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綜説
文献概要
腎はその特異な構造と機能により,体内代謝老廃物の排泄のほかに,水分バランス,酸塩基平衡,電解質バランスなどの内部環境の恒常性維持に極めて重要な役割を演じている。従つて腎が急激な機能不全に陥つた場合には,その原因の如何を問わず,窒素代謝の老廃物の体内貯溜のほかに,体液構成にも重大な変化を生ずるに至る。近年のめざましい体液化学の進歩によつて,漸次,水分電解質の異常の様態が明らかにされてきた。新潟大学泌尿器科においては前任の高安教授(現東大教授)より引続いて急性腎不全を研究の主要テーマとしてとりあげ,基礎的ならびに臨床的研究を数多く発表してきた(高安,1957;高安,1959;広川,1959;河路,1959;高安・佐藤ら,1960;高安・広川,1960;佐藤,1962;梁取,1962;高安,1962;Takayasu et al.1962;高安・佐藤ら,1963;渡辺,1965およびWatanabe and Sato,1965)。臨床統計については1963年に高安・佐藤らが47例の急性腎不全の症例をまとめて報告したが,今回その後更に症例を加えて67例に達したので,そのうちデータの揃つている64例の成績をもとに,急性腎不全における電解質の変動について総括的な考察を行なうこととする。
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