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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科25巻13号

1971年12月発行

雑誌目次

特集(増刊号の)4 泌尿器と関連領域の症候レントゲン診断 Ⅰ.尿路疾患のレ線検査法

上部尿路のレ線検査法

著者: 黒田恭一

ページ範囲:P.9 - P.19

Ⅰ.検査前準備
a.被検者に対する処置
 上部尿路のレ線検査法に共通的な事項として,胃腸内のガスや糞塊は,レ線フイルム読影上の大きな障害因子となるので,撮影前に消化管をできるだけ空虚にすること,ならびに腸管内のガスを除去することが重要である。同様の理由により,消化管レ線検査後1週以内の上部尿路レ線検査は不適当である。
 検査前の処置としては,2日間は消化のよい食事をとらせるとともに,吸着剤(Gascon, Festal,Adsorbin,獣炭末など)を投与すること,前日夕方までに下剤(ヒマシ油など)を投与すること,当日朝は絶食とし,直前に高圧浣腸を施行することが望ましい。少なくとも撮影前一食の絶食と高圧浣腸は必要である。

尿路系の血管造影法—特に腎ならびに骨盤腔内臓器の動脈撮影法の手技について

著者: 北川龍一

ページ範囲:P.21 - P.30

はじめに
 尿路系疾患に対するレントゲン学的診断法の重要性は今更いうまでもない。なかんずく血管造影法は近年,手技の発達,造影剤の進歩,レントゲンテレビの出現などによつて急速に発展してきた。最近Lang8)はrenal mass lesionの診断においてIVP, RPの確診率が48%であるのに対し,動脈撮影は87%の診断適中率を示したと述べているごとく,単に血管性疾患の診断のみならず,実質性疾患,特に腫瘍の診断には欠くべからざる検査法となつてきている。
 本特集において著者に課せられた題目は「尿路系の血管造影法」ということであるが,今回は日常臨床上最も重要な腎,骨盤腔内臓器の動脈撮影法について,主としてその手技を中心に述べることにする。各疾患における血管像については他の著者によつて各々その分担課題中に出てくることと思われるので,本稿では省略するが,最後に読影上の注意点などに少しく触れるつもりである。

放射性同位元素利用による診断法

著者: 町田豊平

ページ範囲:P.31 - P.40

はじめに
 放射線診断のなかにRadioisotope (RIと略す)が導入され,臨床的に利用され始めたのはこの10数年のことであり,さらに一般臨床に広く普及したのはこの数年来である。腎,尿路のRI診断においても,それが教科書の一章に書き加えられたのはこの数年の間のことである。こうして従来の放射線診断—X線診断の領域にRI診断の分野が次第に拡大してきている。
 RI検査法がX線診断より特にすぐれている点は,tracerとしてのRIの生体内動態を体外から計量的に追求できることである。腎(実質)機能を利用して腎の形態的検査も得られる。さらに検査が簡単で被検者の苦痛の少ないことは,関連領域の診療科においても安全で,積極的に利用でき,尿路疾患診断の糸口をみつけることができる。現在腎および尿路のRI診断として臨床的に応用されているのは約10種類があるが,今回はRe-nogramおよびScintigram(scanおよびγ-camera)についてのべる。
 臨床的にRI腎検査用として用いられている物質は下の付表にまとめた。腎に特異性をもつ化合物に各種のRIを標識したものが多い。腎構造上の標識目標となるのは(1)尿細管細胞の分布と腎皮質(2)尿細管機能—細胞のRI摂取と排泄(3)腎血管床(4)糸球体ろ過(5)腎内病的組織,などである。下の表にあげたRI試薬はそれぞれ上にあげた検査目標に従つて採用される。

下部尿路のレ線検査法

著者: 辻一郎

ページ範囲:P.41 - P.51

はじめに
 下部尿路疾患の診断には内視鏡検査とレ線学的検査が併せ行なわれるが,内視鏡施行困難な際は専らレ線検査に頼る訳であり,また検者の主観の入り易い内視鏡所見よりもレ線検査の方がより客観的な正確なinformationを与えることも多くかつ永久的な記録となる利点がある。
 膀胱尿管逆流や各種排尿異常(排尿困難あるいは尿失禁)の診断は今日主としてレ線検査(殊に排尿時撮影)により,特にX線テレビやシネを利用して排尿の全過程を連続的に観察記録し更に同時に行なつた水力学的検査dataと共に分析すれば尿管逆流や排尿異常の機序解明にきわめて有効である。

Ⅱ.腹痛と尿路通過障害性疾患のレ線像

腹痛の鑑別診断

著者: 高山坦三

ページ範囲:P.53 - P.58

I
 腹痛を訴える患者には,まず,1)腹痛の存在する部位,2)腹痛の程度と性状,3)発痛誘因の有無,4)腹痛の広がり,5)圧痛の有無,6)関連痛(放散痛),7)随伴症状の有無,等について診察をすすめなければならない。

産婦人科領域の腹痛

著者: 石塚直隆

ページ範囲:P.59 - P.62

はじめに
 産婦人科領域における疼痛は主として下腹部または腰部に局限している。
 泌尿器と関連した婦人科疾患は腹痛を主徴として発現するよりも排尿障害の形で認知されるので,ここでは尿路系障害とは離れて腹痛の鑑別診断を述べることにする。

尿路通過障害による腹部痛

著者: 川井博

ページ範囲:P.63 - P.67

 疼痛は生体にとつて病巣の存在を示す警報症状であつて,患者は痛みを主訴に受診することが一番多いといえる。診察する医師にとつては疼痛自体が診断の大きなより所であり,治療中における疼痛の消長は治療効果指針となることも多く,一般に疼痛の発現・持続や再発は,原疾患の進行度や慢性化の様相と平行することがしばしばであつて,疼痛の観察は臨床上極めて重要な診断・治療の手掛りである。しかしながら腹痛をおこす疾患は,腹腔内・後腹膜腔臓器の各種疾患を考慮せねばならないわけで,腹痛の原疾患を正しく鑑別することは,仲々容易なことではなく,広い知識と豊富な経験を必要とすることは申すまでもないが,ここでは尿路通過障害に起因する腹痛について,その腹痛の性状と診断の方法などについて述べて見たい。
 一口に尿路通過障害といつても,その原因としては腎盂・尿管・膀胱から尿道の先端に至るまでの全尿路の機能的・機械的な障害が含まれるのみならず,尿路周辺部の病変による機械的圧迫などが原因となつていることもあり,その原因は極めて多様である。そこで上部尿路と下部尿路の通過障害に分けて,それぞれの重要な通過障害性疾患について述べて見たい。

尿路通過障害性疾患のX線像—尿路奇形,上部尿路結石症,腎下垂症

著者: 杉浦弌

ページ範囲:P.69 - P.83

Ⅰ.尿路奇形(Malformation of urinary tract)
 尿路通過障害性疾患のうち尿路奇形によつて腹部痛を来たす代表的なものは先天性水腎症である。その他の疾患としては嚢胞腎,馬蹄腎,交叉性腎変位,腎の腰部位置異常,骨盤腎,重複腎盂尿管,先天性巨大水腎,水尿管症および尿管瘤が挙げられる。
 先天性水腎症の自覚症状は疼痛および血尿で,ときに腎の腫瘤が触知される。この疼痛は本症の原因たる尿通過障害,すなわち先天性尿管狭窄,異常血管による尿管の圧迫,先天性の腎盂尿管接合部の異常などによるものであつて,その性質は腹部あるいは腰部の鈍痛,圧痛および重圧感として自覚される。ときに疝通発作をみることがある。この場合には大体において開通性の水腎症であり,しばしば尿潮に伴つてあらわれる。

尿路通過障害疾患のレ線像—腎・尿管結核,尿管腫瘍,尿管狭窄・腎外傷

著者: 友吉唯夫

ページ範囲:P.85 - P.103

Ⅰ.腎・尿管結核
 腎結核は肺や骨関節の結核に続発し,本質的には両側性である。しかしその経過として,イ)両側とも進展,ロ)両側とも自然治癒,ハ)一側は治癒し他側が進展の3つの場合があり,臨床上は片側性腎結核のほうが多い。最近のわが国の尿路結核の傾向として,1)好発年令層が若年から壮年に移行し,2)尿中結核菌検出率は低く,3)典型的な膀胱結核を示すものが少ない。
 腎・尿管結核のさいの疼痛は,多くは側腹部の鈍痛である。尿管狭窄のために尿停滞が急に起こると激しい痛みを伴うこともある。また混合感染のときにも腎被膜の伸展のため腰痛が著明となる。

Ⅲ.上部尿路炎症性疾患のレ線像

腎盂腎炎の診断

著者: 上田泰

ページ範囲:P.105 - P.109

はじめに
 腎盂腎炎の診断は必ずしも容易というわけにはいかない。いな,むしろ診断の困難な症例の方が多い疾患ということができよう。とくに慢性腎盂腎炎においてこのことがいえる。
 腎盂腎炎の診断に関連する幾つかの事項のうち大切と思われるものを内科の立場からつぎに記して参考に供する。

