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雑誌目次

雑誌文献

病院83巻5号

2024年05月発行

雑誌目次

Interview

多様な働き方を生かせる人事管理の柔軟性

著者: 今野浩一郎 ,   石川賀代

ページ範囲:P.345 - P.353

急速な少子高齢化と労働人口の減少が進む中,医療従事者の労働体系と人材育成の枠組み,さらには組織そのものの在り方は,大きな変革を迫られている.
企業におけるミドル・シニア層も含めた人事管理のエキスパートである今野浩一郎氏に,エイジダイバーシティの推進が重要になるこれからの時代の人事管理に求められる施策や価値観について聞く.

特集 働き方改革を乗り越える組織変革と人材育成—エイジダイバーシティの価値を引き出す

扉/本特集の論旨が分かるPoint一覧<働き方改革を乗り越える組織変革と人材育成—エイジダイバーシティの価値を引き出す>

著者: 石川賀代

ページ範囲:P.362 - P.363

 今後の社会は,急速な高齢化と労働人口の減少に直面し,医療従事者の労働体系と人材育成の枠組み,そして組織そのものの形態も,変革の道を避けては通れない.これまでの階層型組織からの脱却と,自主的・自立的な組織文化の確立は,持続可能な病院運営を実現するための不可欠な要素である.
 人を中心に据えた自立型の組織構築の実現には,所属機関の使命と存在意義への深い理解,相互の信頼の醸成,個々の特性を最大限に活用する人材配置と育成,そして効果的な人事制度の設計,ICTを駆使したコミュニケーションの革新が重要な課題となる.現代の多様で柔軟な価値観を受け入れ,時代のニーズに即した組織変革を推進することが求められている.
 また組織変革と人材育成は不可分な関連性を持ち,ICTを活用した個別最適な教育環境の設計と,リスキリングによるキャリア開発を推進し,職員一人一人の主体性と自律性を高めつつ,その成長を支援する体制の構築が必要である.
 個々のパフォーマンスの評価と適切なフィードバックを組み込み,革新に一歩を踏み出すスタッフを全面的に支援する.これがマルチタスクに対応できる人材の育成と,スタッフの職場満足度およびウェルビーイングの向上に資すると考えている.
 本特集では,激動の時代背景において,個々がその能力を最大限に発揮し,人々の真価を高める新たな働き方,組織の形成,人材育成,および人材管理の手法について提言する.

これからの人材マネジメント

著者: 河野秀一

ページ範囲:P.364 - P.368

Point
これからの病院職員は,環境変化に対応するために,本質を捉える「概念化スキル」を持つことが必要であり,管理者はその教育の仕組みを整備すべきである.しなやかで強い「学習する組織」を構築するために,マネジメントリフレクションが有効である.

本当に良い組織って何だろう—ティール組織の作り方ともたらすもの

著者: 嘉村賢州

ページ範囲:P.370 - P.375

Point
人類が誕生して以来の組織形態の歴史を整理し,来たるべき新しい時代の組織形態を理解する.また在宅ケア組織の事例を基に,具体的に人間中心の組織をどのように作っていくのか検討していく.

マイクロソフトによる業務改革の実践と医療機関への転用

著者: 村澤直毅

ページ範囲:P.376 - P.381

Point
働き方改革を推進することはカルチャーを変革することでもある.限られた時間の中でいかに早く決めて早くやるためにはどのような組織風土,制度が必要なのか,それをどのように実現するのか,民間企業の例を一つの参考として医療機関でどのように転用できるか検討する.

「いきるを支える」医療・介護の実践

著者: 田渕典子

ページ範囲:P.382 - P.388

Point
患者の高齢化や働き手不足の中で,これからの病院には,年齢だけではなく人種・国籍・宗教などの多様性の変化への対応や,働き続けられる環境整備が必要となる.また,患者が住み慣れた地域で,その人らしい生活を継続するためには,医療・介護・福祉の連携と働く職員の教育が課題となる.石川ヘルスケアグループの人材育成に向けた体制整備と,ICTの活用を推進し病院コンセプトである「いきるを支える」の実践に向けた看護職・介護職の現場教育について述べる.

