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雑誌目次

雑誌文献

病院83巻4号

2024年04月発行

雑誌目次

Interview

ニーズに合わせた地域医療連携推進法人の有効活用—医療安全を地域に広げ,人材を育成する

著者: 湯澤由紀夫 ,   川原丈貴

ページ範囲:P.257 - P.265

尾三会は制度施行日の2017年4月2日に誕生した地域医療連携推進法人である.
7年が経過して本年(2024年)4月に本制度が見直されたが,地域医療連携推進法人にはどのような活用が期待できるのか.
高度急性期医療と地域包括ケアの連携モデルを構築する尾三会の代表理事・湯澤由紀夫氏に地域医療連携推進法人活用の実際を聞く.

特集 地域医療連携推進法人の成功事例

扉/本特集の論旨が分かるPoint一覧<地域医療連携推進法人の成功事例>

著者: 川原丈貴

ページ範囲:P.274 - P.275

 2017年4月2日に施行された地域医療連携推進法人は,2023年10月現在35法人を数えるようになった.2023年の医療法改正により,この2024年4月に個人立の医療機関等も参加できる新たな仕組みが施行された.今後の病院が生き残るための戦略の一つとして,地域医療連携推進法人が挙げられる.
 地域医療連携推進法人には開設主体を問わず,関係者の戦略や地域のニーズに沿ったさまざまな活用方法がある.法人がどのような意図で設立され,どのような設立時の課題があり,どのような成果を生み出し,制度としてどのような課題があるのか.本特集では,今後地域医療連携推進法人の活用を考えている読者の参考となるように先行事例を紹介する.

【総論】

地域医療連携推進法人制度の概要

著者: 加藤光洋

ページ範囲:P.276 - P.280

Point
2023(令和5)年10月1日現在,全国で35法人が認定されている地域医療連携推進法人.2024(令和6)年4月1日からは,限られた医療資源をより有効活用できるよう個人立の医療機関等も参加できる新たな仕組みが施行されている.今回,改めて制度創設の経緯を振り返るとともに,制度概要と設立事例を概観する.

地域医療連携推進法人に求められる役割

著者: 権丈善一

ページ範囲:P.281 - P.287

Point
人口が増加していた時代に,医療提供体制は,異なる個々の経営体の競争心を利用して量的な拡張が進められてきた.しかし,そのゲームのルールの下で作られた提供体制は,高齢化と人口減少による医療ニーズの質と量の変化を受けて変革を求められて久しい.今の時代のルールは競争ではなく協調であり,最適なツールは,理念を共有する仲間との協調をベースとした地域医療連携推進法人となる.

【事例】

—地域医療連携推進法人—湖南メディカル・コンソーシアム—連携推進業務の事業化による運営とデジタルを活用したPFM・間接業務統合

著者: 䕃山裕之

ページ範囲:P.288 - P.293

Point
地域医療連携推進法人は,地域医療構想を実現することを最大の目的とする法人であるが,法人の運営費をいかに賄うかという問題があることも事実である.そこで,私たち湖南メディカル・コンソーシアムは連携推進業務の一部をサービス事業化し,参加法人がサービスのメリットを享受した対価として支払う手数料等によって適正な利益を確保し,これを運営費に充てることとした.

—地域医療連携推進法人—さがみメディカルパートナーズ—「連携以上,統合未満」の地域医療連携推進法人制度でサービス提供の効率化を目指す

著者: 服部智任

ページ範囲:P.294 - P.299

Point
さがみメディカルパートナーズの所在する神奈川県・県央二次医療圏は今後も人口増加が予想される地域であるが,いずれ人口減少に転じる.人口当たり医療従事者数の少なさは全国ワーストに近く,働き方改革の施行で働き手不足が大きな問題となる中,地域医療連携推進法人の枠組みを利用し,サービス提供の効率化を目指した.地域医療連携推進法人制度は地域包括ケアシステムを構築する上で,有効なプラットホームになり得る.