腎盂腎炎の再発,再燃とBACTERIAL L-FORM

著者: 樋口正士

ページ範囲:P.111 - P.116

Ⅰ.Bacterial L-formについて
 細菌は,細菌細胞壁という細胞の内部の高浸透圧に耐え,菌独自の形態を保つためにmucopeptideという物質を基礎構造とする半透過性膜を有する。ゆえに,細菌細胞壁を欠除または破壊するもの,すなわち,抗生物質(Penicillin,合成PC系抗生物質,合成Cephalosporin C系抗生物質,Cycloserin, Novobiocin, Bacitracin, Vancomycin,Ristocetin, Griseofulvinなど),酵素(lysozymeおよびその製剤),抗体,補体,bacteriophage,その他が細菌細胞壁を除去すれば,浸透圧の関係で膨化状を呈する。この状態をprotoplast(large body)といい,元の菌種に関係なくグラム陰性で,直径5〜30μに達する。培養を続けるにprotoplastの一端に0.1μ程度の原形質が集まり,そこから流れ出すようにはみだしてくる場合,また顆粒状のものが一列になつて出てくる場合の2通りがあるが,これらが集落を形成し,L-type colony (L-form)を示す。大きさは100μに達しない(付図)。

慢性腎盂腎炎

著者: 三橋慎一 ,   百瀬剛一

ページ範囲:P.117 - P.132

Ⅰ.はじめに
 慢性腎盂腎炎は,その定義ないし使い方にやや混乱が見られる。すなわち,腎盂病変はともかくとして腎実質,ことにその髄質における炎症細胞の出現などにより診断するとすれば,組織学的にこれを確認することを必要とする。しかも,尿路,ことに上部尿路に何らかの閉塞性機転が介在すれば,その合併症として,腎盂腎炎は必発であり,しかも臨床的にはこれらの症例にはたとえば"尿管結石"といつた診断名がつけられ,余程特殊な症状がない限り,"慢性腎盂腎炎"というような名はつけられない。したがつてここではすべてを広く含み,尿管閉塞性,非閉塞性の双方をとり上げ,さらには膀胱尿管逆流,留置カテーテルなどによるものも包括して述べることとした。

急性上部尿路感染症におけるレ線検査

著者: 小川秋実

ページ範囲:P.133 - P.141

Ⅰ.急性腎盂腎炎
 急性腎盂腎炎は突然に始まる高熱,腎部圧痛,膿尿により臨床的に診断することは困難ではない。しかし多くの場合,尿路の異常,特に尿路閉塞性疾患が急性腎盂腎炎の原因として存在するものであるから,原因の追求手段としてのレ線検査は重要であり,また急性腎盂腎炎と次項に述べる腎化膿性疾患とは臨床像が類似し,鑑別診断上もレ線検査を欠くことができない。
 急性症状を呈している時期では,最小限不可欠のレ線検査が症状経過に応じて順次行われるものである。

Ⅳ.腎腫瘍とそのレ線像

小児腹部腫瘤性疾患—とくに悪性腫瘍を中心に

著者: 岡部郁夫 ,   小林孝明 ,   森田建

ページ範囲:P.143 - P.152

はじめに
 小児外科の対象となる腹部腫瘤性疾患として,数多くの疾患(第1表)があげられるが,このうち悪性腫瘍の占める頻度が少なくなく,早期診断,早期治療の開始が望まれる。
 近年,小児外科の進歩に伴い,これら疾患に対し積極的な手術療法が行なわれ,とくに悪性腫瘍に関しては,従来の手術療法,放射線療法に加えて,制癌剤が術前,術後に積極的に併用されるようになつてきている。そこで診断面において,的確かつ迅速な診断が要求されるが,これら疾患の鑑別診断に,これまで種々の検査法(第1表)が用いられてきている。なかでもレントゲン検査の診断学的意義は重要である。

腎腫瘤性疾患の鑑別診断法

著者: 酒徳治三郎

ページ範囲:P.153 - P.159

はじめに
 1950年代までは,腎実質内に腫瘤性病巣spaceoccupying lesionがIVPなどで発見されると,まず悪性腫瘍を前提として以後の検査,治療が考慮されてきた。そして,これらの患者の大多数は,腎腫瘍を疑わせるのに十分な症状を呈するものであつて,偶然の機会に腎内腫瘤が発見されることは比較的稀であつた。ところが最近では,一般検査としてのIVPの価値がみとめられ,急速に普及してきたため,たまたま撮影したIVPで腎実質内にspace occupying lesionを見出し,この病巣の性状の鑑別を迫られる症例が増加してきた。特に高齢者に対する手術前検査や,高血圧や尿路感染などの検討のために行なわれたIVPにて,腎内腫瘤陰影が発見される機会が漸増し注目をひくようになつた。たとえばBohne1)は,前立腺肥大症患者500例のIVPで,その2.0%にこのような病的所見を認めたと記載している。

