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綜説
男性ホルモンの作用機序—特に分子生物学的見地よりみた前立腺への作用について
著者: 志田圭三1 島崎淳1 伊藤善一1 山中英寿1
所属機関: 1群馬大学医学部泌尿器科教室
ページ範囲:P.417 - P.422
文献購入ページに移動睾丸機能不全症の治療対策として,現在ゴナドトロピンによる刺激療法と,男性ホルモンによる補給療法が一般に広く行なわれている。後者は,男性ホルモンの標的臓器である雄性副性器を肥大,発育せしめ,その機能亢進をきたすことを目的としている。類宦官症,男子更年期障害に対するtestosterone depot剤投与がそれである。Testo-sterone療法により大部分の症例は,副性器の機能亢進をみ,臨床的にも性機能の恢復をみるものであるが,なかには全くtestosteroneに反応せず,症状の改善を認めない症例も少なからず経験される。
同様の事態は,卵巣機能不全の症例においても観察されている。いわゆる子宮発育不全のなかで,いかに多量の卵胞ホルモンを投与しても子宮発育をきたさぬ症例である。このような現象は,ラット,マウス等の実験動物にあつては全く認めることができず,自然陶汰のほとんど行なわれぬho-mo sapiens特有の現象である。性ホルモンに対する標的臓器の感受性が先天的あるいは後天的(主にagingによる変化にて)に喪失することによつておこるものと考えられる。かかる症例に対する治療対策は,性ホルモンの副性器に対する作用機序を解明して始めてなされうるものである。
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