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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科24巻11号

1970年11月発行

雑誌目次

図譜・333

部分的腎梗塞による偏腎性高血圧症

著者: 川村俊三 ,   杉田篤生 ,   小津堅輔 ,   石崎允 ,   新井元凱

ページ範囲:P.980 - P.981

 症例 17歳,男子。
 主訴 頭重感。

図譜・334

塊状腎

著者: 大室博 ,   藤枝順一郎 ,   佐藤昭策 ,   勝目三千人

ページ範囲:P.982 - P.983

 患者 22歳,男子。
 主訴 左側腹部瘻孔。

図譜 泌尿器科病理組織図譜・11

前立腺肥大症および前立腺癌

著者: 田崎寛 ,   坂口弘

ページ範囲:P.986 - P.987

1.前立腺肥大症Benign hyperplasia
 患者 75歳,男子。主訴 排尿困難。

綜説

膀胱癌化学療法—血管よりの治療

著者: 中村恒雄 ,   緒方二郎 ,   右田紀雄 ,   野溝昌成

ページ範囲:P.989 - P.997

はじめに
 癌の化学療法は1865年Lissauer1)が白血病にPotassium arseniteを投与したのに始まるとされるが,第2次大戦後,ことに最近の発展にはまこと目覚しいものがある。この理由として,癌化学療法が一時的にもせよ臨床的にある程度の効果をもたらすこと,癌を全身病となす概念が台頭し,白血病,悪性リンパ腫などの系統臓器腫瘍だけでなく,限局性癌においても方法論的に優れていること,さらには最近における幾多の優秀な制癌剤の開発などが挙げられる。しかしながら感染症に対する化学療法の効果に比べて,その効果にはなお大きなへだたりがあり,手術療法あるいは放射線療法無効例に化学療法を行なつても無意味となすものもある。たしかに現在においては化学療法を単独ないし主要療法となすには問題もあるが,最近化学療法のみで急性白血病2),Choriocarcinoma3),Neuroblastoma, Wilms'tumor,横紋筋肉腫などの症例を5年以上生存せしめえたとなす報告もあり,制癌剤の開発,改良とともに手術療法,放射線療法との併用,あるいは投与法の工夫によつて癌治療成績の向上に努力すべきであろう。膀胱癌に対する制癌剤の全身性投与法は手術例における併用療法あるいは手術不能例に対する姑息的療法として行なわれて来た。

Urological Letter

腎固定について,他

ページ範囲:P.997 - P.997

 これまで根拠が確実でないのに腎固定術を行なわれた例が多いので,本手術は不評判である。しかし,腎固定術が確かに必要な例がある。
 遊走腎が手術的に固定されるべき条件は以下の通りである。

パネルディスカッション 副腎外科における最近の進歩と問題点・2

褐色細胞腫治療上の進歩

著者: 真崎善二郎

ページ範囲:P.999 - P.1003

 褐色細胞腫の治療は手術で腫瘍をとり除くという一言につきるが,従来手術にはかなり危険を伴うものと理解されてきた。しかし,現在では後に述べる種々の管理方法を駆使することによつて,手術は比較的容易に行なわれるようになつた。ここでは褐色細胞腫治療上の進歩の跡を通覧し,現在における優れた管理法について述べてみたい。

討論

副腎外科の最近の進歩と問題点

著者: 高安久雄 ,   真崎善二郎 ,   渡辺泱 ,   佐藤昭太郎 ,   阿曽佳郎

ページ範囲:P.1004 - P.1018

 高安(司会) ありがとうございました。これからいよいよ御討論願うわけであります。本日はいろいろな内分泌学的測定法というようなことには触れませんで,副腎外科という立場から,御議論願うわけですが,その前に私がちよつと現時点での診断のcriteriaをまとめてありますので,ここにおみせいたします。こういう点でなにか御議論がありましたらしていただくという意味ですが,第1表はCushing症候群診断についての標準的なことですが,問題はその病因が副腎のadenomaか,carcinomaか,hyperplasiaか,pituitary tumorか,最近問題になつているectopic ACTH産生腫瘍であるか,この点がまだ触れられてないわけです。原発性アルドステロン症の診断についてはConnが3つのcriteriaを示しております。また稀な例外としてcongenitalのaldosteronismということをいつていますが(第2表),adrenocortical hyperplasiaによるprimary aldostero-nismというようなものも稀なものですが報告があり,primary aldosteronismをどういうふうに定義づけるかというところにもまた問題があります。第3表に示しましたように,pheochromocytomaの診断につきましては,最近あまり特別な変化はないと思われます。

文献抄録

前立腺癌の凍結治療—転移巣への影響

ページ範囲:P.1018 - P.1018

 前立腺悪性腫瘍に対して凍結外科治療が行なわれるようになつてから前立腺組織の冷凍破壊による免疫学的効果の可能性について論議が行なわれている。著者らは実験的に家兎前立腺を液体窒素で凍結させると凍結組織に対する抗体が産生され,その抗体は前立腺組織の自己抗体であることを知つた。そして著者らは過去4年間に80例の前立腺癌患者を凍結外科的に治療し臨床的観察を行なつているが,第3度の前立腺癌症例中,肺・リンパ節などに著明な癌転移を認めた患者が2ないし3回の前立腺凍結後に転移巣の極めて緩解した3症例を述べている。
 第1例は68歳の第3度前立腺癌患者で,頸椎Ⅳに骨転移があり,排尿障害,夜間頻尿,右上肢の疼痛・知覚鈍麻,頸部の不動性,腰痛などを訴えていた。1968年6月19日に第1回の前立腺部凍結を施行し,排尿障害が改善され,7月18日に2回目の凍結を行なつたところ,その後2週間して頸部の疼痛,上肢の麻痺は消失,頸部も動くようになつた。1969年2月のレ線所見で骨転移巣に骨の再生を認めた。

原著

重複癌に関する考察を中心とした肺癌解剖例の泌尿生殖系臓器の検討

著者: 藤田公生 ,   下里幸雄 ,   馬場謙介

ページ範囲:P.1021 - P.1028

緒言
 国立がんセンターにおける肺癌解剖例の泌尿生殖系臓器を検索し,その転移の特異性と重複癌の問題について考察を加えた。

Bourneville-Pringle氏病に伴つた腎平滑筋肉腫の1例

著者: 田代彰 ,   小川俊一 ,   三樹明教 ,   横山荘太郎 ,   成瀬克邦

ページ範囲:P.1029 - P.1035

緒言
 腎腫瘍の中,肉腫は比較的稀なもので,その中でも平滑筋肉腫は珍しい疾患である。更に,Bourneville-Pringle母斑症にこれを認めた症例は,本邦の文献でも稀有なものである。
 われわれは最近,18歳,女子のBourneville-Pringle氏病に併発した腎平滑筋肉腫を経験したので報告する。

乳児先天性砂時計膀胱の1例

著者: 折笠精一 ,   南茂正 ,   松下高暁 ,   志田直悌

ページ範囲:P.1037 - P.1040

緒言
 砂時計膀胱の成因については現在定説はないが,その多くは先天性疾患と考えられている。にもかかわらず,幼小児における砂時計膀胱の報告は本邦および欧米文献上極めて稀である。われわれは最近本邦報告例中最年少と思われる生後10カ月の乳児先天性砂時計膀胱を経験したので報告する。

腹部腫瘤を主訴とした前立腺肉腫の1例

著者: 井上卓治 ,   斉藤清 ,   広川信 ,   石堂哲郎

ページ範囲:P.1041 - P.1047

緒言
 前立腺肉腫はまれな疾患であり,それは前立腺癌1,000例中1例ぐらいの割合でしか遭遇しないものである。欧米においては,1839年Staffordが第1例を報告して以来250例以上が報告されており,本邦においては,1911年茂木が第1例を報告して以来80余例の報告がある。
 著者らは60歳の男子で,前立腺平滑筋肉腫と診断がついてから現在まで3年以上も元気で生存している症例を経験したので報告する。

