icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科25巻8号

1971年08月発行

見聞記

第10回国際ガン学会総会(Houston−1970)(Ⅱ)

著者: 吉田修1

所属機関: 1京都大学医学部泌尿器科

ページ範囲:P.677 - P.679

文献概要

はじめに
 恩師稲田務先生は1964年と1966年の2回の欧米出張の記録をまとめて「世界神経旅行」(光村推古書院)という本を上梓された。先生は壺青と号し,俳人としても高名であるが,その独特な文章はすみずみまで神経のゆきとどいた,実に簡明にしてかつ優雅なものである。最近この本を読みかえしてみたがヨーロッパやアメリカの街を小柄な御身体に肩かけバッグとカメラをぶらさげて,ニコニコしながら少し肩を振つて歩いておられる御姿が彷彿として実に楽しかつた。そしてまた,その几帳面なことにもまつたく頭が下つてしまつた。「何月何日何時何分にどこそこを出発して,何時何分に目的地どこそこに着く。天気は晴で凉しい。」といつた詳細にして正確な記録。「ここで2本目のボールペンのインクが切れて,3本目を使用する。」と書いておられる。詳しく色々な事柄を記録されながら旅行されたものと思う。せつかくの御薫陶をうけながら,愚鈍な弟子であつた私はいまだにまともな文章も書けない。もつとも稲田先生のような名文は誰れにでも書けるというものではなく,私ははじめからそんなだいそれた野心はもつていないが……。また,なんでも詳細に記録しておくという習慣も身につけずじまいである。恩師のせつかくの御薫陶を無にしてしまつた天罰がいまここにあたり,この見聞記を書くにあたつて四苦八苦している始末である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら