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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科25巻6号

1971年06月発行

雑誌目次

図譜・347

先天性尿道直腸瘻の2例

著者: 永野俊介 ,   高羽津 ,   生駒文彦 ,   岡本英三

ページ範囲:P.432 - P.433

 【症例1】H.T.,20歳,男子。
 生後2日目,鎖肛に対し肛門形成術をうけたが,その後排尿の大部分は肛門より排出される。失禁は認められない。排泄性腎盂撮影像(第1図)および大動脈撮影像(第2図)において,一側性交叉性融合性腎偏位症の合併が認められ,尿道膀胱撮影像(第3図)では,尿道に注入した造影剤の直腸への溢流が認められた。昭和44年10月6日,結腸痩設置後,昭和44年10月22日,Intrarectal Pull-through Methodを用いて痩孔を閉鎖し根治せしめ得た。

図譜・348

経直腸式前立腺撮影法—正常前立腺と前立腺炎

著者: 杉浦弌 ,   長谷川進

ページ範囲:P.434 - P.435

 筆者らは,今までほとんどなぞとされていた生体内における前立腺肥大症の,腺腫そのものの大きさ,形,あるいは前立腺内外の様子を経直腸式前立腺穿刺撮影法(杉浦・長谷川式前立腺撮影法,S・H法)によりX線学的に描出させることに成功し,すでに第1報1〜4)として報告,日本泌尿器科学会,およびアメリカレントゲン学会において認められた。その後も引き続き本法の臨床的意義について鋭意研究中であるが,今回は第2報として,正常の前立腺と前立腺炎のX線像を供覧する。
 正常の前立腺像は本法によると,解剖学的に本来の前立腺(前立腺外腺)を思わせる腺房様構造を写し出し、前立腺肥大症のX線像にみられる前立腺被膜,あるいは外科的被膜は描出されない(第1図参照)。

図譜 膀胱鏡アトラス・6

急性膀胱炎

ページ範囲:P.438 - P.439

綜説

尿道憩室と尿道結石

著者: 石川昌義

ページ範囲:P.441 - P.450

A.尿道憩室
 尿道憩室は従来比較的稀な疾患の一つであつたが,近来本疾患に対する理解と意識の向上と,診断技術の進歩と相まつて,内外共に報告症例が増加しつつある。
 Wharton and Telindeは1894年から1954年に至る間にJohns Hopkins Hospitalにおいて診断された66例の女性症例を報告し,その中で"When-ever the condition is called to the attention ofthe profession by an article in the literature, mcrecases are diagnosed."と言つており,その後Devisand Telindeは1955年から1956年に至るわずか1年間で50例の症例を診断している。本邦でも伊藤の集計によると女性症例は1933年から1949年までの報告はわずかに8例であつたが1951年から1958年の間に24例の報告があり,その後男女症例とも増加しつつある。著者は以上のような状況とWhartonらの言の持つ意味においていささか本症について記述し,あわせて互いに深い因果関係にあり臨床症状も類似する尿道結石にも言及する次第である。

Urological Letter・119

I.睾丸外傷/II.腎瘻後の出血

ページ範囲:P.450 - P.450

 Arch.of Int.Med.,99: 222, 1957に流行性耳下腺炎性睾丸炎の治療にAdrenocorticotropic hor-moneとcortisoneを用いて成功したという報告がのつた。
 筆者は過去3〜4年間に外傷を受けたという病歴もある境界の明瞭な睾丸挫傷の何例かにこれを応用した。これらの症例ではACTHの静注後6〜12時間で症状が著明に緩解した。この療法は治療の開始が早いほど成功率は高い。しかし,他の原因による二次的な副睾丸炎あるいは副睾丸炎性睾丸炎には効果はない。したがつてこれらの鑑別診断が大切である。

手術手技

尿管口の異常症の臨床と手術—尿管口機能不全,尿管口の狭窄の治療

著者: 加藤篤二 ,   原田卓

ページ範囲:P.453 - P.460

緒言
 われわれが日常臨床上しばしば経験する尿管口の機能不全もしくは狭窄をきたす尿管口の異常症について,その診断ならびに治療,とくにその手術手技を中心にのべたい。

原著

結石性水腎にかくれた左腎腫瘍の1例

著者: 杉浦弌

ページ範囲:P.461 - P.466

緒言
 腎実質の悪性腫瘍においては,adenocarcinoma(Grawitz's tumor)が過半数を占め,国内および国外を問わず多数の報告例をみる。しかし,腎実質癌に結石の併発する頻度はきわめて少ないものである。一方,腎盂腫瘍ことに腎盂癌では約20%前後に結石を併有するといわれ,合併頻度は腎実質癌のそれに比べ箸しく高い。
 わたくしは,腎・尿管結石性水腎症の診断を下し,腎切石術を行なつたところ,腎癌の存在を認め,腎・尿管剔出術に変更,術後5年7ヵ月を経過した現在きわめて健康である症例について報告するとともに,術前になぜ確診を下し得なかつたかを反省し,わが国における本症の文献的考察を行なつた。

