文献詳細
原著
帝王切開後の膀胱子宮頸管瘻の1例—Youssef's syndromeについて
著者: 町田豊平1 石橋晃1 佐藤英資1 吉良正士1 斎藤賢一1 南武1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学泌尿器科教室
ページ範囲:P.681 - P.687
文献概要
尿瘻のなかでも女性々器瘻は,臨床的にしばしば遭遇する婦人科的泌尿器科疾患として重要な位置をしめている。特に膀胱は女性々器に隣接しており,産婦人科的処置に際し外科的侵襲をうけ易く各種の膀胱瘻が発現する。これら膀胱瘻のうち,膀胱と子宮頸管との間に生ずるいわゆる膀胱子宮頸管瘻は非常に稀な疾患で,本邦では現在まで約30症例の報告がみられるにすぎない。本症は近年,産科的処置特に帝王切開と関係して発症する傾向がみられ,臨床的にはIatrogenic diseaseであり,留意すべき疾患といえよう。
われわれは最近,遷延分娩による帝王切開後,周期性血尿と膣性失禁を発症し,膀胱子宮頸管瘻の診断のもとに,膣式瘻孔閉塞術および頸管形成術を施行,術後約3年で分娩に成功した家婦の1例を経験した。本症例を報告するとともに本邦での報告例を集計し,その統計的観察と本症についての若干の問題点を検討したい。
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