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雑誌目次

雑誌文献

病院83巻7号

2024年07月発行

雑誌目次

Interview

これからの病院経営者に期待すること—病院経営を科学する必要性

著者: 田中滋 ,   松田晋哉

ページ範囲:P.505 - P.513

団塊の世代の8割がすでに75歳以上の後期高齢者となった今,病院経営に求められるものは大きく変わりつつあり,地域のニーズの変化はさまざまなデータにも表れている.
数々の優れた病院や企業の経営者などを育成してきた田中滋氏に,これまでの事例やデータから学びながら地域に不可欠な病院とするために必要なことを聞く.

特集 病院経営を科学する

扉/本特集の論旨が分かるPoint一覧<病院経営を科学する>

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.522 - P.523

 近年,病院経営の厳しさが増している.新型コロナウイルス感染症対応に対する補助金が交付されたことで,赤字経営の病院数は減少したが,通常の診療体制に戻ることで60%以上の病院が赤字になっているという推計もある.このような状況を踏まえて,病院に対する診療報酬上の評価の見直しを要求する意見が医療界から上がっている.他方で,病院経営の改革の必要性も指摘されている.
 医療保険財政,そしてその前提となる一般経済の厳しさを踏まえれば,病院経営の合理性を向上させたうえで,それを透明化することが,必要な評価の見直しに対する国民の理解を得るための前提条件となるだろう.そこで本特集では,科学的な病院経営の在り方について,国内の実践事例を基に論考する.

経営改革における病院長と経営企画職の役割

著者: 田中将之 ,   今中雄一

ページ範囲:P.524 - P.529

Point
ポストコロナの医療再編時代を迎えた今,経営改革を推進する組織づくりが,まさに重要な時期である.経営改革のためには,多角的な分析に基づき,経営の意志を明確にして共有し,医療人が力を最大限に発揮するための仕組み作りと組織文化の醸成が必要不可欠である.

病院財務諸表分析と諸指標の活用

著者: 上西琢也

ページ範囲:P.530 - P.542

Point
病院において,近年医業承継が実施される中で,後継者が大事だと理解をしていながら,悩まれることの1つに,財務・会計という領域がある.構成要素は「日本語と数値」だが,見方を知らないと,理解が得られ難い.本稿では,実際に自法人の会計を見る際に,取扱説明書として利用していただけるような内容として構成している.

病院機能評価の活用方法と考え方—病院機能評価を継続的に経営改善に結びつけている病院に共通する特徴

著者: 久保田巧

ページ範囲:P.544 - P.551

Point
病院機能評価の新バージョン(3rdG:Ver.3.0)への改定により,現場主導の改善活動の取り組みやすさが向上した.近年の病院経営は,多くの課題に直面している.報酬制度の改定が行われるたびに,医療の質向上が強く求められている.これらの要因から,病院機能評価を持続的な経営改善ツールの一つと捉え,成果の最大化につなげるさまざまな改善活動の取り組みが重要なアプローチとなっている.

病院管理指標を用いた病院経営

著者: 伏見清秀

ページ範囲:P.552 - P.556

Point
医療機関の診療と経営は表裏一体であるため,両方の視点から可視化を進めることが肝要である.もちろん医療データの利活用は重要だが,診療の現場をよく理解して分析を進めるのが重要であり,その過程で可視化の対象がどんどん広がり,分析も深まっていくことが多い.

BIツールとBSCを用いた経営改善手法

著者: 大西祥男

ページ範囲:P.558 - P.563

Point
バランススコアカード(BSC)により具体的な,達成可能な目標値と期限を掲げて実践する.経過をビジネスインテリジェンス(BI)ツールでモニタリングし,課題があれば改善に移すPDCAサイクルを回している.BSCとBIツールを全職員のベクトル合わせならびに病院経営に活用している.経営者は,部門で掲げた目標値の達成に向けてあらゆるサポートを惜しまず,伴走することが重要である.

