文献詳細
原著
腎盂および尿管癌の血管造影
著者: 石田晤玲1 勝部吉雄2 水垣洋2
所属機関: 1鳥取大学医学部泌尿器科学教室 2鳥取大学医学部放射線医学教室
ページ範囲:P.143 - P.147
文献概要
腎癌の動脈造影では典型的な腫瘍血管が造影されることが多いので,その診断価値は高く評価されている。しかし,腎盂および尿管の悪性腫瘍の動脈造影についての報告はきわめてすくない。このことは,これらの部に発生する悪性腫瘍そのものがすくないという理由のほかにBergmanら2)のいうように逆行性腎盂造影上,閉塞部より末梢で尿管が限局性に拡張することが多く,他の疾患とくに結石による閉塞と鑑別しやすいことにもよる。しかし,この所見が得られないこともあるので,動脈造影法を併用する必要がある10)。
腎盂および尿管の癌の動脈造影では腫瘍血管が造影されないか,造影されてもきわめて軽度である。しかし,栄養動脈の怒張や膵癌でみられるようなかなり典型的な腫瘍による血管の狭窄像がみられることがあるので,動脈造影は診断上参考になると思われる。一方,最近ではアドレナリン注入による腎静脈造影法などによりすぐれた腎静脈像が得られ,その診断価値が認められている。さらに,腎静脈造影法に下大静脈造影法を併用すると,腫瘍の進展範囲,予後の推定などに有利である。われわれも泌尿器科疾患に静脈造影を応用し,動脈造影より診断価値の高い症例を経験しているが7),腎盂および尿管の癌の診断では,動脈の圧迫による静脈の陰影欠損像が得られ,癌によるそれと誤られやすいので注意を要する。
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