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雑誌目次

雑誌文献

病院83巻2号

2024年02月発行

雑誌目次

特集 在宅医療を巡る病院の経営戦略

扉/本特集の論旨が分かるPoint一覧<在宅医療を巡る病院の経営戦略>

著者: 太田圭洋

ページ範囲:P.98 - P.99

 高齢者の増加と生産年齢人口の急減が進む中で,地域包括ケアシステムの深化や医療ニーズの高い要介護高齢者が在宅で生活できる提供体制の整備が求められている.これまで在宅医療は主に診療所を中心として体制を構築する形で進んできたが,近年は大規模な在宅専門のクリニックも増加している.また,コロナ禍では,特に都市部の在宅医療体制の不足が露呈し,株式会社が関与する新たな在宅救急診療が脚光を浴びるなどさまざまな動きが出ている.今後の在宅医療体制の整備において,かかりつけ医機能を担う病院がより積極的に役割を果たしていくことが必要ではないかとの声も強い.病院が在宅医療を手がける場合,地域開業医とのすみわけをどうするのか.病院が地域の在宅医療にどのように関わっていくべきか考えてみたい.

第8次医療計画における在宅医療の体制整備について

著者: 谷口倫子

ページ範囲:P.100 - P.105

Point
第8次医療計画へ向けた国の指針では,在宅医療の体制整備を進めるため,「退院支援」「日常の療養支援」「急変時の対応」「看取り」の体制確保に向け「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」「在宅医療において必要な連携を担う拠点」を医療計画に位置付け,これらの配置を踏まえた適切な在宅医療の圏域を設定することとしており,急変時や看取り,災害時における体制の整備,在宅医療における各職種の機能や役割,介護との連携についても必要な見直しを行っている.本稿ではその見直しの要点を紹介するとともに,在宅医療における病院への期待を述べる.

現在の在宅医療体制の課題と教育

著者: 大杉泰弘

ページ範囲:P.106 - P.110

Point
在宅医療の需要急増に対し,中小病院が在宅医療を提供することは,これまで見えにくかったケアミックス病院の価値を明確化するとともに病院経営の改善にもつながる.中小病院にとって医師確保は重要な課題であるが,プライマリ・ケア外来や在宅医療,地域包括ケア病棟での魅力的な総合診療専門研修プログラムを用意することにより,中小病院にも医師が集まり,将来の在宅医療を担う人材も輩出できる.

都市部の病院における在宅医療

著者: 亀井克典

ページ範囲:P.111 - P.116

Point
高齢化,病院の機能分化が進み,療養先に関する個人の意思決定が尊重される時代となり,在宅医療ニーズは特に都市部では急速に高まっている.在宅療養を支えるバックアップベッドを有する中小規模の在宅療養支援病院の重要性は増し,都市部の中小病院の生き残り戦略にもつながっている.

地方の急性期病院とかかりつけ医機能,在宅医療

著者: 横倉義典

ページ範囲:P.117 - P.122

Point
全国の病院が医療制度改革の大きな波のなか,その役割分担を求められている.そして生産年齢人口の減少から働き手の確保も困難となっている.地方の急性期病院は自分達の得意とする分野,必要とされている部門を認識し,地域医療を支える病院への機能転換を大胆に考える時期にきている.

地域包括ケア病棟を在宅医療に活用する—在宅専門診療所と地域包括ケア病棟の2施設を運営してきた立場から

著者: 水野慎大

ページ範囲:P.123 - P.129

Point
地域包括ケア病棟は在宅復帰支援と医療従事者育成に適した環境である.在宅医療機関と急性期医療機関の双方が地域包括ケア病棟の活用法に習熟することで,多くの患者が長期的な在宅療養を実現するために必要な地域包括ケアシステムの充実につながる.

在宅診療を行う診療所からみた病院の在宅医療への貢献と役割分担

著者: 権頭聖

ページ範囲:P.131 - P.142

Point
かかりつけ医が在宅医療に参加しやすくするためには敷居を下げる必要がある.病院機能を有効に活用し,病診連携・多職種連携を進化させたい.在宅医療専門クリニックや救急往診専門クリニックとの協働も24時間体制の負担軽減が期待できる.またDXによる効率化の推進が望まれる.

Interview

超高齢社会の在宅医療—変わりゆく中小病院の役割

著者: 鈴木邦彦 ,   太田圭洋

ページ範囲:P.81 - P.89

超高齢化の進展により在宅医療のニーズが高まる中,病院は在宅医療にどう関わるべきか.
在支診や在支病の制度の現状をどう捉えるか.
中医協委員や医師会役員を歴任し,日本在宅療養支援病院連絡協議会会長を務める鈴木邦彦氏に聞く.

