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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科22巻5号

1968年05月発行

雑誌目次

図譜・269

孤立性腎嚢腫

著者: 井上武夫 ,   広川信

ページ範囲:P.336 - P.337

 患者:利○和○,女子,21才。
 約一年ほど前から左側腹部から下腹部にわたつて,冷汗,嘔気を伴なう疼痛発作が間歇的にあり,近医にて尿路結石の疑いがあるといわれて当科を受診する。

図譜・270

膀胱憩室癌

著者: 斯波光生 ,   大塚晃 ,   南茂正

ページ範囲:P.338 - P.339

 患者 60才,男。
 初診 昭和41年9月24日。

原著

小児に見られた腎細胞癌

著者: 美川郁夫 ,   宮城徹三郎

ページ範囲:P.341 - P.344

Ⅰ.緒言
 小児に見られる腎悪性腫瘍の大部分はWilms腫瘍であり,腎細胞癌は極めて稀である。私共は最近12才女児に発生した腎細胞癌の1例を経験したので報告する。

腎部分切除症例の検討

著者: 藤井浩 ,   雀部将 ,   大熊晴男 ,   荒木徹

ページ範囲:P.345 - P.349

Ⅰ.緒言
 腎部分切除術は近年広く行なわれている手術であり,その対象となる疾患は腎結核および腎結石である。われわれも,昭和29年7月広島市民病院泌尿器科開設以来13年間に計25例の腎部分切除症例を経験したのでその大要を報告する。

下大静脈後尿管に対する下大静脈整復術の経験

著者: 今村全 ,   本間耕平

ページ範囲:P.351 - P.357

Ⅰ.はじめに
 下大静脈後尿管は胎生期に起こつた下大静脈の発生異常によるもので,従来比較的稀な疾患とされていた。しかし近年に至り泌尿器科学の急速な発展,とくにそのレ線学的診断法の進歩により本疾患の発見が容易となつたため,ことにここ数年来多数の症例が報告されるようになつた。岸本・岡田(1966)1)によれば本邦ですでに46例の報告があり,しかもその3分の2はそれまでの5年間になされたものであるという。我々も最近本症の1例を経験し,下大静脈の切離再縫合による尿管整復術を行ない,満足すべき結果を得たので報告する。

尿管瘤について—自験4例と文献的考察

著者: 三矢英輔 ,   牧野昌彦 ,   早川常彦

ページ範囲:P.359 - P.364

 尿管瘤は尿管(全壁層を含む)下端が嚢状に拡張し膀胱内に膨隆したもので,その嚢の外層は膀胱粘膜より内層は尿管粘膜より中間層は筋層および結合織より構成されている。我々は昭和39年より4例の尿管瘤を経験したのでこれに国内文献上の症例および考察を加えて報告する。

排尿障害を招来した乳児仙骨前嚢胞の1例

著者: 鈴木三継 ,   安食悟朗

ページ範囲:P.365 - P.370

Ⅰ.緒言
 仙骨前部に腫瘍の発生を見ることは,まれなこととされているが,最近,われわれは乳児において排尿障害と腹部膨隆をきたした仙骨前嚢胞の1例を経験したので,ここに報告するとともに若干の考察を加える。

陰茎に転移した前立腺癌の1例

著者: 小松奎一 ,   瀬野俊治

ページ範囲:P.371 - P.376

Ⅰ.緒言
 前立腺癌における癌浸潤の拡大経路には局所的拡大,血行性転移および淋巴行性転移があり,おのおのの経路により膀胱,精嚢腺,骨,肺等の諸臓器,骨盤腔淋巴腺および大動脈周囲淋巴腺等に転移をきたすが,性器転移は一般に少なく,なかんずく陰茎への転移は極めて稀なものとされている。Semans (1938)11)は140例の前立腺癌中陰茎転移例は1例も認めず,McCrea and Karafin(1958)12)は500例中僅かに1例を認めたにすぎないという。著者は75才男子に発生した,本邦では国分・小谷(1949)5),仁平・中川(1962)9)の報告に次いで第3例目と考えられる陰茎に転移をした前立腺癌の1例を経験したのでここに報告し,併せて若干の文献的考察を加えることにする。

