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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科26巻11号

1972年11月発行

雑誌目次

図譜・381

先天性腹筋欠損症の腎・膀胱レ線像

著者: 田代彰 ,   三樹明教 ,   河辺義忠 ,   浜野正美 ,   村山純一郎

ページ範囲:P.928 - P.929

 患者 5歳,男子。
 現病歴および現症 10ヵ月の正常分娩。生下時は体重3,200g,胸部は胸骨下部が隆起して,いわゆる鳩胸を呈し,腹部は腹筋が完全に欠如して腹部臓器が梅干様皺模様の腹壁を透して観察できた。現在は皮下脂肪のため透視は不可能であるが,臓器の触知は容易である。しかし,右腎は探し得ず。両側の停留睾丸を認める。これまでしばしば気管支炎,腎盂炎を繰返し現在に至る。

図譜・382

原発性アルドステロン症

著者: 松木暁 ,   福重満 ,   仁平寛巳 ,   日高徹 ,   上田和明

ページ範囲:P.930 - P.931

 患者 40歳,男子,佐官業。
 主訴 頭重感,めまい。

カラーグラフ 腫瘍シリーズ・11

膀胱腫瘍(1)

ページ範囲:P.934 - P.935

1.乳頭状癌(Transitional cell carcinoma)
 【症例1】 66歳,家婦。
 現病歴 昭和38年9月始めより頻尿,排尿痛があり,某医に膀胱炎として治療を受けたが治癒せず,当科に紹介された。

手術手技

膀胱摘出時の尿路変更術

著者: 佐藤昭太郎

ページ範囲:P.937 - P.944

はじめに
 膀胱腫瘍のため膀胱全摘が行なわれると,ここになんらかの方法で尿の体外への排出を図る処置がとられなければならない。膀胱のもつ本来の機能,尿の貯留と排出の2つを完全に満足する代用膀胱は得がたく,多くの場合,尿瘻という形の尿路変更が行なわれる。選ばれる尿路変更法の形によつては,患者にいろいろな不便を負わせ,あるいは合併症を起こしやすい状態に置くことになる。これらの不都合も時には止むをえないこととしても,患者の生活を快適にするため,各方法の得失をよく知つて,最も適した方法を選択する必要がある。
 ここではまず尿路変更のいろいろな方法の特徴と得失を述べてから,選択のさいの基準を明らかにし,その後に代表的な手術の手技を記していく。

文献抄録

重複尿管の逆流防止法

ページ範囲:P.944 - P.944

 不完全重複尿管の場合には尿逆流の形式は次の3つが考えられる。①重複尿管の一方の尿の一部が他側尿管へ逆流する,②膀胱から不完全重複の両尿管へ逆流する,③膀胱および両側尿管の尿が相互に自由に左右の尿管・腎盂へ逆流する。一般に不完全重複尿管,重複腎盂の場合に尿路感染があれば発育不全を伴つている上腎を切除することが多い。あるいは不完全重複尿管で膀胱尿管の逆流があれば尿管膀胱再吻合術が普通施行される。最近では不完全重複尿管にみられる尿管・尿管逆流に対してTresiderらは腎盂尿管移行部において尿管の側々吻合術を試みている。著者らは不完全重複尿管の合流部が膀胱近接部にみられる症例について前述3型の逆流のいずれかが認められる症例に新吻合法を行なつている。吻合術式は合流尿管部において尿管を切断し,両尿管を粘膜下を通して膀胱三角部へ再吻合する。すなわち重複尿管は完全重複尿管の形で吻合されるようにする。

原著

偏側副腎欠損と推測される2症例—偏側腎欠損,クッシング症候群をともなう1例および嚢胞腎をともなう1例

著者: 中田瑛浩 ,   片山喬 ,   百瀬剛一

ページ範囲:P.947 - P.952

緒言
 副腎欠損は先天性疾患のうちでもきわめて稀で,その報告は欧米でも少い。その診断は容易でなく,臨床的にも多くの問題を有している。われわれは臨床的には偏側副腎欠損と推測される2症例を経験したので,それらの臨床経過を報告するとともに若干の考察を加えてみたい。

発熱を主訴とした成人Wilms腫瘍の1例

著者: 伊達智徳 ,   今村厳 ,   藤村誠

ページ範囲:P.953 - P.958

緒言
 腎悪性腫瘍の病理学的分類,組織発生に関する見解は,いまだ定説をみていないようであり,個々の症例の組織診断に際しては,なお困難を感ずることが多い。私達は最近,成人Wilms腫瘍と最終診断された55歳男子症例を経験したので報告するとともに,本症例の初発症状が,38℃をこえる弛張熱であつたので,腎悪性腫瘍と非感染性発熱の関係についても,若干の文献的考察を加えた。

黄体ホルモンが有効であつた腎腫瘍皮下転移の1例

著者: 碓井亜 ,   平山多秋

ページ範囲:P.959 - P.962

緒言
 Grawitzが1883年,腎腫瘍について報告して以来12)およそ90年となるが,腎腫瘍は10万人に3.5人の割合で発生し,すべての悪性腫瘍の1〜2%を占めるといわれている10)。また生存率に関しても多くの報告10,12,13)があり,転移の存在する症例の予後は極めて悪く,95%が2年以内に死亡する11)といわれている。今回約30ヵ月前に左腎腫瘍の診断のもとに左腎摘除術を受け,約2年後に創部皮下の局所性再発に気づき,手術的摘除が不能であつた症例をホルモン療法ならびに放射線療法の併用により,皮下腫瘍の縮小後,手術的に摘除した症例を経験したのでこれを報告する。

