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雑誌目次

雑誌文献

病院9巻1号

1953年07月発行

雑誌目次

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病院管理4ヶ年の回顧

著者: 小西宏

ページ範囲:P.2 - P.4

 今月は,雑誌「病院」創刊以来満4周年に当る。昭和24年6月1日に厚生省病院管理研修所が国立東京第一病院内に誕生して丁度1ヵ月あとの同年7月に,本誌が創刊されたのである。当時の経緯については,創刊号の卷頭に塩田広重博士が詳述して居られるので省略するが,爾来上記研修所と本誌とは車の兩輪の如く相携えて我が国病院管理の育成発展に,大きな役割を演じて来たと云えるであろう。
 今,創刊4周年を迎うるに当り,「病院」と研修所を中心に過ぎ来し方を回顧し将来を按ずるのもあながち,無駄ではあるまい。

医療券一部負担額の問題—case workerの眼に映ずる患者の惱み

著者: 山本武夫

ページ範囲:P.5 - P.15

1
 最近,医療券の一部負担額の支払困難を訴える患者が多く,これをどう取扱つていいかについては意見がまちまちらしいので,私たちのところでも,そのような患者を扱つている間に,わずかではあるが,資料が集められたので,その資料をここでごらんに入れて,皆さんとともにこの問題について考えてみたいと思う。もつとも,この資料は現在私が仕事している国立東京療養所の医療社会事業部で取扱つた患者の,しかもその僅かな一部分の患者から得られたものであるから,局部的な資料にはちがいないが,「一斑を見て全貌を知る」ことは不可能ではないし,単に一人のcase workerの見解であるとしても,そこから何らかの意味がくみとられてもいいように思うのである。
 患者にとつて病気が惱みの主体であることは当然のことではあるが,その病気を治すためには患者の持つ経済力が重大な役割を果している。したがつて患者の関心は自分の病気とおなじ程度に時にはそれ以上に,自分の経済事情に注がれるのである。

診療事務の能率化の研究—伝票による料金算定法

著者: 加倉井駿一

ページ範囲:P.17 - P.27

まえがき
 現在社会保険関係の医療報酬は社会保険診療報酬点数表に記載されている診療行為及びその点数によつて請求し,一般診療を社会保険関係の医療報酬に大体の基準を置いて考えられている。薬品をいくら使用しても又使用しなくても幾許というような概算で請求する方法でなく,細分された行為を一つ一つ羅列しなければならないので,一つ一つの診療行為をすべて料金算定に便利なように記帳して置かなければならない。そのために料金を請求する時は,医療の行われた部門から,これを請求する部門へ連絡をとり,これを所定の形式の請求書として基金等へ請求する。従つて診療行為の行われた部門から,請求事務を行う部門への連絡方法が問題となるのである。
 小規模な医院等に於ては診療,記録,請求が医師一人によつて行われて居り又一人でも行い得るのが現状でもある。そしてこれは医院等にあつては業務が主として外来患者の診療であるということに原因する。日本の病院の過去の成り立ちを考えると,この基本的な医院の業務体系が単に水増し的に増大しただけであるので,大規模の病院にも残存する場合が多く,病院としての企業の組織体系というものが分析されて居ないし,特にこの料金算定事務の体系が確立されていないのが現状である。

温泉病陛に関する2〜3の問題(下)

著者: 伊藤久次

ページ範囲:P.29 - P.34

4.温泉病院の設備構造について
 新たに温泉病院を造営する場合には,先ずその温泉の量と質とを充分研究して,温泉を選ばねばならない。泉質泉量を無視し,温泉と名がつけば如何なる温泉も同様な効果があると考えて,同一規格で作つたり,温泉地であれば何処でも同様に温泉の得られる様に考えたりして土地を選んではならない。又温泉の質によつては長距離の引湯により,温泉の喪失のみならず,エマナチオンや硫化水素或は炭酸ガス等の有効成分を失い,或は塩分の析出沈澱を見たりすることも考えて配管に留意したい。源泉より直接の泉水を利用出来る様にしたい。高温のため水を割るが如きは厳に避けたい源泉,引湯管,浴槽等については,いずれ他日述べる機会があるであろう。
 温泉地は今日何処も開発せられ,地価は昂騰し広い土地を入手することは至難であるが,勿論土地の面積並びに地形は充分余裕のあることを理想とし,環境もよく局所気候もよい場所が好ましい。折角の靈泉も,交通の不便な所や気候不良な所では,大規模な温泉病院を設けても,利用者は少数となつて成立しない。然し交通不便な所は環境も清潔でない温泉地と化する危険が多く,所謂温泉気分を病室まで持込む様になるから,これも避けたい。温泉病院の所在地区は何処までも健全地区で,その温泉地の一つの中心として温泉病院が考えられる土地を望む。

医療社会事業技術論考

著者: 松尾友重

ページ範囲:P.35 - P.38

 私は先に"医療社会事業技術論"として医療社会事業に於ける技術の体系を明かにせんと企てたが,筆者自身の都合や種々の事情のために未完のまま1年近い日数を経た。ここに終りを完うするために簡略に関係技術の体系に触れて置きたいと思う。尚医療社会事業の分野において技術の占める位置乃至は医療社会事業の全貌については病院全書中の拙著「医療社会事業概論」によつて理解されたく,特にこれらの諸問題について医療社会事業の現場から研究室から活溌な討論や批判が生れることを期待している。そしてやがてこれらの企てなり,医療社会事業への関心が高まつて日本医療社会事業学会成立の機運に向うことを切望するものである。