これからの教育のかたち

著者: 清水修

ページ範囲:P.390 - P.395

Point
医師の働き方改革,入院患者の高齢化,新型コロナウイルス感染症患者の受け入れなど,看護を取り巻く環境は,コロナ禍前よりも多忙な状況となっている.
そんな中,生涯学習が今後の看護師には必要不可欠となってきている.学びを止めないために,現場での取り組みを踏まえたこれからの「教育のかたち」づくりをお伝えしたいと思う.

若者が幸せに活躍する職場,どうつくる?

著者: 古屋星斗

ページ範囲:P.396 - P.401

Point
若手育成が難しくなったと言われるが,その理由は「若者が変わった」ことではない.職場環境の変化,働き方改革などの法改正で転換した日本の職場において,職場だけで育てることは限界に達しつつある.次に必要なのは育て方改革だ.

特別記事

—雑誌『病院』×全日病学会コラボレーション企画—ヤングフォーラム・リターンズ!!—後編

著者: 神野正隆 ,   新村友季子

ページ範囲:P.404 - P.407

※前号(前編)に引き続き,昨年の第64回全日本病院学会in広島にて開催された「ヤングフォーラム・リターンズ!!」の講演内容を掲載します.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・112

社会医療法人 石川記念会 HITO病院

著者: 宇田淳

ページ範囲:P.354 - P.359

■はじめに
 1976年,石川外科医院を開院以来,二次救急病院として地域医療を支えてきた旧石川病院は,地域医療再生計画に伴う病床再編により104床移譲され,新病院として新築転移が決定した.2012年12月,「医療法人」から「社会医療法人」に変更,2013年4月1日,医療変革の流れの中で病院名を一新し,“Human 1st.”を行動規範に掲げ,具体的なアクションであるHumanity,Interaction,Trust,Opennessの頭文字から名付け,HITO病院と改名した(表1).地域ニーズに応え,急性期病棟の亜急性期病床を2014年9月に35床の地域包括ケア病棟として開床後,2015年5月に45床,16年10月に53床へと増床し,2024年1月今後の医療情勢を見据え29床減床し現在の病棟構成(228床)に至る.
 HITO病院の建つ四国中央市は,愛媛県の東の端に位置する.北は瀬戸内海に面し三島川之江港を海の玄関口とし,製紙産業を中核とする産業地帯,南は,法皇山脈と四国山地との間に吉野川支流の銅山川を有する水源地の豊かな自然環境に囲まれた閑静な住宅地に立地する.
 外観は,病院のコンセプトである「いきるを支える」を表現した安定感のあるデザインとしている.落ち着いた色彩の低層部と,白を基調とした高層部はHITO病院の先進性を表すとともに,周辺の山並みや海,空などの自然に映える地域のランドマークとなっている(図1).
 高度急性期から急性期,地域包括ケア病棟,回復期リハビリテーション病棟,緩和ケア病棟までを擁するケアミックス型の病院であり,急性期を担う地域の二次救急病院として,24時間365日の救急診療を行うほか,脳卒中,がん,心疾患,糖尿病の4疾病に対応するなど,地域医療,救急医療のみならず,大学病院との連携により先端医療でも医療に貢献する四国中央市の中核病院である.同市は四国の高速道路の中央結節点に位置し香川県,徳島県,高知県の県境に接し,四国4県のどの県庁所在地へも1時間程度で行くことができる「四国の中央」にある.そのためHITO病院は,県内患者のみならず香川県や徳島県からも患者が来院する.圏域をまたいだ広い地域の医療を支える役割を担っている.
 関連法人として,医療法人健康会,社会福祉法人愛美会などがあり,総スタッフ数約1,300人,石川ヘルスケアグループとして,地域の健康や,社会の発展に貢献し続けられる病院の運営を目指している.

