文献詳細
原著
Congenital Unilateral Multicystic Kidneyの1例
著者: 久住治男1 寺邑能実1 松原藤継2
所属機関: 1金沢大学医学部泌尿器科学教室 2金沢大学医学部付属病院検査部
ページ範囲:P.225 - P.230
文献概要
主として新生児,小児にみられる腎の嚢胞性疾患の1つであるcongenital unilateral multicystic kidney (先天性偏側性多嚢腎)は,近年本邦においても次第に注目されるようになつた。本症に関する臨床病理学的考察は,混乱している腎の嚢胞性疾患の病因論の中にあつて,最も一般的なpolycystic kidneyなどと明らかに区別されうる独立した疾患であることを示している。
multicystic kidneyの記載は1894年Hildebra—ndt1)によつてなされ,congenital unilateral multi—cystic kidneyの名称はSchwartz2)(1936)によつて,7カ月,男児の摘除左腎に対し提唱されたのにはじまる。また本症の第1報告例は1897年,Springerによるものとされている。本症が種々の病名のもとに報告されていること,あるいは他の疾患と混同されて報告されていることは,すでにしばしば指摘されており,あるものはその解剖学的,胎生学的見地からcongenital aplasia with cystic degenerationなる名称を提唱している。しかしながら臨床家においては,臨床病理学的見解にもとづくcongenital unilateral multicystic kid—neyを用いるものが多い。
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