文献詳細
手術手技
文献概要
前立腺肥大症に対する各種の腺腫剔除術式のうち,会陰式前立腺剔除術は歴史的には最も古くより試みられた方法であるにもかかわらず,従来一般に「会陰の解剖が複雑で手技面倒のうえ視野が狭く時には直腸損傷の危険もある」というような理由で最も敬遠されている術式である。昭和27年以来約7年間会陰式手術に専念した筆者の経験でも,会陰式は確かに恥骨上式や恥骨後式等の腹壁切開法に比し解剖が複雑であり,また前立腺背面に達するまでの筋および筋膜(特にいわゆる直腸尿道筋やDenonvillier膜)の構造は各解剖書や手術書の記載が不統一・混乱しているばかりでなく実際に個人差が大なることを痛感していた。その後,加藤(日泌尿会誌,57巻2号,1966)は会陰式前立腺剔除の立場より会陰構造を詳しく再検討して従来の混乱をほぼ完全に解決してくれた。その結果以前よりは遙かに安心して容易に本術式を施行できるようになつて来ている。もちろん,会陰式には後述のごとき長・短所がある訳で,その適応は必らずしも多くはない(前立腺肥大症openoperationの1〜2割程度)が,泌尿器科医として前立腺肥大症と限らず種々の前立腺および後部尿道の外科的治療に際しperineal approachを習得して随時施行できることが望ましいと思う。
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