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雑誌目次

雑誌文献

病院83巻3号

2024年03月発行

雑誌目次

特集 病床稼働率アップ!—PFM導入がもたらす絶大な効果

扉/本特集の論旨が分かるPoint一覧<病床稼働率アップ!—PFM導入がもたらす絶大な効果>

著者: 中村康彦

ページ範囲:P.186 - P.187

 PFM(Patient Flow Management)とは,入退院マネジメント強化の手法で,入院患者の一貫した支援のことを指す.入院予定の患者について情報をあらかじめ把握し,入退院含め病床の管理の効率性を高めることを目的とする.導入することにより平均在院日数の短縮,病床稼働率の向上,新入院患者数の増加,救急搬送患者の受け入れ数拡大,手術件数増,在宅復帰率の向上などに効果がある.また,入院患者の基本的情報を入院前に収集しアセスメントすることで,より安全で安心できる入院生活や退院支援を行うことができ,患者の身体的・精神的・社会的背景を把握し,院内外の多職種と連携して入院から退院まで医療・看護・介護の必要な援助を切れ目なく受けられるよう支援する.
 今後,さらなる高齢化の進展により,複数の慢性疾患を持った退院困難患者の増加が予想される.それらに対応するためにPFMは有効であると考え,導入病院の成果や今後の展望を特集する.

—社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部神奈川県—済生会横浜市東部病院—PFM導入後8年経過して:継続の秘訣とその効果

著者: 谷口英喜

ページ範囲:P.188 - P.195

Point
済生会横浜市東部病院の患者支援センター(TOPS)は,スキルミクス型の実行型チームである.当院では,術後回復促進策をTOPSの主導で8年前より導入し,その主たる活動内容がPFMであった.TOPSの支援は,さまざまな医療者のタスクシフト/シェアを促進し,手術件数の増加および在院日数の短縮に貢献している.現在では,非手術患者に対してもPFMが広がっている.

—医療法人社団武蔵野会—TMGあさか医療センター—麻酔科術前外来から入院サポートセンターへの転換としてのPFM導入

著者: 成島光洋

ページ範囲:P.196 - P.203

Point
PFMにより入院前から退院後のイメージを共有できるように多職種協働で患者の意思決定支援をすることで,患者参加型の医療を推進する.
今後の課題解決策としてPFMにおける情報提供・情報収集にDXを取り入れることで,生産年齢人口減少のトレンドにおいても生産性を向上させ,かつ同時に医療の質を向上させる.

—医療法人社団協友会—彩の国東大宮メディカルセンター—PFM導入による周術期管理の質の向上と効果

著者: 藤岡丞 ,   西崎加代子

ページ範囲:P.204 - P.209

Point
当院では2020年から多職種によるPFMを開始し,現在は予定手術患者の約40%に介入して,周術期管理の質向上に寄与している.また医師・看護師を対象としたアンケートからは,業務負担軽減にも効果を発揮していることが分かった.さらに患者・家族を対象にしたアンケートからは,入院中・退院後の生活に対する不安軽減にも効果を上げていることが明らかになった.

—医療法人大誠会—内田病院—PFMを考えた良質な連携:慢性期・施設・在宅での事例

著者: 田中志子

ページ範囲:P.210 - P.216

Point
医療介護連携では,各フロアでのカンファレンスや稼働状況共有の会議が多層的に展開され,病院,介護事業所,地域の医療機関との協力体制が効果的に構築されている.会議では,PFMに則り,ベッド状況や待機者の確認,課題の共有,いるべき場所の検討が合議で進行され,入退院や入退所のスケジュールが効率的に調整され,患者の望む生活へのシームレスな移行が実現できている.

東京慈恵会医科大学葛飾医療センター—地域密着型の病院としてPFM導入がもたらした効果

著者: 山下正和

ページ範囲:P.217 - P.224

Point
PFMは病床の効果的な活用とよりよい医療を提供する患者の入退院のコーディネートを目的として広まった.しかし,2013(平成25)年に地域包括ケアシステムの構築が厚生労働省から出され,現在では病院に求められる「病院完結型」から「地域完結型」への変換の大きな鍵となり院内外の連携を含めた重要なシステムであると考える.

—医療法人済衆館—済衆館病院—ケアミックス病院には適切な病棟構成による院内PFMが欠かせない

著者: 今村康宏

ページ範囲:P.225 - P.233

Point
地域密着型のケアミックス病院においては,入退院前後のPFMのみならず,院内における適切なPFMが必須である.地域医療ニーズに基づく適切な病床配分を行った上での各病床機能の適切な横連携に加え,ベッドコントロールチームによる患者ごとの最適な病床移動が,患者への治療効果を高め,業績向上にもつながると考える.