小児前立腺平滑筋肉腫の1例〔剖検例〕

著者: 白石祐逸

ページ範囲:P.377 - P.381

 前立腺平滑筋肉腫は数少ない前立腺肉腫の中でも比較的稀な疾患である。我々は膀胱後腔腫瘍の診断のもとに試験開腹,更に死亡まで観察し得た4才幼児の1例を経験したので報告する。

文献抄録

尿路変更術の長期予後の観察/重複癌の相互転移の宿主

ページ範囲:P.357 - P.357

 著者等は1952年以来300例以上の尿路変更術を行なつて来た。尿路変更法としては大部分の症例がBrick-er(1950)変法による回腸導管形成術で,これ等症例中4年から14年間にわたつて詳細に経過を観察し得た54例について述べる。症例観察の主眼点は腸管皮膚吻合部の状態,腎機能,腎盂像の形態,血液生化学的変化等の諸点てある。著者が本論文で取扱つた尿路変更症例の原疾患は神経因性膀胱24例,膀胱癌10例,子宮頸癌6例,膀胱・腟瘻5例,下都尿路狭窄4例,前立腺癌2例,その他3例となつている。これ等54例の術後の早期合併症について見ると手術創の感染2例,尿瘻形成2例,管腸狭窄1例,慢性的イレウス1例その他3例であつたが,いずれも容易に治癒した。また手術後3ヵ月以上経過してから発現したいわゆる晩期合併症としては腸管皮膚吻合部の狭窄11例,吻合部の腸管脱3例,ヘルニア1例,腎結石6例,水腎形成5例,膿腎症1例となつている。腎結石6例中4例は腎切石および腎部分切除を行なつた。5例の水腎形成は尿管腸管吻合部の狭窄によるもので術後1年から5年の間に見られた。これ等も再手術で治癒せしめ得た。54症例の術後の腎機能について見ると,術前と同様のもの33例(61%),悪化したもの12例(22%),改善されたもの9例(16%)であつた。創瘍感染菌としてはプロテウスが非常に多く,またこれが結石形成の主役をなしている。

新薬治験

尿路感染症に対するHippramine (R−657)の使用経験

著者: 大堀勉 ,   神崎政裕 ,   依田丞司

ページ範囲:P.383 - P.384

 最近,新しい抗生物質がつぎつぎと多数出現し,尿路感染症の治療は著しい進歩をとげている。しかし一方,抗生物質の発達に伴なつて耐性菌の増加,菌交代現象,副作用等の問題があらわれ,各種抗生物質の発達した今日においてもなお治療困難な感染症を経験している現状である。したがつてさらに新しい抗生物質の出現が望まれるわけであるが,また抗生物質とは全く作用機序の異なつた薬剤が考慮され,この意味からホルムアルデヒド系薬剤が再認識されてきた。
 今回大日本製薬株式会社より提供されたHippramine(R-657)は,Methenamineの馬尿酸塩で,1895年Nicolaierによつて尿消毒剤として使用されているが,他の抗生物質や抗菌剤と全くタイプの異なるものであり,しかもすぐれた特徴を有し,とくにKlebsiella,Proteus, Pseudomonas等による難治性の感染症に有効であるとされている。

随筆

広川和一先生の思い出

著者: 土屋文雄

ページ範囲:P.397 - P.398

 広川和一先生は明治10年1月15日新潟県中蒲原郡大江山村直り山に医師広川東朔の長男として生れ明治25年上京第一高等学校を経て明治34年東京帝国大学医学部を卒業,佐藤外科教室に入り,外科学を専攻された。
 明治37年新潟県高田市郡病院に赴任,同県中蒲原郡亀田町池田寅次郎長女タミ子と結婚,同38年召集をうけ旭川,広島陸軍病院に勤務,召集解除後同40年オーストリアに留学,泌尿器科を修め同43年帰朝,朝倉病院副院長を勤め大正元年芝愛宕町に開業,同3年神田駿河台南甲賀町17(現主婦の友社の場所)に移り,大正12年5月同じく南甲賀町20(現在の馬事会館及び大田姫稲荷の場所)に広壮の病院を新築,盛大な開院式を挙げられ,病院は繁昌して門前市をなした。