医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・37

横領が発覚したらどうするか

著者: 増田拓也

ページ範囲:P.408 - P.411

■1 はじめに
 2022年,三重県南伊勢町は,町立南伊勢病院事業において多額の使途不明金が発覚したことを公表しました★1.監査報告書では,元職員が病院の口座から無断で出金し着服するなどの方法で公金横領を行ったものであり,病院事業の損害は合計1億5538万6000円であると報告されています★2.この事件では,当該元職員だけでなく,その元上司(病院事務長ら)4人に対して,その在任期間中に発生した損害額の3割について賠償責任を負わせることが適当であるとの監査意見★3があり,職員賠償命令が行われました.元上司らの中には,2926万9636円の賠償命令を受けた者もいます★4.その結果,元上司らの一部が賠償命令の取消しを求め訴訟を提起したことが報道されています★5
 このように,横領は,病院という組織にとっても深刻な問題ですが,病院事務長などの職員個々人にとっても,同様に深刻な問題です.
 本稿では,横領が発覚した場合の対応について,設例をもとに確認します.

事例と財務から読み解く 地域に根差した病院の経営・45

社会医療法人祥和会 脳神経センター大田記念病院—病院継続性を追求し,変化に挑み続ける

著者: 佐藤夏海

ページ範囲:P.413 - P.418

 広島県福山市にある脳神経センター大田記念病院(以下,同院)は,脳神経疾患の専門病院として,全国でも有数の実績を誇る病院である.減塩生活を手助けする「大田記念病院が考えただしパック」でも有名な同院であるが,病院の理念「Challenge to Continue変化に挑み,私たちの医療を未来へつなぐ」に掲げられているとおり,時代を常に先読みしながら,さまざまな事業を展開してきた.そうした取り組みを紹介したい.

臨床医が病院長になった日・5

目指せ正徳の治

著者: 鈴木洋通

ページ範囲:P.419 - P.420

 はじめに簡単に小生の経歴を述べさせてください.卒業は1975(昭和50)年,北海道大学医学部です.卒業後,慶應義塾大学医学部内科訓練医となり2年間,その後川崎市立川崎病院で2年間を今でいうレジデントとして過ごしました.慶應義塾大学医学部内科(腎・内分泌・代謝科)に入局し学位修得後,米国クリーブランドクリニックで3年間暮らして再び慶應に戻りました.その後高血圧で有名な故猿田享男先生の下で講師,助教授を経て,卒後20年の時点で埼玉医科大学腎臓内科の初代教授になりました.20年間教授として過ごし,その間救急部副部長,地域医学医療センター(衛生学と地域医学を合わせた講座)のセンター長や毛呂病院(埼玉医科大学の前身の精神科を母体とした病院)で緩和医療科の立ち上げなどを行いました.退官後,新設の武蔵野徳洲会病院(303床)の初代院長となり,3年半前に現在の銚子にあるたむら記念病院(167床)の院長になり現在に至っています.
 以上の経歴からすると,臨床医が病院長になった日という題目からするとずれていると思われる方が大半ではないかと思います.今回このエッセイの執筆依頼を受けた時,お断りをするのが筋と考えましたが,小生が思っていることを書き綴ってもよいとのお許しをいただき,ここに恥ずかしながら書かせていただきました.

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目次

ページ範囲:P.360 - P.361

BOOK REVIEW 死亡直前と看取りのエビデンス 第2版

著者: 田上恵太

ページ範囲:P.403 - P.403

BOOK REVIEW —臨床・研究で活用できる!—QOL評価マニュアル

著者: 友滝愛

ページ範囲:P.412 - P.412

Back Number

ページ範囲:P.421 - P.421

次号予告

ページ範囲:P.424 - P.424

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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