文献詳細
特集(増刊号の)2 腎不全
Ⅳ.腎不全の対策 3.人工腎臓
日本の実情に即した長期透析法とその実際
著者: 沢西謙次1 川村寿一1 上山秀麿1 山下奣世1 三宅ヨシマル1 岡部達士郎1 土屋正孝1 原晃1 加藤篤二1
所属機関: 1京都大学医学部附属病院人工腎臓室
ページ範囲:P.195 - P.201
文献概要
日本の実情に即した長期透析法と,その実際というテーマであるが,1,2の例外を除いてほとんどが欧米の機械,装置を購入,設置して血液透析を行なつている状態であるため,日本の実情に即した独特の透析法があるわけではない。そこで我国の現時点における長期透析患者の適応条件,装置,設備およびその運営方法の現状と,透析手技上における若干の改良点について述べる。
我国における人工腎臓による血液透析療法も,既に10数年の歴史をもつ。この間東大D-L型人工腎臓や,慈恵大電気透析法等の,独自の人工腎臓が開発され,臨床的にも使用されたが手技の繁雑さ,および効率の上での問題点等あり,今日一般に使用されているのは,Kolffのtwin coil型とKiil型人工腎臓の2つの型のものが大部分であり,一部例外的にDia-lungやMera型がある。そして近年慢性腎不全に対する長期透析は,やつと軌道にのり出した時期とでもいうべきであろう。慢性腎不全に対する長期血液透析療法はいうに易く行なうに難しい諸々の問題点がある。すなわち医学的問題だけでは片付かない社会,経済問題がそれである。現在我国で毎年腎不全で死亡する患者は,約5,000人はあるといわれているが,第3回人工透析研究会で発表した沢西の調査では,昭和44年4月現在,約80の機関病院で398人の長期透析患者がいるにすぎない。これらの患者は如何なる理由で,長期透析患者として選ばれたか?
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