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特集(増刊号の)5 尿路・性器疾患の化学療法(感染症と腫瘍) Ⅰ.尿路感染症の化学療法 最近の腎結核の化学療法
最近の臨床面よりみた腎結核の傾向と問題点
著者: 柿崎勉1
所属機関: 1信州大学医学部泌尿器科
ページ範囲:P.119 - P.126
文献購入ページに移動結核化学療法の出現以来20余年を経過した。この間結核症の疫学的様相や臨床諸像に化学療法出現以前には見られなかつた様々の変化が起こり,早い速度で進展して来た。これらの変化は直接・間接に結核化学療法に密に関連しているものと考えられる。変化は現在も尚継続しており,それらがいつ恒常性のものに落付くか予測しがたい状態である。結核症は極めて長く且緩慢な経過をとるのが一般であるから,今後のなりゆきを予想することは時期尚早のこともあろうが,化学療法20年を経た今日,変化のあるものは限界に達し,恒常性のものにならうとしているようにも思われる。以上のような事情は結核症の部分現象である尿路結核においても全く同じであつて,化学療法によつてまき起こされた波乱の総決算をすべき時期は近いように考えられる。
この20年間に尿路結核に起こつた変化で,ことに最近注目されている主なものは,前記の疫学的様相の変化と臨床諸像の変化のほか,尿路結核に特有ともいうべき,化学療法に基づく二次的病変群の発生とその対策の問題である。以下これらの点について簡単な展望を試みたい。
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