Interview

PFM導入病院の成果と今後の課題

著者: 山本賢司 ,   中村康彦

ページ範囲:P.169 - P.176

入院前から退院後まで一貫して患者支援を行うPFM.
2018年度診療報酬改定から「入院時支援加算」として入院前からの支援が評価されている.
PFMを導入する上で重要なことや得られる効果とは何か.
時代に先駆け,PFMを導入した東海大学医学部付属病院の患者支援センター長・山本賢司氏に聞く.

報告

病院の建築事業費の削減可能性に関する研究

著者: 田村桂一 ,   荒井耕

ページ範囲:P.234 - P.239

要旨
 病院建物の建築事業費の増減について調査を行い,建築事業費の特徴と削減可能性を明らかにする.調査は病院と,病院建物の建築を受注している建築事業者を対象として実施し,病院側と建築事業者側の両者の調査結果を組み合わせて検討を行った.
 建築事業者に対する調査の結果から,プロセスが進むにつれて建築事業費の削減可能性が減少していくという考えは,建築事業者にとって共通の知見であることが分かり,また,病院に対する調査の結果から,建築事業者が主張しているこの考えは,妥当性があることが分かった.
 同じく病院に対する調査の結果からは,企画・構想段階の建築事業費の予算額と比べて,最終的な実績額は,平均して1割程度増加しており,当初からこの程度の増加は織り込んだ上で,企画・構想段階の予算額を設定しておく必要があると考える.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・110

海老名総合病院

著者: 江川香奈

ページ範囲:P.178 - P.183

■はじめに
 海老名総合病院は,1983年に神奈川県海老名市に設立され,埼玉県,神奈川県において,医療・介護・保健・福祉サービスを提供している社会医療法人ジャパンメディカルアライアンスによって運営されており,救急医療,および「がん」「脳卒中」などの治療に主軸をおいた診療活動を担っている.1983年に本館(407床で開院後,1991年に381床へ減床),2001年に新館(現・東館)(99床)が建設されたが,本館の老朽化とさらなる地域への急性期医療の提供の充実を図るため,2023年に新棟(現・西館)の建設,およびこれに伴う本館と東館の改修工事(2023年10月完了)が行われた(図1).本館と東館はそれぞれ異なる設計者,施工者に発注していたが,病院の将来を構想するに当たり,経営ビジョンを実現する病院建築の設計・監理を行える専門的な医療施設建設の知識と設計体制を有する設計者を選定すること,および適正なコスト管理を実践することを勘案し,コンストラクション・マネジメント(以下,CM)会社によるサポートを依頼した.
 本稿では,CM会社の介入による病院建設という視点に基づき,西館建設までの過程と,経営ビジョンを反映させた既存施設を含めた全体計画,および西館の建築設計上の特色についてまとめる.

医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・35

医療機関のM&A

著者: 嶋野修司 ,   長谷川葵

ページ範囲:P.240 - P.245

■1 医療機関の承継
 医療施設動態調査★2によれば,この20年間,病院数は一貫して減少しているものの,診療所,中でも無床一般診療所が増加しており,病院・医院(以下,病医院)の総数としては増加しています.
 このように規模の小さな病医院が増加してきましたが,労働力人口の減少に伴う医師・看護師・その他の医療従事者のスタッフ確保の問題に加え,施設の老朽化,経営者の高齢化,後継者の不在といった問題から,今後は廃業する病医院の増加が見込まれます.

事例と財務から読み解く 地域に根差した病院の経営・44

社会医療法人恒心会 恒心会おぐら病院—多職種の専門性を引き出し患者ファーストの医療を

著者: 佐藤夏海

ページ範囲:P.246 - P.250

 鹿児島県鹿屋市に所在する恒心会おぐら病院(以下,同院)は,整形外科・消化器外科・リハビリテーション科・脳神経内科を強みに急性期から回復期までの医療を担う病院である.同院は基本方針に「患者さん中心のチーム医療」「技術向上と人財育成」「地域連携」を掲げるとおり,多職種の専門性を生かしながら患者ファーストで質の高い医療を追求してきた.その取り組みを紹介したい.

臨床医が病院長になった日・3

打ちのめされても,這い上がらなくては…

著者: 𠮷岡成人

ページ範囲:P.251 - P.252

 —「月曜の朝から,挨拶なんて勘弁してほしいよね…」と,皆さん思われているでしょうが,このなかで,いちばん「勘弁してよね…」と思っているのはわたくし自身だと思います….

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目次

ページ範囲:P.184 - P.185

Back Number

ページ範囲:P.253 - P.253

次号予告

ページ範囲:P.256 - P.256

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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