研究

医療分野でのクラウドファンディングの活用状況—事例集積による有用性評価

著者: 五十嵐中 ,   市川衛 ,   金久保智也

ページ範囲:P.143 - P.148

■要旨
目的|幅広い対象からの資金調達目的で利用が進むクラウドファンディング(CF,インターネットを通じた寄付募集)の医療分野での活用状況を分析する.
方法|CFの最大手であるREADYFOR株式会社と共同で,同社で2021年に行われた「医療系」カテゴリのプロジェクト526件について,CFの目的・達成率・達成金額と達成状況に影響を与える因子を分析した.
結果|385件が分析対象となった.解析時点でのCF成功事例の中央値は150万円・最大値は6400万円であった.達成金額が1000万円以上のCFは29件であった.CFの目的は,障害者支援(80件)・自組織の医療機関の支援(45件)・患者支援(39件)が多くみられた.達成状況に影響する因子の解析では,「自組織の医療機関の支援」「基礎研究・臨床研究の支援」が達成率・達成金額を有意に上昇させる因子となった.
結論|医療機関のインフラ支援や研究支援のツールとして,CFの有用性が明らかになった.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・109

国立循環器病研究センター

著者: 河合慎介

ページ範囲:P.90 - P.95

 国立循環器病研究センターは,国立がん研究センター,国立精神・神経医療研究センター,国立国際医療研究センター,国立成育医療研究センター,国立長寿医療研究センターと共に,国民の健康に重大な影響を及ぼす特定の疾患などに係る医療について,調査,研究,技術の開発,これらに密接に関連する医療の提供,技術者の研修などを行う国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)である(図1).
 本稿ではこの高度専門機関が地域とどのように共存しているのかに着目したい.

医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・34

—医療費債権回収(3)—患者が破産したときの対応

著者: 進藤諭

ページ範囲:P.150 - P.153

■1 破産手続の概要
 破産手続とは,支払不能★5または債務超過にある債務者の財産などを清算する手続きです(破産法第1条及び第2条第1項).債務者がその債務の全額を支払うことができなくなった場合に,債務者の財産を売却するなどして金銭に替え,これを債権者に公平に分配して清算することまでが破産手続であり,清算後に残った債務を支払う責任は残るため,債務者がこれを免れるためには,免責手続において免責許可決定(破産法第248条,第252条)を受ける必要があります.もっとも,実際には破産手続が終了すれば特別な事情がない限り★6免責許可決定がなされる運用となっているため,破産=債務の免責という理解もあながち間違いではありません.
 破産手続は,裁判所に申立てをして裁判所が破産手続開始決定をすることにより始まりますが,債務者の財産を換価して清算する手続きですので,破産管財人を選任して換価作業を行い,その金銭を原資として配当を行うのが原則的な形になります(破産手続が始まると,各債権者は基本的に手続き外で個別に債権を行使することができなくなり,破産手続を通じて配当として弁済を受けることになります).他方で,債務者にめぼしい財産がなく,換価・配当ができない場合には,例外的に,破産手続開始決定と同時に破産手続の廃止決定を行い,破産手続を終了させることになります(破産法第216条).これを同時廃止といいますが,例外といいつつも,個人事業主ではない個人の破産の場合(おそらく,患者が医療費を滞納して破産する場合の多くがこの場合に含まれます),ほとんどが同時廃止により処理されています.また,破産手続を開始したものの破産管財人による調査の結果,配当実施に至らないことが判明した場合にも破産手続を廃止して手続きを終了することになりますが,これを異時廃止といいます(破産法第217条).

ケースレポート 地域医療構想と病院・57

人口過疎地域における病院医療の課題—釧路医療圏の訪問調査から

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.154 - P.161

■はじめに
 高齢社会は生活の安心に関心が集まる.COVID-19の流行は,地域の安心を保証する医療機関や介護施設の重要性を再認識させたはずであった.しかし,いつの間にか,パンデミック時にその必要性を強調された医療制度改革のほとんどの議論に対する関心が薄れてしまっているように見える.特に医療資源の少ない地方では,地域の安心を保証する社会的共通基盤としての病院の価値が認識されたはずであったのに,コロナ後に期待されたそうした地方の医療機関への支援はほとんど行われていない.これらの地方では,医療サービスの基盤となる一般経済状態も悪化している.そして,こうした環境条件が病院経営に負の効果を与えている.また,これまでの一連の医療制度改革の負の影響が出ていることも否定できない.筆者はこうした問題意識から,ここ数年地方の病院の訪問を行っている.本稿では北海道釧路医療圏の病院の訪問調査の結果をもとに,上記の問題について論考してみたい.

臨床医が病院長になった日・2

医療・介護分野の戦国時代

著者: 今井裕一

ページ範囲:P.162 - P.163

■鉄則は誰も教えてくれない
 2017年に14年間勤務した大学病院を定年退職し,病院長として着任した.社会医療法人厚生会が指定管理を受け,7年間での累積赤字が23億円あることが分かったのは,着任1カ月後であった.重圧は感じたが,理事長の理念に賛同できることが多かったし,医師21人,看護師100人,全職員をみていて十分改革できるという感触を得た.システムを徐々に改革し現在医師数は40人となり,赤字は解消し黒字経営に転換できている.
 病院が存続していくためには,いくつかの鉄則があることをこの7年間で学習した.ただ,この鉄則は,大学でも病院でも誰も教えてくれない.病院運営に関心のある人しか気がつかない.

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目次

ページ範囲:P.96 - P.97

BOOK REVIEW 職場のメンタルヘルスケア入門

著者: 髙﨑正子

ページ範囲:P.149 - P.149

Back Number

ページ範囲:P.165 - P.165

次号予告

ページ範囲:P.168 - P.168

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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