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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科23巻2号

1969年02月発行

雑誌目次

図譜・289

診断上興味ありし腎腫瘍例

著者: 斯波光生 ,   南茂正 ,   石川登喜治

ページ範囲:P.100 - P.101

 患者 37才,男。
 主訴 左腎部鈍痛と肉眼的血尿。

図譜・290

包皮結石

著者: 冨山哲郎 ,   中山健

ページ範囲:P.102 - P.103

 患者 悦○里○,83才,無職。
 初診 昭和43年7月27日。

綜説

腎移植—諸外国の状勢を観察してわが国の現状を展望する

著者: 河村謙二

ページ範囲:P.105 - P.111

はじめに
 わが国における腎移植のこれまでの経過とその将来の展望について書けとの編集部からの注文であるが,腎移植についての研究も,臨床も,これを世界的にみても他の分野の研究に較べて比較的歴史は浅い。ことにわが国のそれは1,2の人達によつて試みられていたのみで,これが医学の研究の大きな課題として取り上げられ,実験的な基礎的研究や,臨床手術の行なわれるようになつたのは1965年以降のこと,すなわち未だ今日では3年あまりしか経過していない。したがつて腎移植の今日までの経過といえば先ず諸外国で始められた腎移植に関する諸事項を述べて,それが今日までにきた状勢,進展を一般的に回顧し,それを基としてその経過中にわが国でとり上げられてきた腎移植の状態についてまず述べ,ついで今日におけるわが国の腎移植の現況と,その将来への展望を述べることとする。
 現況といつても諸外国もそうであるが,ことに日本においてはその手術例が1967年7月1日から1968年7月1日までだけで,30例以上の手術例が行なわれ,106例に達しはしたものの,生存例の経過年数も極めて短かく,アメリカにおいて登録されている1967年までの1189例などの成績をも観察に加えないと,腎移植の現況も,その将来も語れないという状態である。

原著

腎動脈像より診断した腎梗塞

著者: 斯波光生 ,   南茂正 ,   石川登喜治

ページ範囲:P.113 - P.117

Ⅰ.緒言
 腎梗塞はなおまれな疾患とされ,本邦報告例もいまだ23例をみるにすぎず,臨床診断例も5例にすぎない。
 われわれは,すでに2例の臨床診断例を報告したが,今回さらに腎動脈撮影による診断例をえたので症例をのべる。

乳児嚢胞腎の1例

著者: 坂田安之輔 ,   金子佳雄

ページ範囲:P.119 - P.124

Ⅰ.はじめに
 腎に発生する嚢胞性疾患は,その多くが先天性の発育異常とみなされており,病因について,多様の見解が述べられているとともに,多くの分類が試みられている。中でも,嚢胞腎は,両腎性の嚢胞性疾患で,発生頻度が比較的高く,家系的な素因が重視され,進行性の腎機能障害を示すことなどから,古くから興味を持たれてきた。そして,死産児または新生児の剖検によつて発見される嚢胞腎(幼児型)と,成長してから発見される嚢胞腎(成人型)とでは,種々の点で差異があるといわれ,また,小児の症例もまれに報告されている。われわれは,生後8ヵ月の乳児嚢胞腎の症例を経験したので報告し,幼児型と成人型との差異について考えてみたい。

神経因性膀胱に発生した膀胱自然破裂の2例

著者: 指出昌秀 ,   千葉隆一 ,   五十嵐邦夫 ,   佐竹佑之

ページ範囲:P.125 - P.130

Ⅰ.緒言
 交通,労働災害の激増する今日,外傷性膀胱破裂は臨床上かなり頻繁に経験されるものである。しかし,膀胱に何ら特別な外力が加わつたと考えられない,いわゆる膀胱自然破裂は比較的稀であるといわれている。本邦においても後者については結核性萎縮膀胱の自然破裂に関する報告が散見されるのみであつたが,今回我々は神経因性膀胱に発生した膀胱自然破裂症例2例を経験したので,多少の文献的考察を加え報告する。

