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雑誌目次

雑誌文献

病院83巻9号

2024年09月発行

雑誌目次

Interview

病院におけるコスト管理の必要性

著者: 小松本悟 ,   川原丈貴

ページ範囲:P.673 - P.681

近年,物価高騰などが原因でコストが上昇し病院経営は厳しさを増している.
コストマネジメントの重要性が大きくなる中でその必要性や手法について,足利赤十字病院で経営再編に取り組んでこられた小松本悟名誉院長に聞く.

特集 持続可能な病院運営のためのコスト管理

扉/本特集の論旨が分かるPoint一覧<持続可能な病院運営のためのコスト管理>

著者: 川原丈貴

ページ範囲:P.690 - P.691

 近年,物価高騰や賃金上昇圧力などの外部要因により病院のさまざまなコストが上昇している.一方で病院の収入のほとんどは公定価格である保険診療によりもたらされるため,コスト上昇を価格に転嫁させることができない.また,コスト削減に取り組むにあたって医療の質や医療従事者のモチベーション低下を招いてはならず,コスト管理を慎重に行わなければならない.
 経営環境が不安定化するなか,病院はコスト管理にどのように向き合っていくべきか検討する.

総論:コスト管理の考え方

コスト管理による医療サービスの価値向上—費用対成果向上を目指す価値企画としてのコスト管理実践

著者: 荒井耕

ページ範囲:P.692 - P.696

Point
収益側も意識した損益管理としてのコスト管理が重要である.またコスト管理は,医療サービスの費用対成果としての価値の向上を目指す管理であるべきである.医療界においてもサービスの価値企画は有効であり,価値企画策として各種のコスト管理策を実践すべきである.

事例:コスト管理の実践事例

適正な人件費コントロール

著者: 薄井和人

ページ範囲:P.698 - P.702

Point
病院は労働集約型の産業であり,医業収益に対する人件費の割合が50%を超えており,黒字経営のためには適切な管理が必要である.総額人件費,賃金単価,配置職員数などさまざまな観点から,総合的に分析・判断し,人件費をコントロールすることが求められる.

医療材料のコスト管理

著者: 武藤正樹

ページ範囲:P.704 - P.709

Point
医療材料費の高騰が続いている.医療材料のコスト管理のポイントは,医療材料の同種同効分類,標準化,価格ベンチマーク,共同購買,単回使用医療機器の再製造品の活用,医療材料マネジメントを行う専門人材養成である.

システム導入・維持管理におけるコスト管理の重要性

著者: 佐伯潤

ページ範囲:P.710 - P.715

Point
昨今,医療機関はサイバーセキュリティ対策やICT利活用が求められ,情報システム投資が増加している.機微な患者情報を扱う医療機関は,情報セキュリティが不可欠であり,働き方改革推進にはICT導入が欠かせない.拡大するシステム投資に対して診療報酬の補塡は乏しく,低コスト高パフォーマンスが求められる.

手厚い個別対応を行うほどに上昇する病院給食運営コスト

著者: 渡辺正幸

ページ範囲:P.716 - P.721

Point
病院給食運営コストの比重は人件費が最も高く,調理する食種が増加するとともに,配置人員が増加し人件費が高騰する.従って運営コストを抑えるためには,食種の集約を検討し人件費を抑えることが必要だが,個別対応は食事の質確保に必要な行為であり,食種の集約は栄養部門だけではなく経営判断が必要である.