腎腫瘤とそのレ線像

著者: 百瀬俊郎 ,   石沢靖之

ページ範囲:P.160 - P.190

はじめに
 腎の腫瘤または腫大をきたす疾患の診断,治療法の決定にレ線所見が重要な役割を果たすことはいうまでもない。従来routineに用いられてきたレ線撮影法は腹部単純撮影法,排泄性尿路撮影法,逆行性尿路撮影法,後腹膜気体撮影法であるが,最近富みにその有用性を示してきたものに,点滴静注法による排泄性腎盂撮影法,腎血管撮影法がある。以下腎の腫瘤または腫大をきたす疾患について上記のレ線撮影像を供覧することにする。

Ⅴ.排尿障害とそのレ線像

婦人科的排尿障害とその診断—Neurogenic bladder stress

著者: 高田道夫 ,   中野明

ページ範囲:P.191 - P.197

はじめに
 女性泌尿器と性器との関係は男性におけるよりも発生学的,位置的,機能的により密接であるため婦人の尿路障害が性器の異常,あるいは産婦人科的処置に起因する頻度はきわめて高く,感染,位置異常,損傷,侵襲そのいずれをとりあげてみても産婦人科領域において重要な位置をしめている。
 これらの障害のなかには単に産婦人科合併症としてとり扱いうるものから,泌尿器科との境界領域的なもの,さらに進んで独立した泌尿器疾患を形成するものもある。

排尿異常の種々相とその鑑別診断

著者: 東福寺英之

ページ範囲:P.199 - P.206

Ⅰ.排尿異常の種類
 排尿異常は泌尿器科領域において極めて重要且つ広範に亘る症状であることは言うまでもない。
 排尿の機構については今日まだ完全に解明されているとは限らない。しかし一般に理解されていることは膀胱に尿が貯留し膀胱がある程度緊満した場合に尿意を感じる。これは知覚神経線維を介して脊髄にある排尿中枢に伝えられる。幼児以下では脳幹にあると言われる抑制中枢と排尿中枢との関連が不十分の時期では,仙髄の排尿中枢から副交感神経を介して膀胱利尿筋の収縮に伴う膀胱内圧の上昇により内尿道口が開き,ついで外括約筋も開いて尿は尿道を経て流出を認める。膀胱利尿筋の収縮は膀胱内容が完全に放出されるまで続き,利尿筋の弛緩,外括約筋は閉鎖することにより排尿は止まる。しかし排尿の時に場所が不適当の場合には脳幹にある抑制中枢の支配により排尿は抑制されると言われている。

膀胱性排尿障害とレ線像

著者: 宍戸仙太郎 ,   杉田篤生

ページ範囲:P.207 - P.227

はじめに
 膀胱に器質的あるいは機能的異常を起こしているときには,排尿障害を訴えることが多い。このような場合には,ときに膀胱の収縮が障害されて残尿を生ずるために感染を起こしやすい。さらに機能的あるいは器質的に尿管口の開大を招来して膀胱尿管逆流を起こすようになり,上部尿路に影響を与えて水腎,水尿管を惹起し,膀胱炎症は逆行性に上部尿路に波及する。また膀胱の疾患によつて排尿障害を起こしたときに,これが慢性に経過すると腎への影響は両側性のため,いつのまにか慢性腎不全へと移行していることがあるので,とくに注意する必要がある。
 本稿では,膀胱性排尿障害を起こす疾患のうち,神経因性膀胱,膀胱憩室,膀胱結石症,尿管瘤ならびに膀胱腫瘍について,レ線像を中心に述べてみたい。

前立腺・尿道疾患とそのレ線像

著者: 江藤耕作

ページ範囲:P.229 - P.248

はじめに
 前立腺疾患および尿道疾患の診断法におけるレ線学的診断法は,前立腺疾患における膀胱鏡および直腸内触診法,尿道疾患におけるカテーテル挿入法,尿道鏡などと共にきわめて大切な診断法の一つである。
 前立腺疾患および尿道疾患におけるレ線撮影法には種々の撮影方法があるが,日常,臨床診断に用いられているものは,単純撮影と比較的撮影技術の簡単な,しかも尿道,前立腺,膀胱の形態的変化の全貌を描写することができる,尿道膀胱撮影法が一般に広く用いられている。