見聞記

霊長類を用いた内科的および外科的実験に関する会議(1)

著者: 中村宏

ページ範囲:P.399 - P.402

 アメリカ合衆国では,現在犬やモルモットのような今まで一般に用いられてきた動物の代りに,猿,ひひ(baboon)チンパンジーのような霊長類(primates)を実験動物として用いようとしている傾向にある。その理由は,解剖学的,生理学的,その他多くの点で,霊長類の方がより人に近いからである。犬やモルモットで行なつた実験よりも,霊長類で行なつた実験の方が,より臨床的に応用しうることが多いのである。例えば,薬剤の致死量,副作用は霊長類では人とほとんど同じ結果を示すし,心血管系では犬は大血管が脆ろく,心臓から出る大血管の解剖も犬では人と違うが,霊長類では,血管も弾力性があるし,大血管の解剖も人と全く同じである。産科の動物実験では,人と同じ解剖を有する動物を用いることがもつとも重要だが,霊長類以外にはこのような動物はいない。胆道の解剖も犬では人と違うが,霊長類ではやはり人と同じである。Dr.Goldsmithがひひを用いて始めて住血吸虫症の外科的治療法を確立したのも,犬では住血吸虫症が実験的に起こらないこと,門脈系の解剖がひひと人では全く同じことによる。ひひで成功したので,人に応用し,すでに数十人の患者をこの手術的治療法で救つたのも,ひひを実験動物として選んだためということができよう。

教室だより

東京大学

著者: 寺脇良郎

ページ範囲:P.403 - P.403

 周知のごとく,本邦各大学における泌尿器科教室は最近まで皮膚泌尿器科教室という変則の形をとつてきたが,これには東大泌尿器科教室の歴史が関与しているので,教室の沿革に触れつつ現況を述べる。
 明治31年,土肥慶蔵教授が皮膚病学黴毒学講座(明治26年設置)の初の専任教授に就任された。土肥教授は先の欧州留学中に,皮膚病学研究の他にGuyon, Nitze等の泌尿器科学の先達に接して泌尿器科学にも非常な熱意と興味を持つて帰朝され,これが契機となつて,皮膚科教室を主宰されるに当り教室内に泌尿器科室を設けてその発展を図られた。以後,室主任には代々の助教授が当られ,大正10年には皮膚病学講座は皮膚科学泌尿器科学講座と改称され,次いで大正15年7月1日,泌尿器科学講座が分離設置の運びとなつて,根岸博助教授が分担された。そして,昭和2年7月,高橋明教授が新潟医大より初代教授として着任,泌尿器科学講座を担当されるに及んで,初めて独立講座となつた。しかし教室としては未だ皮膚泌尿器科教室の形をとり,昭和21年までこの形が続くのである。

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外国文献

ページ範囲:P.404 - P.405

THE JOURNAL OF UROLOGY Vol.98, No.5, November 1967
Kidney Injuries in Children. T.S.Morse, J.P. Smith, W.H.R.Howard and M.I.Rowe.539
Compensatory Renal Hypertrophy in Parabiotic Rats.J.W.Thompson and B.Lytton 548

内国文献

ページ範囲:P.406 - P.407

副腎・後腹膜
・ 本邦におけるPheochromocytomaの総症例をめぐつて,天方義邦,内山節夫,日下部博,神前五郎:泌尿器科紀要,14; 127, 1968.
・ 褐色細胞腫の1例,池上奎一・他:皮膚と泌尿,29;1317, 1968.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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