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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科26巻3号

1972年03月発行

雑誌目次

図譜・365

巨大前立腺腫瘍の2例

著者: 三品輝男 ,   岡村九郎

ページ範囲:P.172 - P.173

 【症例1】K.S.,79歳,男子。
 約5年前より排尿困難を訴えるようになり,時々尿閉をきたし,その都度近医に導尿を受けていた。2年前よりは尿閉のため導尿を毎日行なつていたが,昭和46年5月18日手術を希望して来院,同日入院した。直腸診にて前立腺は超鵞卵大で,そのbasisはふれない。IVP (第1図)にて上部尿路には異常を認めないが,その際の膀胱撮影にて一見膀胱腫瘍のごとき巨大な陰影欠損を認めた。尿道撮影(第2図)では後部尿道の著明な延長と圧迫による扁平化がみられた。前立腺肥大症第Ⅱ度と診断して,6月2日combined methodにてSubcapsular prostatectomyを行なつた。術後経過は順調である。第3図は摘出前立腺で大きさ8.5×9.5×6.5cm,重量253gで,組織学的にはbenign prostatic hyperplasiaであつた。

図譜・366

女子尿道下裂の1例

著者: 井川欣市 ,   門野雅夫

ページ範囲:P.174 - P.175

 患者 K.S.,27歳,女子,家婦。
 主訴 頻尿,排尿痛。

カラーグラフ 腫瘍シリーズ・3

腎実質悪性腫瘍(1)

ページ範囲:P.178 - P.179

1.腎腺癌(Adenocarcinoma)
 【症例1】53歳,主婦。
 主訴 腹痛
 現病歴 昭和45年8月6日,臍部および左背部に持続的激痛あり,悪心,嘔吐をともなう。当院外科受診十二指腸憩室と診断された。このとき血尿を指摘され,IVPを行なわれ,左腎孟像に異常あり,当科に転科した。

綜説

睾丸におけるホルモン生成とその機能

著者: 岩動孝一郎 ,   玉置文一

ページ範囲:P.181 - P.192

緒言
 睾丸ホルモンすなわちアンドロジェンに関する研究はここ数年来飛躍的な発展をとげつつある。その要因としてラジオアイソトープで標識されたステロイドなどを利用することによつて,テストステロンその他各種ステロイドの微量測定が可能となり,in vivoにおけるアンドロジェンの動態がかなり解明されたことがあげられる。またin vitroにおいても,標識ラジオアイソトープを追跡することによりアンドロジェン生合成の経路とか関連する酵素系の研究が進み,とくに超遠沈法をふくむ細胞成分分画法の応用により酵素活性と細胞内の構造との関係づけが可能になり,アンドロジェンの研究が臓器レベルから細胞レベル,さらには細胞内の微細構造レベル,そして分子レベルにまで掘り下げられてきている。
 さらに最近ホルモンの作用機序の研究が分子生物学的な展開をとげつつあり,アンドロジェンあるいはエストロジェンの細胞内での作用が一連の核酸と蛋白質の生合成を介して発現していることがわかつてきた。

手術手技

膀胱瘻の閉鎖手術

著者: 緒方二郎

ページ範囲:P.195 - P.201

 膀胱瘻は,膀胱および隣接臓器の手術や疾患に起因することが多く,その主なものに膀胱皮膚瘻,膀胱腟瘻,膀胱腸瘻などがある。これらの治療法として,保存療法がまれに効果をあげることもあるが,ほとんどは手術療法が必要である。これまで多数の手術経験があるわけではないが,多くは瘻孔閉鎖術に成功しているので,私自身が慣用している術式について記載してみよう。