巨大水腎症の2例

著者: 沼沢和夫 ,   近藤隆雄 ,   金子直之

ページ範囲:P.963 - P.967

緒言
 水腎症は腎実質の減少を伴つた腎盂および腎杯の拡張した状態であり,臨床上しばしば経験する疾患であるが,内容が1l以上のいわゆる巨大水腎症は比較的まれなものである。われわれは最近本症の2例を経験したので,その症例を報告する。

尿閉を主訴とした脊髄腫瘍の3例

著者: 長田尚夫 ,   井上武夫 ,   平野昭彦 ,   田中一成

ページ範囲:P.971 - P.976

緒言
 脊髄腫瘍は整形外科ないしは神経外科の疾患であるという印象がもたれている。しかし,初発症状ならびに経過は症例によつてかなり異つており,早期に診断をつけることは割合困難のようである。その症状は多岐にわたつているが,神経症状が主であるため,泌尿器科医が接する機会はほとんどない。
 最近,われわれは尿閉という排尿異常が,脊髄腫瘍の診断を決定する手がかりとなつた3例を経験した。その概要を報告すると共に,泌尿器科医が日常しばしば遭遇する尿閉という臨床症状のなかに,見落されてしまう危険性のある疾患群があることを再認識すべきであることを強調したい。

女子尿道良性間葉性腫瘍の2例

著者: 斯波光生 ,   山田智二 ,   大橋伸生 ,   上谷恭一郎

ページ範囲:P.977 - P.980

緒言
 女子尿道に原発する良性間葉性腫瘍は,なおまれな疾患であり,ことに内尿道口部に発生したものは本邦文献上,僅かに3例にすぎない。最近われわれは外尿道口部および内尿道に発生した女子尿道平滑筋腫の2例を経験したので症例を追加する。

単睾丸の2例

著者: 武田尚 ,   古畑哲彦

ページ範囲:P.981 - P.986

はじめに
 単睾丸とは,先天的に一側の睾丸が完全に欠如したもので,両側性の場合を無睾丸症と称し,区別されている。本症は比較的まれな疾患とされているが,実際には報告をはるかに上まわるものと推定される。本症には,停留睾丸として試験開腹を行ない,睾丸を発見できずにそのまま創を閉じ報告されないもの,あるいはなんら自覚症状もなく過すものなどがあると考えられる。われわれは偏側陰嚢内容欠如を主訴として来院した25歳と10歳の男子に単睾丸を経験したので報告すると共に,若干の文献的考察を行なつてみたい。

睾丸原発の細網肉腫について—臨床病理学的検討

著者: 天野滋 ,   若狭治毅

ページ範囲:P.989 - P.994

はじめに
 睾丸の悪性腫瘍のうち,原発性の細網肉腫はまれなものとされており,Wescottの集計では,欧米の雑誌に発表されたもの約50例で1),わが国においても現在まで約20例が報告されているにすぎない2)。われわれは,当病理学教室で睾丸発生の腫瘍のうちで細網肉腫と診断された症例をえらんで,これらに対する臨床病理学的検討を加え,さらに通常のリンパ節原発の細網肉腫で死亡した剖検例のうち睾丸に浸潤を示した症例と比較してみた。それらについて興味ある結果を得たので報告したい。

精索捻転症の4例

著者: 田中啓幹

ページ範囲:P.995 - P.999

はじめに
 精索捻転症は睾丸回転症,睾丸茎捻転症,精系・精索捻転症などと雑多な名称で呼ばれ,また,睾丸梗塞もこの不全型とされている。現在まで300有余の本邦報告に接しているが,今回昭和46年4月より47年3月の1年間に4例の精索捻転症を経験したので報告する。

Urological Letter・140

尿道鏡として鼻鏡の利用とファイバー光源の応用

ページ範囲:P.994 - P.994

 尿道内の電気凝固やRieser氏手術をするとき,1〜1/2インチの鼻鏡を使うと尿道の床がすばらしくよくみえることがわかつた。この鼻鏡の把手を上にしてナースに保持させれば術者は2つの手が自由に使えて操作に便利である。
 なお尿道内の操作を助けるために付図のようにfiber optic cordを電極の把手にゴムバンドでとりつければよい。こうすれば直接ファイバースコープ用の光源が電極の先方を照らすので,小さな腺の開口部を楽にみることができる。なおRieserの手術についてはJAMA,204:5,p.378,1968を参照されたい。

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外国文献

ページ範囲:P.1001 - P.1004

THE JOURNAL OF UROLOGY Vol.107, No.6, June 1972
Obituary:J.A.Campbell Colston.H.J.Jewett 891
Current Concepts in Diagnosis of Acute Renal Failure.J.R.Orecklin and S.A.Brosman 892

内国文献

ページ範囲:P.1005 - P.1007


 腎前性急性腎不全の1例,平沢博之・他:臨外,27;(9),1317,1972.
 人工透析と臨床検査,杉野信博:臨床検査,16;(10),1079,1972.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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