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原著
下大静脈後尿管の1例
著者: 田中健嗣1
所属機関: 1長崎大学医学部泌尿器科学教室
ページ範囲:P.31 - P.36
文献購入ページに移動下大静脈後尿管は,胎生期における下大静脈の発生異常に基づく尿管走行異常であり,先天性奇形の一種である。本疾患は従来比較的まれなものとされていたが,尿路X線診断法の進歩によつて,近年必ずしもまれな疾患ではなくなつて来ている。欧米では1893年Hochstteterが剖検上生後数週の男子に,この奇形を発見したのが初めてであり,最初の臨床例は1935年Kimbroughが第1例を報告した。Hochstteter以来1940年までに僅かに27例を数えたに過ぎないが,1952年には58例(Abeshous & Tankin)1),1960年には90例以上,1963年には148例(Wabrosch)2)に達している。本邦では1923年喜多3)が剖検上2例を発見したのが初めてであり,最初の臨床例は1941年山本が第1例を報告した。山本以来1965年までに前川等4)が32例をまとめている。その後の文献を調査した結果,第1表に示すごとく18例を認めた。自験症例は50例目に相当する。
既に知られているごとく,本疾患に特有の症状は無い。従つて本疾患の診断にあたつては尿路X線検査によつて尿管の異常走行を認めることが重要である。しかしながら第1表に見るごとく,最近は殆んど術前に診断されており,本疾患の診断については諸家の認識の深さにより問題点は少なくなり,いかに合併症ならびに後遺症なく整復するかが残された問題と考えられる。
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