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特集(増刊号の)2 腎不全 Ⅳ.腎不全の対策 3.人工腎臓
透析と腎移植の関連性
著者: 栗田孝1 高羽津1 永野俊介1 高橋香司1 園田孝夫1
所属機関: 1大阪大学医学部泌尿器科学教室
ページ範囲:P.203 - P.213
文献購入ページに移動腎移植は慢性腎不全の治療として既に本邦でも数多くの臨床例が報告され人工腎臓とともに今後益々発展していくと考えられている。しかしながら腎移植術には現在でも種々の制約を受けることは否めない。
すなわち社会的な因子を除外して考えても,移植を必要とする症例は全からく末期腎不全患者であつて,その身体条件は尿毒症と称せられる高度の酸血尿,高カリウム血症,貧血,低蛋白血症,意識障害等々を有し,その他循環器系や消化器系にも重篤な合併症を併発している場合が少なくない。これらの症例が直に腎移植の適応にならないことは自明の理であるが,この改善の手段として用いられるものでは人工腎臓による血液透析が最も効果的である。すなわち本来慢性腎不全を対象とした場合,血液透析そのものにも適応に関しては,患者選択の基準あるいは時期,手段等種々論議されている所であるが,腎移植は血液透析によつて医学的にも一定水準以上に改善され維持されることが不可欠であり,いいかえれば人工腎臓によつてスクリーニングされて初めて安全に施行できるものである。特に世界的なすう勢として腎移植の絶対条件である腎提供を屍体腎に求めている現在では,人工腎臓による長期透析はその重要性が益々増大するのである。
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