甲状腺転移を伴つた膀胱癌の1例

著者: 石部知行 ,   松木暁 ,   仁平寛巳

ページ範囲:P.131 - P.136

Ⅰ.緒言
 甲状腺への腫瘍転移は比較的稀で,とくに膀胱癌からの甲状腺転移はごくまれなものとされてきた。われわれは膀胱に原発した移行上皮癌が剖検によつて甲状腺に転移したことを明らかにできた1例を経験したのでこの症例を報告し,あわせて続発性甲状腺腫瘍に関する文献的考察を行なつた。

巨大膀胱結石の1例

著者: 宮本達也 ,   阿部富弥

ページ範囲:P.137 - P.141

Ⅰ.緒言
 最近我々は440gの巨大膀胱結石を経験したので報告するとともに,集め得た症例について文献的考察を加えたい。

女児尿道末梢部狭窄の2例

著者: 中島文雄 ,   折笠精一 ,   阿部弥理

ページ範囲:P.145 - P.150

Ⅰ.緒言
 幼小児の排尿異常や尿感染症はともすると看過されやすいが,その基盤に何らかの重大な下部尿路の先天性異常が存在することが多い,先天性下部尿路通過障害としてはTrigonal curtain obstruc-tion, Bladder neck obstruction,後部尿道弁,外尿道口狭窄,Distal urethral stenosis等々が報告されている。
 このうち女児のDistal urethral stenosisは最近欧米において注目を集めているが,本邦ではまだその報告はないようである。

男性半陰陽の1例

著者: 竹内睦男 ,   白井将文 ,   松下鈆三郎 ,   一条貞敏 ,   佐々木桂一

ページ範囲:P.153 - P.156

Ⅰ.緒言
 半陰陽の研究はKlebsによつて初めてその医学的分類が試みられて以来,性染色体,性染色質の発見によつて長足の進歩をとげた。
 当教室においては先に心因性反応を呈した男性半陰陽の1例1)を報告したが,最近再び本症の1例を経験したので多少の文献的考察を加えてここに報告する。

文献抄録

前立腺癌の放射線治療/腎間質淋巴液中の抗生剤濃度

ページ範囲:P.117 - P.117

 前立腺癌が放射線により初めて治療されたのは1913年Pasteau,Deg-raisらによつてであるが,続いてYoung, Deming, Barringer, Bugbeeらの多数例におよぶ臨床報告がある。当時からその有効性については確認されていたが,何分にも周囲組織ことに腸管,膀胱に対する副作用が強いために抗男性ホルモン治療が広く用いられるようになつたことはよく知られている。しかし1951年放射性金が前立腺癌の局所病巣,転移巣に応用されるようになつてから再び放射線治療が脚光を浴びてきた。ことに最近では超高圧レ線の応用,各種同位元素の転移巣治療の応用は注目されるものがある。
 著者らの前立腺治療の経験からいうとStage 0の症例では根治的手術療法が最も予後が良く,57例のStage 0症例の5年予後では51列(89%)が健在であつた。Stage2の症例では根治手術のみでは1例の5年生存をえたが,手術とR.I.の組織内応用では48例が5年以上生存した。R.I.応用症例の副作用としては極めて少ないが,手術創の治癒遷延と会陰瘻形成を見たがその頻度は500例中0.2%であつた。

Urological Letter

陰茎痛の3例/トリコモーナス前立腺・精嚢腺炎およびろ胞性膀胱炎の治療

ページ範囲:P.124 - P.124

 過去16ヵ月間に筆者のところに陰茎痛を主訴とした患者が3人紹介されてきた。
 L.K.氏は52才で,8ヵ月前に多発性の良性ポリープのために18インチの長さにわたつての結腸切除術をうけた。留置カテーテルを抜去された後,歩行したり車に乗つたりすると陰茎にうずく痛みのおこることに気付いた。座つていたりベットに横になつているときには症状はなかつた。Gantrisinと前立腺マッサージを受けたあとはしばらくはよかつた。尿は検査したが正常であつた。培養でも陰性。前立腺は直腸診では軽度に腫張し,押してみると沼地のような感じであつた。前立腺分泌液には強拡大で(+++)の白血球があつた。排泄性尿路像では膀胱結石(直径2.5cm)がある以外正常。膀胱鏡検査で残尿は90mlあり,Ⅰ度の肉柱形成があり,前立腺にⅠ度の中葉肥大があつた。砕石術および前立腺のTURを行なつた。症状はこれで消失した。結石は分析の結果蓚酸結石であつた。