—地域医療連携推進法人—備北メディカルネットワーク—過疎地域における医療提供体制,医療従事者の確保育成の仕組みづくり

著者: 中西敏夫 ,   永澤昌

ページ範囲:P.300 - P.306

Point
2017年4月に認定された備北メディカルネットワークは,広島県東北部,備北(三次市,庄原市)二次医療圏域で急性期機能を持つ4病院(市立三次中央病院,三次地区医療センター,庄原赤十字病院,西城市民病院)から構成される.医師確保対策などの設立の背景や経緯,今後の方針や課題について述べる.

—地域医療連携推進法人—川西・猪名川地域ヘルスケアネットワーク—赤字市立病院存続の解決策・地域包括ケア構築に連携法人を活用

著者: 藤末洋

ページ範囲:P.307 - P.314

Point
川西・猪名川地域ヘルスケアネットワークは,川西市医師会・歯科医師会・薬剤師会ならびに川西市・猪名川町内の法人格を有する全ての病院と行政が理事に就任する.当法人では,赤字の市立病院の存続問題解決に地域医療連携推進法人制度を活用した.その際,長年の地域ケア協議会での顔が見える信頼関係の醸成が土台となった.本制度は,病床再編統合にとどまらず,地域包括ケアシステムを構築するための有効な手段になる.

—地域医療連携推進法人—あげおメディカルアライアンス—組織間の「遠慮」を排除した関係を構築し共に課題解決にあたる

著者: 徳永英吉

ページ範囲:P.315 - P.319

Point
あげおメディカルアライアンスは2023年3月に認定を受けた,埼玉県では初の地域医療連携推進法人である.法人の立ち上げにはさまざまな障壁(特に行政)があり,かなりの時間と労力を要する.目的を明確にして十分な理解を得るべく説明をすれば,地域の理解は容易に得られる.最初から高い目標を掲げず,参加法人が集まって何をするかを決定することで,法人としてのガバナンスを構築することができる.

特別記事

—雑誌『病院』×全日病学会コラボレーション企画—ヤングフォーラム・リターンズ!!—前編

著者: 高橋泰 ,   相澤克之

ページ範囲:P.322 - P.325

●「ヤングフォーラム・リターンズ!!」の企画趣旨
高橋 泰
 全日本病院協会(全日病)は,年に1回,学術の研修の場として全日本病院学会を開催している.そして,第64回大会が,2023年10月14〜15日に広島で開催された.「ヤングフォーラム・リターンズ!!」は,大会2日目に,雑誌『病院』と全日病学会のコラボレーション企画として開催され,3人の若手経営者である講師から,厳しい時代に持続可能な病院の戦略が語られた.
 3人の講師には2つの共通点がある.第一の共通点は,3人ともに父親が偉大な経営者であることである.1人目の講師である慈泉会相澤病院(長野県松本市)の相澤克之副院長の父親は,日本病院会会長の相澤孝夫氏であり,本人も父親のことを「スーパーマンのような経営者」と述べている.2人目の董仙会恵寿総合病院(石川県七尾市)の神野正隆理事長補佐の父親は,日本を代表する先進的な病院経営者であり,全日本病院協会副会長である神野正博氏である.3人目の真栄会にいむら病院(鹿児島県鹿児島市)理事長の新村友季子氏の父親は,にいむら病院創設の1980年より当時の泌尿器科の最先端技術をいち早く鹿児島へ導入し,名をはせた新村研二氏である.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・111

兵庫県立はりま姫路総合医療センター

著者: 小菅瑠香

ページ範囲:P.266 - P.271

 下りの山陽新幹線で姫路駅に到着する少し手前,車窓の右手に大きな建物が連なっている.ここは姫路駅周辺の地域整備計画「キャスティ21」の一部として開発された区域で,芝生の大屋根を持つのが姫路市文化コンベンションセンター(アクリエひめじ).それにつながる地上12階建ての建築が,今回紹介する兵庫県立はりま姫路総合医療センター,通称「はり姫」である(図1).患者・職員に広く募集して決まった愛称だそうなので,以下,親しみをこめて同センターを「はり姫」と表記する.「はり姫」は2022年5月1日,県立姫路循環器病センター(以下,循環器病センター)と製鉄記念広畑病院(以下,広畑病院)の統合再編により開院した.