先天性尿管弁形成の1例

著者: 美川郁夫 ,   大川光央

ページ範囲:P.467 - P.471

緒言
 先天性尿管弁形成は比較的まれな疾患である。著者らはその1例を経験したので,本症についての文献的考察を加えて報告する。

先天性膀胱外反症症例

著者: 志田圭三 ,   島崎淳 ,   柴山勝太郎 ,   黛卓爾

ページ範囲:P.473 - P.477

緒言
 膀胱外反症は泌尿器科領域の発生異常のうちで最も高度のもので,治療においても多くの困難を伴っている。近年本邦においてもこの疾患に対し積極的に形成手術または尿路変更手術が試みられるようになり,その手術成績も向上しつつある。最近われわれは本症の1例を経験し,手術する機会を得たので,その経過を報告するとともに,本症に関する文献的な考察を簡単に行なつてみたい。

骨形成性膀胱肉腫の1例

著者: 片山喬 ,   北村温 ,   伊藤弘世

ページ範囲:P.479 - P.483

緒言
 膀胱の悪性腫瘍は主として癌腫であり,肉腫は稀とされるが,特に骨形成性肉腫の帳告は極めて少なく,本邦では近藤1)および中島ら2)の報告をみるのみである。われわれは最近本症の1例を経験したので文献的考察を加え報告する。

射精管結石の1例

著者: 水本龍助 ,   鈴木良徳 ,   天谷知佑

ページ範囲:P.485 - P.488

緒言
 精液路の結石は古くから知られているが,比較的稀れなものとされている。最近われわれは,射精管結石の1例を経験したので報告する。

陰茎持続勃起症の1例

著者: 田口裕功 ,   石塚栄一 ,   熊谷治己

ページ範囲:P.489 - P.491

緒言
 陰茎持続勃起症は最近必ずしも稀な疾患とはいえない。しかし本症の発症病理はいぜんとして不明な部分が多くしばしば原因をつきとめることができずに,特発性陰茎持続勃起症という呼び名をつけられている。
 このため治療も姑息的なものとならざるをえない。ことにその大部分の人は陰萎を残して治癒する。これは患者の多くが20〜30歳台であることからもきわめて重大な問題である1,2)
 われわれの経験した1例は,治癒後5年になるが陰萎も残らず,再発もなく,性生活も正常である。

見聞記

膀胱ガン研究に思う

著者: 吉田修

ページ範囲:P.493 - P.496

ほじめに
 コッホが細菌学を専攻するようになつた動機は何であつたのだろう?多くの疾病の病因は未知であつたが,細菌学により一つ一つ明らかにすることができるというはつきりした目的をはじめからもつていただろうか。いかに偉大な業績を残した人でも,その動機というものはたわいのないものが多いのではないだろうか。
 前回私は,「膀胱ガンに関する疫学的研究と,臨床成績の分析をとおして膀胱ガンの治療には現在の臨床医学ではどうにもならないものが厳然として存在することを改めて認識し,更に膀胱ガンのetiologyに関する基礎的研究の重要性を臨床医学と直結した問題として再認識した。」と書いた。そこに,嘘はない。ありのままのことである。しかし,研究をはじめた動機というものは実にたわいのない,まつたく述べる価値のないものである。

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外国文献

ページ範囲:P.497 - P.499

THE JOURNAL OF UROLOGY Vol.105, No.1, January 1971
Considerations in Choice of Surgical Approach to Adrenal Glands. A.J. Johnson and P.L. Damstra. 1
Spontaneous Disappearance of Iatrogenic Renal Arteriovenous Fistula. A.Herschman, M.J.Klein and A.G.Blumberg. 4

内国文献

ページ範囲:P.501 - P.503


 NPN(BUN),血液・尿化学検査—その数値をどう読むか,浦壁重治・他;日本臨床, 臨増;40,1971.
 クレアチン,クレアチニン,血液・尿化学検査—その数値をどう読むか,古用哲雄・他:日本臨床, 臨増:65,1971.

文献抄録

前立腺癌の遠隔照射療法

ページ範囲:P.503 - P.503

 前立腺癌の放射線治療は抗男性ホルモン療法のかげにかくれてかえりみられなかつたが,R.I.の出現でFlocksらが198Auを用いて治療効果をあげてから.再びBagrhaw, Geo-rge,その他の人々により体外照射の効果が検討され,最近では高圧X線装置の改良で一般にも注目されるようになつてきた。著者らは過去5年間に200例の前立腺癌を放射腺その他で治療したが,この症例中から次の条件,すなわち生検により前立腺癌と確認され,X線検査で骨その他に転移が認められないもの,フォスファターゼ値の酸・アルカリ共に正常域にあり,また5000Rads以上の照射にたえ,かつ抗男性ホルモン治療をうけていないとの条件に適合した41例を選んで臨床効果について検討を加えた。放射線としては大部分の35例が60Coの3門照射で,週5日間で6ないし8週に腫瘍線量として5300から7200Radsを照射した。
 41症例の内容は1度2例,2度4例,3度35例である。結果についてみると,まず直腸診で前立腺癌を正確に診断し得る37例中27例が触診上腫瘍の縮少を認め,早期の縮少例は少数で多くは治療開始後数ヵ月を要した。治療後レ線上転移が証明されかつPhosphatase値の上昇をみたものは8例で,治療後5ヵ月から8ヵ月の間にみられた。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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