印象記

第19回日本泌尿器科学会中部連合地方会

著者: 多田茂

ページ範囲:P.161 - P.163

 11月3日を中心として中部連合地方会を行なうことがならわしのごとくになつているが,今年もさわやかな小春びよりにめぐまれた文化の日に大阪市大田村峯雄教授を会長として,大阪市阿部野区役所大講堂において午前9時に開会され,夕刻6時過ぎに次回会長京都府立医大小田完五教授のあいさつをもつて終了した。
 午前中には一般演説17題および阪市大前川助教授の"腎不全とその対策"についての特別講演があり,午後には一般演説26題(欠題2)およびシンポジウム"腎疾患における腎保存手術"があつた。まず特別講演の内容を紹介すると次のごとくである。慢性腎不全における高血圧を対象として初期には胸管排液法つづいて腹膜潅流を施行してきたが最近はもつぱら血液透析によつている。約400回の透析を行なつた結果について①腎不全患者の計画的管理が可能となつた。②rehabilitationを考えるようになつた。③腎移植術の応用が可能となつた。以上のごとき利点をあげている。慢性腎不全に対する透析の成績は必ずしも良いとはいえないが,これは無せん択的にすべての患者に行なつたことと初期における技術的未熟に起因するものと考えている。

小さな工夫・2

尿道撮影用カテーテルの工夫

著者: 佐藤英資

ページ範囲:P.164 - P.165

 術者への直接被曝を避けるための簡便な遠隔操作用尿道撮影器具を工夫した。
 第1図器具:Foley's bag catheter(12F〜18F)が本体で,その先につけた2本の支持紐と,catheterを陰茎に固定するためのバンドからなる。支持紐の先端と固定バンドには,magic tapeを用いてあり両者の接続はOne touchで操作できる。また固定バンドはEverSoft製なので包皮を傷つける心配がない。

教室だより

京都府立医科大学

著者: 井上進

ページ範囲:P.166 - P.166

 北に比叡を仰ぎ,南に開け,東面して鴨のせせらぎ,西は御所の森と対峙する風光明眉の一角に京都府立医科大学があります。本学の歴史は古く,その発祥は明治5年に始まり,大正10年には大学令により医科大学として認可されています。しかし本学における泌尿器科の呼称は比較的新しく,京都府立医科大学八十年史によれば大正12年3月当時の皮膚科学教授中川清先生があらたに皮膚科泌尿器科学教授に任命せられた時に始まるとされています。聞き伝えるところによれば,昭和の初め鈴木成美助教授(のちに微生物学教授となる)が東大泌尿器科に内地留学しておられ,教室誕生の陣痛の兆候であつたともいえましよう。戦後,片岡八束先生,岩下健三先生が教授として教室を主催され,教室の発展,子弟の育成につくされており,この間に第2回と第8回日本皮膚科泌尿器科中部連合地方会が開催されています。
 現在の泌尿器科学教室は岩下先生の善処と儘力によつて昭和39年5月に皮膚科学教室と分離し新設されました。外来診察室,研究室,医局などは古い建物のままでしたが,小田完五教授を初代として新しい第一歩をふみ出しました。当時は教授を含めて教室員は僅か5名,文字通りコマ鼠のように日夜教育,研究そして臨床に追いまわされたものでした。

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外国文献

ページ範囲:P.167 - P.168

BRITISH JOURNAL OF UROLOGYVol.40, No.4, 1968
Reflux in Duplicated Ureters.Arian D.Amar 385
Composition of Urinary Calculi by X-ray Diffra-ction:Collected Data from Various Localities.Dame Kathleen Lonsdale,D.June Sutor and Susan E.Wooley 402

内国文献

ページ範囲:P.169 - P.171

腎・腎盂
 腎盂腎炎と高血圧,上田泰・他:日本臨床,26;(11)5,1968.
 腎血管性高血圧の診断,上田英雄:日本臨床,26;(11),85,1968.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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