持続可能な病院運営と地球温暖化対策

著者: 古城資久 ,   櫻井勇介

ページ範囲:P.722 - P.729

Point
診療報酬改定は厳しく,人手不足は深刻化し,物価高,特に建築費の著しい高騰にて病院経営は悪化している.エネルギー価格の高騰も経営を圧迫しているが,健康を守る医療産業の義務として大気汚染,水質汚濁,さらには地球温暖化対策に同時に取り組むことが病院としての正しい姿であろう.われわれ伯鳳会グループの取り組みの一端をご紹介し,若干の考察を加える.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・116

—設備の視点から—病院の設備運用改善による省エネルギーの実現と質の担保

著者: 吉岡建児

ページ範囲:P.682 - P.687

■はじめに
 24時間365日,常に稼働する病院において,昨今の世界的なエネルギー価格の高騰は,ランニングコストに多大な影響を与えている.また,全世界でまん延したCOVID-19の影響により,空調換気の励行による熱損失の増加,手洗いなどによる蒸気・給湯など熱需要の高まりは光熱水費増加の大きな要因となった.
 本稿では,三重県伊勢市にある伊勢赤十字病院において,ランニングコスト低減を目的とした運用改善による省エネルギー化の実現について,熱源供給側(エネルギーセンター)と熱源需要側(伊勢赤十字病院)のそれぞれの事例を概説する.

医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・41

生成AIと著作権侵害

著者: 増田拓也

ページ範囲:P.732 - P.734

■1 生成AIと著作権を巡る議論の現状
 近時,いわゆる生成AI(Generative AI,生成系AI)の利用が急速に広まっています.法律に生成AIについての定義はありませんが,概ね,利用者の指示に基づき,さまざまな形態のコンテンツを生成するAIが,生成AIと呼ばれています.生成AIの広がりと同時に,クリエイターやAI開発事業者などの関係者から,作風などを模倣され仕事が奪われる恐れや,生成AIに関する著作権侵害が生じる恐れがあるという懸念も表明されています(実際に,特定のクリエイターの作品を学習データとして追加的な学習を行うことで,そのクリエイターのいわゆる作風を模倣する行為も行われています).しかしながら,生成AIと著作権に関する法の解釈や実務の運用は定まっておらず,さまざまな立場からの意見があり得ることもあって,議論の落としどころが見通し難い状況です.
 そのような中,文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会が,「AIと著作権に関する考え方について」★1(以下,本考え方)をとりまとめており,本考え方では,生成AIと著作権に関する著作権法の解釈について,同小委員会としての一定の考え方が示されています.生成AIと著作権に関する議論をする上で非常に重要な文献です★2,3

事例と財務から読み解く 地域に根差した病院の経営・47

医療法人聖峰会 田主丸中央病院—地域のための病院経営と災害対応・復旧

著者: 堀之内重人

ページ範囲:P.736 - P.741

 田主丸中央病院(以下,同院)は,福岡県久留米市の市街地から車で40分ほどの場所に位置し,久留米市東部,うきは市を中心とした診療圏で地域の医療を支える病院である.周囲には同院のほかに中核病院がないため,急性期,回復期,慢性期,緩和ケア,精神科など,幅広い医療機能を揃えている.さらに,介護施設も運営しており,この地域において包括的な医療・介護サービスを提供している.
 また,同院は2023年に豪雨被害を受け,診療・検査機能を一時的に休止しつつも,短期間で復旧した経験も有する.

臨床医が病院長になった日・9

How to be a good “病院長”—経験から学ぶ その傾向と対策

著者: 石川秀雄

ページ範囲:P.742 - P.745

 人事というのは運とタイミングである.
 18年前,私は大阪大学第三内科の人事で15年間ほど国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター(現・近畿中央呼吸器センター)に勤務し,循環器医長として喀血に対するカテーテル治療である気管支動脈塞栓術(BAE)に没頭していた.が,そろそろ民間に出てみたいなあと思うようになっていた.近畿中央胸部疾患センターそのものは大好きであったが,準公務員という若干の窮屈さや給与へのいささかの不満などが主な理由である.

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目次

ページ範囲:P.688 - P.689

BOOK REVIEW —医学研究のための—因果推論レクチャー

著者: 中山健夫

ページ範囲:P.746 - P.746

Back Number

ページ範囲:P.749 - P.749

次号予告

ページ範囲:P.752 - P.752

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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