文献詳細
原著
乏尿,無尿を伴わぬ術後急性腎不全について
著者: 井上武夫1 広川信1 塩崎洋2
所属機関: 1横浜市立市民病院泌尿器科 2横浜市立大学医学部泌尿器科教室
ページ範囲:P.429 - P.433
文献概要
術後または外傷後に起こる急性腎不全はとくに珍らしいものではない。乏尿,無尿,低比重尿,高窒素血症,血圧亢進などを主症状とするが,乏尿,無尿はほとんど必発症状で,これによつてわれわれは第一に気付く程である。しかし,乏尿,無尿が症状として余りに強く打ち出されているために,腎不全すなわち乏尿,無尿と解訳し勝ちである。この事は,日本泌尿器科全書にも,急性腎不全という項目は無く,無尿症として取扱われていることでも了解できると思う。この概念で,日常の臨床には充分であり,事実われわれもそのように思つていたが,実は例外があり,乏尿,無尿を伴わず,むしろ尿量は正常またはそれ以上でありながら,高窒素血症となつた術後急性腎不全を相次いで経験した。ここにその3例を報告し,諸賢の御批判を仰ぎ,臨床の一助として戴きたい。
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