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原著
乳糜尿症におけるリンパ系造影
著者: 中平正美1 渡辺節男2 柳沢温2
所属機関: 1山梨県立中央病院泌尿器科 2信州大学医学部泌尿器科学教室
ページ範囲:P.121 - P.127
文献購入ページに移動乳糜尿症は殆んどがWuchereria bancroftiCobboltの寄生によるもので非寄生虫性のものは極めて稀れとされている。このバンクロフト糸状虫寄生による乳糜尿症は広く熱帯地方に発生しているが,日本においては九州の南西海岸地帯に最も多く,山梨県は全国的にみて比較的多い地帯に属する。昭和31年度以降10年間の山梨県立中央病院の乳糜尿患者数は32名で,年令別では60才以上が圧倒的に多く,散発的発生状態であり,現在この地帯には高度の浸淫地区が存在していないものと考えられる。
乳糜尿の発生機転については古くはMoellen-brogii24)(1670)がリンパ系と尿路系の異常結合により乳糜尿が発生するとし,その後,Carter18)(1862),Ackerman16)(1863)等は腸を灌流したリンパ管,あるいは胸管の閉塞の結果,代償的にリンパ管吻合枝が腹部や骨盤部に生じ,乳糜尿症を来たすものと推測した。この考えが最近まで受入れられてきたが,乳糜尿が腎のどの部分から排泄されるかという点の追求は比較的新らしい時代になつてからで,その臨床的追求方法は逆行性腎盂撮影により始められた。Hampton20)(1920)はPye-lolymphatic refluxを始めて報告したが,この現象を乳糜尿症において検討したのはWood27)(1929)である。
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