Ⅵ.腎動脈性・副腎性高血圧症とレ線像

本態性高血圧症と腎血管性高血圧との鑑別

著者: 黒崎正夫 ,   武内重五郎

ページ範囲:P.249 - P.255

はじめに
 腎血管性高血圧は,適当な外科的処置により治癒しうること,多くは内科的治療に抵抗し血管合併症の進行がすみやかであること,の2点においてその早期診断・早期治療が重要視されている。腎血管性高血圧の診断はまず解剖学的に腎動脈狭窄の存在を確認し,さらにその腎動脈狭窄が機能的に高血圧の原因であることを証明することによらなければならない。一方本態性高血圧症は特定の原因の証明されない高血圧であり,その診断は二次性高血圧の除外という消極的方法によつて行なわれている。
 本稿では腎血管性高血圧の診断について概説し,つぎに自験症例について解説を加えることとする。

腎動脈性高血圧症の病態生理

著者: 池上奎一 ,   野村芳雄

ページ範囲:P.257 - P.263

はじめに
 1934年Goldblatt et al.は動物の腎動脈を圧縮して持続性高血圧を作製するのに成功,高血圧症研究に飛躍的進展の契機をもたらした。腎動脈狭窄によるこの実験的高血圧症は,Goldblatt's hyper-tensionと呼称され,動物に高血圧を発症させるもつとも確実な方法の1つとして,今日でも高血圧の実験にしばしば利用されている。1937年vonFirksは腎動脈瘤による,1938年Leiterは腎動脈硬化斑による,Boyd and Lewisは腎動脈血栓による高血圧症例を報告,その後種々の腎動脈病変に起因する高血圧症例の報告が相つぎ,動物のGold-blatt's hypertensionと同様の機序による高血圧症が人にもみられることが明らかとなつた。このような腎動脈病変に起因する人の高血圧症は,腎動脈性あるいは腎血管性高血圧症renovascular hy-pertensionと呼ばれ,血管撮影技術の進歩とともに次第に症例数を増し,独立した二次性高血圧症の1つとして認められるに至つた。

副腎性高血圧症のレ線診断

著者: 中村章 ,   坂田安之輔

ページ範囲:P.265 - P.287

はじめに
 副腎皮質および髄質の機能亢進に由来する高血圧症は,その大多数が手術によつて治癒し得る高血圧症(外科的高血圧症)であり,病態の認識が深まるとともに,従来,単に本態性高血圧症や原因不明の高血圧症として扱われてきたもののうちから発見され,手術される頻度が,近年著るしく増加している。その病態生理や内科的診断法についてはすでに詳細に述べ尽されているので,ここでは概略を記載するにとどめ,手術を行なう立場から,副腎病変の局在性の診断法,病変パターンの描出法などを,症例のレ線フィルムを紹介しながら述べてみたい。病変の局在性を決める場合,大きな腫瘍(褐色細胞腫や副腎皮質癌腫)では,腹部の触診によつて触知される場合もあろうし,褐色細胞腫の場合に腫瘍の圧迫によつて血圧の上昇を誘発するMassage testも,一応は行なわれる。また,下大静脈のカテーテリゼーションによつて種々の高さの静脈血を採取し,そのカテコールアミン含量を比較すれば,副腎外褐色細胞腫の部位診断には非常に有効である。同様に,原発性アルドステロン症やクッシング症候群の場合には,左右の腎静脈血中のホルモン含有量を比較することが有意義であろうが,測定法上の問題で現在のところ,実用に供されていない。

腎動脈内因性病変による高血圧症のレ線像

著者: 桜井勗 ,   高羽津 ,   園田孝夫

ページ範囲:P.289 - P.310

Ⅰ.腎動脈狭窄と閉塞
 高血圧症の原因となる腎動脈病変を正確に把握するには腎血管撮影を欠かすことはできない。しかし患者の負担その他種々の理由から,原因不明の高血圧症例すべてに腎血管撮影を施行することは実際には不可能であるので,この検査の必要な症例をいかに確実に選び出すかが診断を成功させる第一歩となる。著者は拡張期血圧の高い症例すべてにまずrapid or minute sequence IVPを行ない,陽性所見の得られない場合は続いてRIレノグラムを記録して腎性高血圧症例の検出率の向上につとめているが,腎性高血圧を示唆するIVPおよびレノグラムの病的所見をまず述べ,ついで腎血管レ線像の読影を記載する。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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