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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科22巻3号

1968年03月発行

文献概要

綜説

神経因性膀胱—その研究の歴史と現況

著者: 宍戸仙太郎1 今林健一1

所属機関: 1東北大学医学部泌尿器科学教室

ページ範囲:P.187 - P.192

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 神経因性膀胱とは膀胱を中心とする下部尿路を支配する神経が器質的に障害されたときに起こる各種の排尿障害の総称である。従つて本症の発生要因となる神経損傷の原因,およびその発生部位は極めて多岐にわたり,かつ臨床的にみられる排尿障害の形もその原因,経過,合併症などを反映して極めて多彩である。しかも本症の発生要因である神経損傷のうち,外因性要因の1つ,例えば交通事故,労働災害などによる脊髄損傷は近年加速度的増加を示し,一方内因性要因,例えば脳出血,糖尿病,あるいは骨盤腔内悪性腫瘍の根治手術,更には先天性奇形である二分脊椎症なども増加の一途をたどつている現在,これらの要因に伴つて出現する神経因性膀胱の患者数も明らかな増加傾向を示している。しかるに本症はその原因が神経の不可逆的損傷による支配脱落であるので,これを抜本的に修復することは現段階では極めて困難であり,従つて本症に対するこの意味での根治療法は全く報告されていない。これに対して一部の支配神経脱落があつたにせよ,これを対症的に補償して円滑な排尿を行なわせようとするいわゆる対症療法は,これまでに数多く発表されて来ているが,本症に合併する難治性かつ重篤な合併症,例えば細菌性膀胱炎,膀胱・尿管逆流現象(VUR),あるいはこれ等に基づく腎盂腎炎,更には脊髄損傷例における全身の特異状態などのため,その治療効果は一部の例を除き必ずしも満足すべきものではない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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