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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科24巻5号

1970年05月発行

雑誌目次

図譜・321

左腎腫瘍兼右腎発育不全の1例

著者: 生亀芳雄 ,   小川秀弥

ページ範囲:P.396 - P.397

 患者は32歳男子で主訴は血尿,高血圧である。既往歴,家族歴には特記すべきことはない。
 第1図は逆行性腎盂撮影像で右腎杯が嚢胞あるいは腫瘍によつて圧排されているような所見がみられる。

図譜・322

右孤立性腎嚢胞

著者: 三品輝男

ページ範囲:P.398 - P.399

 患者 70歳,男子。
 初診 昭和44年3月8日。

図譜 泌尿器科病理組織図譜・5

稀な腎腫瘍

著者: 田崎寛 ,   坂口弘

ページ範囲:P.402 - P.403

1.血管脂肪筋腫angiolipomyoma
 患者 31歳,女子。主訴 左側腹部鈍痛。
 臨床経過 IVPにより左腎盂の変形を指摘され,左腎腫瘍の診断で剔出術を受けた。

綜説

膀胱発癌の生化学

著者: 西村隆一

ページ範囲:P.405 - P.415

緒言
 人体の癌が外部からのある物質に原因するのではないかという考え方の代表的なものに約200年前Pott(1775)1)によつて報告された煙突掃除夫の陰嚢癌がある。Pottの報告は,その原因として"すす"という物質を考えたことは確かに重要な発見ではあるが"すす"の中のなにがすなわちその原因となる物質の化学構造は判明し得なかつたのである。ところが,1895年ドイツのRehn2)により染料であるfuchsinの生産に従事する人々に膀胱癌の発生がみられるという報告において,Rehnはfuchsinの原料であるanilineが癌発生の原因ではないかと考えたのである。Rehnの報告はanilineという一種の芳香族アミンを,すなわちはじめて発癌を化学構造式の判明した物質との関係において研究する端緒となつた点,非常に偉大な発見といえるのである。そしてこのRehnの報告は職業性膀胱癌,実験的膀胱癌および自然発生性膀胱癌の生化学的研究を促進する結果となつたのである。それゆえ,膀胱癌の発生原因はひとの他の部位の癌よりも詳細に研究されているため泌尿器科医のみならず,癌疫学者,生化学者にとつても興味ある癌であるといえよう。

手術手技

仙骨式前立腺摘除術

著者: 高井修道

ページ範囲:P.419 - P.422

緒言
 前立腺肥大症の腺腫摘除術(enucleation of ade-noma)は古くから出血の手術といわれ,また骨盤底の部に位置しているため充分な視野が得られない。しかも患者は高齢者であるため,できるかぎり短い時間で,出血を少なくしなければならない。このような理由から前立腺に到達するのに種々の経路が考えられ,臨床例について試みられ比較検討がなされている。到達法には大きく分けて前面または腹側(abdominal)よりの経路と,後面または下側よりの経路とがある。前者には恥骨上式(suprapubic route),と恥骨後式(retropubic route)とがある。後者には会陰式(perineal route)と仙骨または尾骨式(sacral or coccygeal route)とがある(第1図)。腹側より入る経路は術者にとつては比較的やりよい,つまり初心者でもやれる術式である。ことに恥骨上式は特別の技術を要しないので初心者が好んで行なう。ところが患者にとつては後下側よりの術式の方が術後全身状態の侵され方が遙かに少なく,大変楽である。Poor riskの患者にはぜひ試みるべき術式である。しかし後下側から入る経路は視野が比較的狭く,骨盤底の解剖を充分理解し,ある程度の習練をつんでいないといけない。つまり術者にとつてはむつかしい術式といえる。会陰式の最大の欠点は術後インポテンツになる頻度が高い。

原著

慶応義塾大学泌尿器科学教室における1966年(昭和41年)臨床統計

著者: 中薗昌明 ,   木村茂三 ,   新村研二 ,   川上隆 ,   川村猛 ,   大越正秋

ページ範囲:P.425 - P.429

緒言
 1966年度の慶応義塾大学医学部泌尿器科学教室における入院患者の疾患および手術々式統計を行なつたのでここに報告する。
 疾患および手術々式の分類形式は1962年度のInternational Classification of Diseases, Adapted(通称ICDA)の分類に従つた。当教室では1964年度からこの分類法を行なつており前回は臨床泌尿器科22巻,4号,269〜273頁に報告している。この分類法は国際的に最も広く取り入れられているが決して完全なものではなく,多くの欠点もみられるが,利用方法によつては多くの有利な点があり高く評価できるものと考えられる。

腎盂腫瘍の7例

著者: 深津英捷 ,   吉田和彦

ページ範囲:P.433 - P.438

緒言
 腎盂腫瘍は腎実質腫瘍に比して,はるかに稀で腎腫瘍中約10%内外を占めるにすぎない。しかし最近ややその比率が増加しつつあるように思われる。われわれは過去6年間に7例の腎盂腫瘍を経験したので報告する。

