期医療との連携の必要性はCOVID-19の流行により顕在化した.2024年度の診療報酬および介護報酬の改定では,介護施設がその医療ニーズを支援する病院と契約することで,双方に加算が付く仕組みが導入された.そして,医療側ではその受け皿として地域包括医療病棟が新設された.この地域包括医療病棟は特に今後急増する高齢者救急の受け皿として期待されている.しかし,この仕組みについては,高齢者救急であっても救急は救急であり,看護配置基準の低い地域包括医療病棟では,それを受けきれないのではないかという意見もある.
 いずれにしても,高齢化による医療介護複合化の進展は医療・介護施設間の連携を求める.ただし,その在り方は地域におけるこれまでの医療提供体制の状況に依存する.本稿では,医療・介護施設とのアライアンスを構築することで,医療介護複合ニーズへの対応を行っている済生会熊本病院について紹介する.

参考文献

1)松田晋哉:地域医療連携推進法人 日本海ヘルスケアネット—医療介護資源に制約のある地方都市における医療介護サービスの確保戦略.病院79:308-313,2020
2)松田晋哉:医療法人博仁会 志村大宮病院—地域リハビリテーションのネットワーク構築を通したまちづくりへの積極的参画と地域共生型CCRCの提案.病院75:211-218,2016
3)松田晋哉:地域包括ケアシステムの中核施設としての在宅療養支援病院—志村フロイデグループの取り組み.病院81:916-922,2022
4)松田晋哉:医療法人大誠会 内田病院—ポストアキュートを担う医療介護複合体による地域活性化のモデルケース.病院77:993-999,2018
5)松田晋哉:医療法人社団豊生会 東苗穂病院—高齢化が進む都市部での地域包括ケアシステムの構築:病院を中核とした日本型Medical neighborhoodの実践.病院79:458-464,2020
6)二木立:保健・医療・福祉複合体—全国調査と将来予測.医学書院,1998
7)産業医科大学医学部公衆衛生学教室サイト:AJAPA https://sites.google.com/site/pmchuoeh/files/chv-1
8)産業医科大学医学部公衆衛生学教室サイト:NewCarest https://sites.google.com/site/pmchuoeh/files/chv-1
9)厚生労働省:令和2年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について.2022 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000196043_00005.html
10)Busby J, Purdy S, Hollingworth W:A systematic review of the magnitude and cause of geographic variation in unplanned hospital admission rates and length of stay for ambulatory care sensitive conditions. BMC Health Serv Res15:324, 2015
11)厚生労働科学研究成果データベース:厚生労働科学研究費補助金 長寿科学政策研究事業 在宅・介護施設等における慢性期の医療ニーズの評価指標等を作成するための研究(研究代表者 松田晋哉).2019
12)松田晋哉:高齢社会の医療介護連携を支える医療介護複合体の役割—済生会唐津医療福祉センター.病院82:1104-1108, 2023

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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