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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科23巻3号

1969年03月発行

綜説

人工腎臓

著者: 稲生綱政1 水野克己1

所属機関: 1東京大学医学部第二外科学教室

ページ範囲:P.185 - P.191

文献概要

Ⅰ.はじめに
 人工腎臓とは透析膜を介してDonnanの膜平衡の原理に基づいた,血中老廃物の排除と水分電解質の調整を行なうのを目的とした装置であり,人工腎臓というよりは血液透析装置と呼ぶのがふさわしい。したがつて尿毒症の改善が一義的なものであり,一種の対症療法であり原因療法としての意義は少ない。このため,その開発の初期には腎機能が可逆的であり数日間の延命効果があれば,以後は患者腎が回復しうる急性腎不全や腎機能障害を伴なわない薬物中毒患者に対する急速な薬物除去が良い適応とされてきたのは当然のことといえる。
 しかし,Ableにより初めて作られた人工腎臓装置がAlwall,Skeggsら枚挙にいとまがない程の研究者により改善を見た後,Kolff, Kiilに至りはぼ完成の域に達し,透析能率の極度な向上と安全性の確立がえられるようになつた。さらにScri-bnerが動静脈間に設置する動静脈留置短絡を発表した。この短絡路は第1図に示すように,テフロン・カニューレとこれを連結するシリコン・ゴムよりなりシリコン・ゴムの部分を脱着し透析回路と連結することにより限りなく透析を繰返すことが可能となつた。これらの発展によりそれまで急性増悪期のみが良い適応とされてきた慢性腎炎に対する適応が著しく拡大された。すなわち腎機能の全く廃絶した患者でも週2回位の透析を繰返すことにより,尿毒症状が全く消退するのみならず社会復帰をも可能としたのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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