病院の経営人材育成の課題

著者: 西田在賢

ページ範囲:P.564 - P.571

Point
病院の経営人材育成の課題は医療経営人材育成体制をどう整えるかであり,そこでは医療経営の研究と体系的な講義プログラムの開発,そしてそれらの成果を用いて医療経営学を学ぶ動機付けを病院幹部に行うことが必要不可欠である.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・114

奈良県総合医療センター

著者: 山口健太郎

ページ範囲:P.514 - P.519

■はじめに
 奈良県総合医療センターは,奈良県北部の高度急性期医療を担う中核病院である(図1).奈良県は寺社や史跡が多く,観光客の多い県であるが,その地理的特徴は意外と知られていない.奈良県は南北に長い楕円形をしており,県庁所在地である奈良市は,県北部の京都府に隣接する(図2).同じく北部に位置する生駒市や大和郡山市は大阪や京都へのベッドタウンとして人口が多く,奈良県は北部に人口が集中している.この人口集中エリアである奈良保健医療圏,東和保健医療圏の三次救急を担うのが奈良県総合医療センターである.
 また,古都として有名な明日香村や橿原市は奈良県の北中部にあり,ここには奈良県唯一の医学部を有する奈良県立医科大学の附属病院がある.一方,南部は中山間地域で奈良県の南半分以上を占める南和保健医療圏には高度急性期医療を担う病院はなく,ドクターヘリなどを活用して中部や北部の病院に搬送する仕組みとなっている.奈良県総合医療センターにもヘリポートが設置されており,月5〜6回程度の頻度でドクターヘリが運用されている.
 このように奈良県総合医療センターには,奈良県の人口集中地域である北部地域および南部や東部の中山間地域に対する高度急性期医療の提供という役割が求められている.

医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・39

医療用医薬品の注意事項等情報に反した診療

著者: 高坂佳郁子

ページ範囲:P.574 - P.578

■1 医療用医薬品の注意事項等情報が問題となる場面
医師の負う注意義務の基準
 医療従事者はその業務の性質に照らし,危険防止のために経験上必要とされる最善の注意を尽くして診療に当たる義務を負うとされています〔最高裁昭和36年2月16日第一小法廷判決(民集第15巻2号244頁)〕.そして,その注意義務の基準となるのは,「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」であるとされています〔最高裁昭和57年3月30日第三小法廷判決(集民135号563頁)〕.
 もっとも,医療機関といっても大学病院から開業医の診療所までいろいろな性格のものがあり,また当該医療機関の所在する地域の医療環境の特性等も異なることから,全ての医療機関に対して同等の知見を備えていることまでは求められず,「医療水準」については,全国一律ではないとされています〔最高裁平成7年6月9日第二小法廷判決(民集第49巻6号1499頁)〕.

事例と財務から読み解く 地域に根差した病院の経営・46

2024年度診療報酬改定に対応する病院経営—急性期一般入院料1の見直しと地域包括医療病棟入院料新設に着目して

著者: 堀之内重人

ページ範囲:P.580 - P.585

●はじめに
 本連載は2017年1月号から45回にわたって掲載している.これまで,地域のニーズに応じて優れた経営を実現している病院の事例を取り上げてきた.今回は少し趣向を変えて,個別の事例ではなく,連載の標題にもある「財務から読み解く」ことに軸足を置いて,病院の経営について考えていきたい.また,直近のトピックである2024年度診療報酬改定(以下,今次改定)の内容も踏まえながら,考察していく.
 本稿の分析対象については,独立行政法人福祉医療機構(以下,機構)の貸付先とする.それら貸付先からご提出いただいた経営状況のデータと,病床機能報告データを紐付けて分析している.
 なお,文中における見解に関する部分については,個人的所見であり,当機構の組織としての見解ではないことを申し添える.

臨床医が病院長になった日・7

人は宝—地域の中で存在価値を高める

著者: 平田一人

ページ範囲:P.586 - P.587

■公立大学病院で臨床医から病院長に
 私は,1978年に大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部を卒業し,2006年に大阪市立大学大学院医学研究科呼吸器内科学教授となり,2012年より6年間同医学部附属病院副院長,2018年より2022年3月まで同院の病院長を務めました.
 病院長に就任するまでの経緯としては,まず執行部に入り病院長補佐を2年務めました.その間は,病診連携と患者支援について,自分自身も重点的に勉強しながら,その強化に注力しました.その後6年間,副院長となってからは,保険診療部門はもちろん,保険外の赤字の部門(特に健診センター)の立て直しなど,経営面から携わりました.

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目次

ページ範囲:P.520 - P.521

BOOK REVIEW —臨床・研究で活用できる!—QOL評価マニュアル

著者: 齋藤信也

ページ範囲:P.573 - P.573

BOOK REVIEW 感染対策60のQ&A

著者: 山田和範

ページ範囲:P.579 - P.579

Back Number

ページ範囲:P.589 - P.589

次号予告

ページ範囲:P.592 - P.592

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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