いわゆる"Ambiguous External Genitalia"をもった男性半陰陽について

著者: 岩動孝一郎 ,   佐久間実 ,   高崎悦司

ページ範囲:P.1049 - P.1055

はじめに
 男性半陰陽はいうまでもなく,性腺が睾丸でありながら,内外性器に種々の程度の女性化傾向をもつ奇型である。この場合通常腟の存在を確かめることによつて単純性の尿道下裂あるいは停留睾丸などと区別される。男性半陰陽については古くから多くの分類法が知られているが,すべての症例について都合よくあてはまる理想的な分類法はみあたらないようである。Jones and Scottの分類(第1表)1)におけるgroup Aのいわゆるambigu-ous external genitaliaを呈しMüller氏管の分化がみられないもの,すなわち1)型でも女性乳房をともなう症例が報告されており2〜4),group Bにおける睾丸女性化症候群の不全型ないしは亜型と呼ばれる一部男性化をともなつた症例との間にはつきりした区別をつけることはむずかしい。
 またgroup AのうちMüller氏管の発育をともなう一群,すなわち2)型については,両側性腺が睾丸である症例のみでなく一側性腺無形成の"mixed gonadal dysgenesisあるいはasymmetricalgonadal differentiationとよばれる症例がふくまれている1)。男性半陰陽の分類上,このように一側性腺無形成の場合のとりあつかいかたについても意見の完全な統一ができていないようである。

先天性直腸尿道瘻の2例

著者: 井上武夫 ,   平野昭彦 ,   鈴木彦人 ,   広川信

ページ範囲:P.1057 - P.1062

緒言
 5,6年前,尿道狭窄の手術に興味を持ち始めてから,直腸尿道瘻の症例にみずからの手で当たつてみたいと考えていた。大変むずかしい手術のように文献から印象を受けていた。
 入局当時,恩師原田教授が会陰式前立腺摘除術後の本症に,大変手こずられたのを記憶している。自分自身では,6年前の散弾による直腸尿道瘻の症例および約15年前の膀胱全摘出術時の直腸損傷に対して,Young-Stoneの手術をした経験があるが,いずれも緊急手術であらかじめプランを立てて,案を練つてやつた手術ではない。

見聞記

米国のレジデント(2)—その生活について

著者: 岡田清己

ページ範囲:P.1065 - P.1067

 レジデント時代は公私共に苦難の時代であることは,日本の医局員と変わるところがない。教授やアテンディングにつかえ,彼らから睨まれれば将来の栄光どころかレジデントを無事に終了することも覚つかない。また終わつてからの次の就職口への推薦状をもらうのも容易なことではない。レジデントは丁稚奉公であるという感じは強く,また強かつたらしい。だからレジデント時代の収入は低く,生活が苦しかつたとアテンディングが昔を語つている。仕事の厳しさは今も昔と同じ様につらいが,ここ5年ぐらいの間に,レジデントの収入は増加し,経済的には楽になつたという。この理由としては,生活費が高くなつたことおよびレジデントが弁護士をやとつて賃上げをやり,成功したためである。
 それでは実際にレジデントがどの程度の収入を得,また病院からどの程度の恩恵をうけているか具体的な数字を示してみたいと思う。この統計はResident and Staff Vol 16, No.51970年およびDepartment of Hospi-tal, New Yorkの統計を参考とした。

小さな工夫・11

血液透析回路内圧簡易監視装置

著者: 植田覺

ページ範囲:P.1068 - P.1068

 人工腎臓による血液透析中の事故を未然に防止する目的で,高価な自動監視装置が市販されているが,著者は,Kolff型twin coil人工腎の使用中,静脈側回路の通過障害による圧の急上昇,coilの破綻による圧の急降下などの回路内圧の急激な変化をただちに知るため,簡単な監視装置を工夫した。
 材料水銀血圧計1台,D.C.10V用ブザー1個,直流用リレースイッチ2個,電源トランス,セレン整流器,電解コンデンサー,各1個,その他小物部品。

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外国文献

ページ範囲:P.1069 - P.1071

THE JOURNAL OF UROLOGYVol.103, No.5, May, 1970
Preoperative Tumor Localization by Adrenal Ve-nography in Patients With Primary Aldostero-nism:Comparison With Operative Findings.J.C.Cerny, R.M.Nesbit, J.W.Conn, J.J.Boooks-tein, D.R.Rovner, E.L.Cohen, C.P.Lucas, A.Warshawsky and T.Southwell 521
Left Adrenal Aldosterone Producing Tumor WithCongenitally Absent Right Adrenal Gland.E.A.Orzeck, C.R.Ayers and M.P.Walzak, Jr.529

内国文献

ページ範囲:P.1072 - P.1074


 ○鼠径部に流注膿瘍を伴つた幼児腎結核,加藤篤二・小林宏暢:泌尿紀要,16;369,1970.
 ○Rat腎皮質におけるCountercurrent System,酒井文徳:医学のあゆみ,74;316,1970.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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