米国の医師免許状況の紹介

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.39 - P.42

免許発行数及び医師数
 1950暦年度に於ける米国の各州での免許発行数を合計すると12,209に及んでいる。この内5,454は実際に各州で医師免許試験を受験してこれに合格した結果免許を得た者であり残りの6,755は他の州の免許を持つているとか医師国家試験に合格した等の資格によつて互惠条約又は認定の結果免許を得た者である。上の数字は1人で2以上の州の免許を受けたものを重複して計算しているわけであるが,これに対して実際の医師人口の増加数は6,002となつている。しかも同年内に3,794の医師が死亡しているので純増加は2,208ということになる。我が国と比較して遙に少い。米国では医師養成数の増加の必要性が今日盛んに論ぜられているものはこの数である。1950.2.15現在で米国大陸部における医師の総数は209,040でその内150,220が個人開業医となつている。しかもこの医師はCalifornia,New York等に非常に多く,Nevada等では1年間の増加が僅に19と言つた様な分布の不均衡があるため,医師数のすくない州では外国からの医師の入国を歓迎している。

綜合病院の設計と構造(9)

著者: 小川健比子

ページ範囲:P.43 - P.48

第11章 サービス部Service Department
給食施設Dietary Facilities
 充分満足のゆく厨房を設計するとゆうことは高度なる専門的事項に屬し,それは又有能なる厨房技術者(kitchen engineer)のみの為し得る仕事である。故に,この部に対しては詳細に計画準備されることが望ましい。
 給食部(dietary department)は一般に1階に配置され,又適当な自然換気を確保する為には厨房の床面は室内何処でも地盤面下4呎以上となるべきではない。然るに一方熱,騒音及び臭気の問題を取除くために上階或は最上階を厨房として使用することが屡々ある。然しかかる位置は患者の病室とした方が一層有効である。

Dr. Moriya's Recordtape

著者: 守屋博

ページ範囲:P.49 - P.50

(26)管理部門の指導性について
 業務部門,管理部門とわけた時の管理部門は人事・会計等のサービスを行う部門である。第一線の作戦部隊に補給を行う輜重隊の役目である。この様な,後方部隊はジミな仕事であつて,完全に任務を遂行しても,自分で手がらを立てる事は出来ない。この様な後方部隊は人や物の豊富な時は発言力は少いのであるが,人や物が不足して来ればそれに従つて,発言力が大になつて来る。作戦についても発言のチヤンスが増して来ると同時に,作戦の責任者であると考える様になる。診療担当者である医師に対して設備担当の病院は,この後方勤務であるが病院の都合で診断治療の内容に口を出すのは不都合である。病院自身の仕事についても病院の第一線業務である。
 検査,X線の仕事,看護の仕事,手術室の運営,給食栄養の問題,病歴整理,社会事業等は,病院の作戦本部で決定すべき問題であつて,人事,会計担当面だけで号令すべき問題ではない。

日本病院協会だより

ページ範囲:P.52 - P.55

インターン調査委員会報告
 昨冬以来4回に亘り調査会を開催して,熱心に研究討論を行い,且各方面の意見等も結合し,次の通りの結論を得たので当協会の意見として厚生大臣に陳情した。
昭和28年2月29日社団法人日本病院協会委員長 上条秀介

あとがき

著者: 小西

ページ範囲:P.56 - P.56

○北半球に春の訪れと共に平和のいぶきがよみがえり,世界の人心に明るい希望を抱かせていたが,昨今の東独や韓国に於ける情勢から推すと,余り楽観もして居れない様子だ。一方我が国に於ても,長い陣痛の挙句やつと生れた第5次吉田内閣が新国会の勢頭から内外の難問題に引つかかり,前途の多難を思わせている。
○発足以来兎角の批評があつた日本病院協会でも,去る6月8日の第3回総会で相当の波瀾を予想されていた処果せるかななかなか痛烈な論議が展開されたらしい。化学療法全盛の時代になつても,熟し切つた膿瘍は思い切つてメスを振つた方が予後がよい。将来に禍根を残さぬために大いに揉むが宜しい。

病院長プロフイル・4

親切とねばりで一生を貫く—国立仙台病院長加藤豊治郞氏

著者: 大石武一

ページ範囲:P.28 - P.28

 加藤豊治郞先生は私の恩師である。大正15年東北大学を卒業してより15年の間,私は先生の後に従つて医学の道を歩んで来た。私の医師としての物の見方,考え方はすべて先生の影響によつて造り上げられたと言つてもよい。昭和23年春父の死によつて突然政界に出るようになつた時,先生は私に生涯を医学者として終える事が望ましいと懇々とさとされた。然し私は敢て先生の御意志に反し,父の遺言に従つて国会に出て来たのである。現在静かに5年間の忙しい,空虚な生活を顧る時,先生の御考えの方が私にはふさわしい生き方ではなかつたかと考える事があるのである。然るに先生は毎日どうして私がこの選挙に敗れたか,今後はどうしたら勝てるかと云う事を真劍に考えて居られる。而もその御考えが選挙通であるべき私に極めて妥当に適切にひびくのに驚いている。
 先生はこの上もなく善意の人である。尤も政界の者から見たら惡意の学者は極めて少いとは思うのであるが。先生の一生を貫く特性は親切とあく事を知らぬねばりであろうと思う。学内に於ては先生は極めて厳しい教授の一人と言われていた。私も総廻診の時患者の前でどんなに叱られたかわからない。段々に医者の道がわかるようになつて来ると,先生の叱る事がどんなに若い弟子の成長を思う為であるかが認識されて,叱られぬ場合にはむしろ淋しく思う事さえもあつたのである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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