文献抄録

腎腫瘤鑑別への超音波の応用

ページ範囲:P.201 - P.201

 腎腫瘤の鑑別診断のためには現在腎盂撮影,断層撮影,動脈撮影をはじめ腫瘤の穿刺診断などが応用され相当確実な診断が得られるようになつているが,著者らは超音波を用いて腎腫瘤の鑑別を150例について施行し,その結果を報告している。
 腎における超音波のパターンを3型に分けて考え,第1は充実性のもの,第2は嚢胞性のもの,第3はこの両者の混合型としている。充実性腫瘤のパターンを呈した症例についてみると,150例中38例にこの型のものがみられた。このパターンを示した症例を更に分析してみると,25例は腎癌であり,4例は小さい嚢胞で,9例は正常腎であつた。すなわち38例中25例の的中率で90%であつた。次に嚢胞性パターンを示した症例は92例であつて,これらの症例の分析では84例は腎嚢胞,4例が水腎症,2例が腎血腫で,残りの2例は腎腫瘍であつた。このパターンの的中率は98%と言える。混合型のパターンを示した症例は20例であり,この分析結果は6例が壊死性腎癌,3例がウイルムス腫瘍で腫瘍内に出血巣壊死巣の含まれる例であつた。2例は腎膿瘍,5例は嚢胞腎,2例が水腎,その他2例で混合型パターンを呈したものでは誤診は0であつた。以上の結果を綜合すると,150例の腎腫瘍を超音被で3型のパターンに分類した結果では144例(96%)の的中率を示した。

原著

良性腎腫瘍について

著者: 島崎淳 ,   浦野悦郎 ,   古谷信雄 ,   志田圭三

ページ範囲:P.203 - P.210

緒言
 成書に明らかなように,成人に発生する腎腫瘍と言えば,まず腎癌"Grawitz腫瘍"が挙げられなければならない。良性腫瘍は,上皮性,非上皮性を問わず,極めてまれなものであり,特発性腎出血症例において,試験手術時に偶然小腫瘍を見出すがごとき事態が多いとされている。著者らは,最近4例の良性腫瘍症例を経験したので,ここに報告するとともに本邦集計について卑見を述べてみたい。

新生児副腎大量出血の1例

著者: 中村順 ,   大川順正 ,   金沢稔

ページ範囲:P.211 - P.215

 新生児副腎出血は,出血症としては頭蓋内出血,肝出血についで頻度が高く重要視されている。文献的には,レ線像で副腎の石灰化像を発見したことから過去における出血の既往が推定されるような場合1〜3),あるいは出生後すぐに死亡したため剖検によつて始めて副腎の大量出血が発見された場合4〜6)などの報告も散見されるが,一般に本疾患は臨床症状が多彩なために,早期の診断および治療がなされえず,救命例は欧米においても1924年のCorcoran and Straussの第1例以来,1970年のJaegerの報告まで15例に過ぎないようで7〜17),他方本邦ではいまだその救命例の報告はみられていない(第1表)。
 われわれは最近新生児に発生した副腎大量出血症例を経験し,これを救命しえたのでここに若干の文献的考察を加えて報告する。

子宮頸部癌根治手術後上部尿路のレ線学的追求

著者: 藤枝順一郎 ,   大室博 ,   後藤史郎

ページ範囲:P.217 - P.223

緒言
 子宮頸癌の根治手術療法としてのいわゆる広範子宮全摘出術に際しては隣接臓器である膀胱,下部尿管,および尿道にも手術操作の影響が直接間接に波及し,術後尿路に種々の障害を与え特に術後かなり高率に水腎水尿管が発生することは周知の事実である。しかし実際には術後尿瘻を形成したり,あるいは早期に両腎機能不全を来たして,尿毒症症状を呈するものに関しては強い関心が払われているが,尿路症状が表面に現われない症例はともすると看過されやすい。子宮頸癌根治手術後の水腎水尿管の発生頻度およびその推移に関する論文は案外に少なく,殊に症例が産婦人科に属するため泌尿器科医による報告は極めて少ないようである。われわれは子宮頸癌根治手術後,腎盂造影で1年以上追跡した症例を検討する機会を得たので以下に報告したい。