医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・36

市販後調査の留意点—業者のプロモーション対応とコンプライアンス

著者: 鳥山半六 ,   久保田萌花

ページ範囲:P.328 - P.331

■1 国公立病院の収賄事件(Q①)
 Q①の設例は,最近実際に報道された事件を参考にしています.
 事案は,国立病院の医師が医療機器メーカーの製造販売するステントを同病院で優先的に使用し,その見返りに同社から賄賂を受け取ったとして逮捕,起訴されたものです.報道によると,同医師は,「市販後調査」の名目で,ステントの使用感や有効性の報告書を作成する対価として,ステント1本ごとに1万円を自身の口座に振り込ませて受け取る契約をしていたとのことです.

ケースレポート 地域医療構想と病院・58

地域医療構想策定における地区診断の必要性—釧路医療圏を事例として

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.333 - P.337

■はじめに
 現在,厚生労働省においては,2040年を見据えた新しい地域医療構想の検討が始まっている1).現在の地域医療構想で示されている機能別病床数の推計値に対しては,財務省や財界からはその進捗状況が芳しくないことが批判されている2).他方,医療業界からは,高度急性期,急性期,回復期という区分設定そのものに無理があること,一般病床に限れば,ほぼ推計結果に近い病床数になっていることが指摘されている.また,いまだに点数で単純に機能を区分したという誤解があり,より精緻な推計を行うべきだという意見もある.筆者はこの推計を行った当事者であるが,あくまで点数を参考に地域別に傷病別,性年齢階級別の有病率を求めたのであって,単純な計算をしたわけではない.この点については拙著で説明しているので参照していただければと思う3)
 さて,地域医療構想であるが,この検討に当たっては研究班が作成した,個々の地域の傷病構造の変化を可視化し,またシミュレーションができるツールが都道府県に配布されていた.その意図は,このツールを用いて地区診断をしてもらい,その結果を踏まえて,各医療構想区域で,関係する医療機関が自施設の将来の役割を検討してもらうためであった.しかし,残念ながら,このような取り組みが行われた地域はほとんどない.また,ツールの更新も行われていない.地区診断なしで,機能別の病床数の議論をしても,意味のある方針は得られないだろう.加えて,今後の高齢化の進展と医療介護の複合化の進展を考えれば,議論すべき重要課題は慢性期の医療介護提供体制を,高齢者救急への対応も含めて具体的に考えることだろう.しかし,医療関係者だけでなく,介護関係者も含めて地域包括ケア体制の在り方を検討している地域は,筆者の知る限り岡山県4)など少数にとどまる.
 新しい地域医療構想においては,地区診断を地域の関係者全体で行い,その結果を踏まえて,地域全体として目指すべき改革の方向性と,それに対応した自施設の機能の在り方を具体的に考える体制づくりが必要である.拙著でも紹介しているように3),そのためのデータは十分にある.
 そこで,今回は前回紹介した釧路医療圏について5),SWOT分析の枠組みを使って,同地区の地区診断と今後の対策について考えてみた結果を紹介してみたい.なお,この地区診断の内容は筆者の視点で考えたもので,釧路医療圏の関係者の意見ではない.地域の実情を詳細に把握していない一研究者の見解であり,的外れな内容もあると思う.したがって,本稿の内容に関する一切の責は筆者に帰するものであることを最初にお断りしておく.

臨床医が病院長になった日・4

大学病院から民間病院へ

著者: 渡辺憲太朗

ページ範囲:P.338 - P.339

 過日医学書院から原稿依頼の郵便物が届いた.その文面をみて苦笑いしてしまった.医学・医療雑誌にもさまざまなテーマ・切り口があるものである.フットワークは軽いつもりでいるが,齢七十二の今,一民間病院の院長として昨今流行りの情報発信手段を用いて己の意見を述べることには憚りがある.しかし活字にすることに抵抗はなく,駄文と分かっていても物書きのような気分になれる.むしろいい機会と捉え,月刊誌『病院』からの依頼をすすんで引き受けることにした.

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目次

ページ範囲:P.272 - P.273

BOOK REVIEW 問題解決型救急初期診療 第3版

著者: 薬師寺泰匡

ページ範囲:P.321 - P.321

Back Number

ページ範囲:P.341 - P.341

次号予告

ページ範囲:P.344 - P.344

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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