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手術手技
腎部分切除術
著者: 高井修道1
所属機関: 1札幌医科大学泌尿器科
ページ範囲:P.217 - P.221
文献購入ページに移動保存的手術療法は近代外科学の成果の1つであり,腎臓外科においても限局性病巣に対し腎部分切除術(部分切除術と部分剔除術を分けて考える場合もあるが,ここでは半腎剔除術以外のものを総て切除術と呼んだ)が行なわれるようになつてきたことは周知の如くである。本手術は既に1887年Czerny1)が試み成功しているが,腎の解剖,生理や病理に関する知識が不充分であつたこと,手術適応の不正確なため,外科的技術の未熟のため失敗例が多く余り行なわれなかつた。輸血,化学療法の発達により手術成績が向上し,1950年前後から再び盛んに行なわれるようになり,Abes—house1)等は1950年腎結石症に対し行なわれたもの200例について蒐集報告を行なつている。結核の化学療法が導入されてから腎結核に対しても腎部分切除術が行なわれてきたが,最初はかなり批判的であつた。次第に多数例に行なつた報告例が出てきて,1955年Semb3)の128例,Steinbeck4)の100例等,我が国では1955年楠5)の22例等の報告があるが,その後腎結核に対する化学療法の発達により小病巣に対しては手術的療法を加える必要がないという考えが広まり,特にLattimer6)等は腎結核の大部分のものは化学療法のみで治療すべきで,ただ腎盂,尿管の広範な狭窄を伴うものや,膿腎症の場合にのみ腎剔除術を行なうという極端な意見を述べておる。
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