急性膀胱炎の臨床治療効果の判定について

著者: 生亀芳雄

ページ範囲:P.441 - P.445

はじめに
 さきに第13回日本化学療法学会総会のパネルディスカッションにおいて大越教授らは急性膀胱炎の臨床効果判定の基準について報告をおこなつている。
 その後,著者も第12回化学療法学会東部支部総会のシンポジウムで点数化による効果判定の基準に関し発表をおこない,これらの報告に対し当時,高安,西浦教授らもその意見を発表している。

小児の膀胱に原発した横紋筋肉腫の1例

著者: 宮田宏洋 ,   菅原奎二 ,   加藤正和 ,   鈴木騏一

ページ範囲:P.449 - P.453

緒言
 成人の膀胱腫瘍の大部分は上皮性腫瘍であるのに対し,小児の膀胱腫瘍は諸家の報告例1)2)をみると上皮性腫瘍は極めて稀であり一般に間葉性腫瘍がその大部分を占めている。
 私どもも最近小児の膀胱に原発した模紋筋肉腫の1例を経験したのでここに報告するとともに若干の文献的考察を試みた。

精索横紋筋肉腫の1例

著者: 高村孝夫 ,   網野勇 ,   佐々木憲一

ページ範囲:P.455 - P.460

 精索腫瘍は比較的稀なものとされているが,欧米文献ではLésauvage(1845)の報告以来380余例におよび,また本邦文献上では伊藤(1912)の円形細胞肉腫を第1例として現在まで66例の報告がある。
 最近,われわれは精索横紋筋肉腫の1例を経験したので以下報告する。

Urological Letter・95

精管結紮希望者への説明書(1)

ページ範囲:P.445 - P.445

 産児制限の希望が高まるにつれて,また多くの婦人が経口避妊薬服用の煩雑さに耐えられないことなどから,人口の爆発的増加の歯止め役のうち,好ましい方法として精管結紮がいよいよ広く行なわれるようになつてきた。
 われわれは精管結紮を希望する患者さん達に次のような説明書を渡している。

新薬治験

Premarinの使用経験—前立腺肥大症の手術に関連して

著者: 川倉宏一

ページ範囲:P.463 - P.464

緒言
 前立腺肥大症は泌尿器科領域における重要な疾患の一つであり,近年老令人口の増加と相まつて本邦においても次第に増加の傾向をみせている。従つて前立腺肥大症の手術症例の増加も著しく,最近では各泌尿器科クリニックにおいてroutineな手術として広く行なおれている。しかしながら,本症は老人疾患であることから手術には種々の問題を伴うことが多く,特に,術中後の出血に関してはしばしば悩まされる場合も多い。このたび,結合型エストロゲン製剤である新止血剤プレマリンを前立腺肥大症の手術に使用する機会を得たので報告する。

見聞記

第2回国際移植学会(6)

著者: 中村宏

ページ範囲:P.465 - P.468

一般演題:免疫生物学
(座長:Dr.R.A.Good, Univ.ofMinnesota, Minneapolis)
 このセッションでは6題中4題の腎移植に関する主として基礎的研究が採り上げられた。

文献抄録

感染性残尿患者に対する鉱物油の治療

ページ範囲:P.468 - P.468

 排尿障害のために常時残尿が,100ないし150ml以上ある患者では尿感染を防止することは極めて困難である。そこで著者等は細菌の発育しにくい溶液を膀胱内へ入れて,排尿後常時この溶液が膀胱内に残るようにすれば尿感染を防止し得るのではないかと考えて化学薬学科等の協力の下に,この目的にかなう物質のスクリーニングを施行し,鉱物油が最も適していることを確認した。鉱物油として粘張度89saybolt単位(37.9C)で比重0.891(25C)のものが適当であることを知り,このものは生体に無刺激,無味,無臭,無色のものである。著者等は現在までに20名の排尿障害で感染性残尿患者に用いていずれも有効であることを確認し,著効を得た3症例を紹介している。その1例は51才の女性で1967年3月残尿(750cc)を主訴に入院した患者である。膀胱頸部切開をうけウロコリン50mg1日4回の投与にもかかわらず,残尿は500ccから600ccが認められ尿は強い感染を示していた。膀胱内圧計測では膀胱は高度に弛緩し1050ccで尿意を催す程度である。そこで尿道の拡張と排尿の訓練を試み3週間留置カテーテルをおいて残尿は320cc程度となつた。

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外国文献

ページ範囲:P.469 - P.471

THE JOURNAL OF UROLOGYVol.102, No.6, December 1969.
Surgical Treatment of Cushing's Syndrome.J.W.Konnak and J.C.Cerny 653
Focal Cortical Hyperplasia.G.L.Popky, M.Bogash,H.Pollack and A.M.Longacre 657

内国文献

ページ範囲:P.473 - P.474


 ・腎の面からみた痛風治療薬,上田泰:外科治療,22;317,1970.
 ・腎盂腎炎性高血圧の診断と腎動脈撮影,桜井勗・中新井邦夫:泌尿紀要,16;59,1970.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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