尿路感染症に関する研究—第2報中間尿法における混入汚染細菌の検討

著者: 碓井亜 ,   石部知行 ,   仁平寛巳 ,   小田サキ子

ページ範囲:P.225 - P.231

緒言
 尿の細菌学的検査において,採尿法はKassの中間尿法が広く用いられているが,汚染のない検体を得ることは尿路感染症の診断および治療,特に長期間にわたる治療の必要な症例には欠くべからざるものである。今回中間尿法とカテーテル採尿法とを同一症例に用いて比較し,あわせて中間尿における細菌数と白血球数の関係についても比較したのでこの結果を報告する。

停留睾丸に発生した絨毛上皮腫の1例

著者: 半田紘一 ,   久保隆 ,   岩動孝 ,   小原紀彰

ページ範囲:P.233 - P.238

緒言
 私達は両側停留睾丸で左腹腔睾丸に発生した絨毛上皮腫の1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

男子不完全重複尿道の1例

著者: 田口裕功 ,   石塚栄一 ,   村山鉄郎

ページ範囲:P.241 - P.245

緒言
 われわれは最近4歳の男児の不完全重複尿道の1例を経験した。異常開口部は陰茎背面根部にあり,副尿道は開口部より膀胱側へ約4cmの管腔を形成し,それ以後は恥骨結合の下を通り膀胱の近くで索状物となり,膀胱前壁に達していた。

Buschke-Loewenstein腫瘍の1例

著者: 秋元成太 ,   西浦弘 ,   近喰利光

ページ範囲:P.247 - P.251

はじめに
 臨床上,ほとんど陰茎癌と考えられた症例に数回の生検を施行しても組織学的に悪性所見を得られない例がある。condylomaに似た組織像を呈し,giant condyloma, carcinomalike condyloma,Buschke-Loewenstein Tumor(以下B.L.と略す)と呼ばれているものがこれにあたる。最近われわれはこの腫瘍に属すると考えられる1症例を経験したので,若干の文献的考察とあわせて報告する。

Urological Letter・130

間質性膀胱炎の治療法補遺

ページ範囲:P.223 - P.223

 間質性膀胱炎の治療法としては多くの違つた方法があり,国中至るところでいろいろの人によつて用いられている。
 筆者の治療様式は膀胱腫瘍と考えた例にTURを行なつて,偶然に用いたものであり効果的なことを知つたのである。この時の切除片の病理解答が間質性膀胱炎ということだつたのである.この患者は何年もの間苦しんだのに,いまだかつてないような劇的治癒を経験したのである。本症に際して患者さん達の訴える苦しい症状はわれわれが熟知している通りであるが,その苦しみから逃れ得たのである。

追悼

故高橋 明先生追悼

ページ範囲:P.252 - P.252

略歴
1884年11月5日 生誕
1909年2月 京都帝国大学福岡医科大学卒業

故高橋明先生追悼の辞

著者: 市川篤二

ページ範囲:P.253 - P.253

 日本泌尿器科学会名誉会長,東京大学名誉教授,正三位勲一等高橋明先生は病気御療養中のところ,3月12日早朝忽然として長逝せられた。誠に哀惜に耐えない。
 先生は私共門下生にとつて掛けがえのない恩師であられたが,独り門下生ばかりでなく,およそ泌尿器科学に志す者にとつて偉大なる師表であり,更にわが国の医学界全体にとつて大長老であられたことは,別記の御略歴を一見すれば明らかである。

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外国文献

ページ範囲:P.257 - P.258

UROLOGIA INTERNATIONALIS Vol.26, No.5, 1971
Surgical Implications of Ureteral Neurology. Bo-yarsky, S., Labay, P. and Escalante, O. 325
Ersatz von Harnleiterdefekten mit Hilfe der offe-nen Harnleiterregeneration.(Repair of Ureteral Defects Using"Open Ureteral Regeneration") Kierfeld, G. und Strohmenger, P. 336

内国文献

ページ範囲:P.259 - P.260


 腎異常血管による水腎症の1例,竹川鉦一・他:臨放,17;1,65,1972.
 両側性Wilms腫瘍を中心に考察したWilms腫瘍の同胞発生例,村田光範・他:小児科,13;1,67,1972.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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