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手術手技
膀胱の奇形の外科
著者: 辻一郎1
所属機関: 1北海道大学医学部泌尿器科学教室
ページ範囲:P.297 - P.303
文献購入ページに移動尿膜管疾患には色々なものがあるが,以下尿膜管発生異常に基づく臍尿瘻について記す。
臍尿瘻は先天性のものはもちろん後天性のものもすべてその基底には尿膜管のなんらかの発生異常がある。出産後臍帯脱落と共に始まる臍尿瘻はまず尿膜管無形成(胎生期尿生殖洞上部の狭化がまつたく起こらず膀胱上端が臍に直接しているもの)か尿膜管形成不全(尿生殖洞上部の狭化が不完全で通常の意味の尿膜管は形成されず,膀胱頂部から上方に漏斗状あるいはひざご形に内腔が延びて臍に達する状態)である。ただし尿膜管の無形成や形成不全でも臍帯脱落後必ずしも臍尿瘻を来たすとは限らない。出産後まつたく無症状であつたもの,あるいは出産直後一時的に膀尿瘻を来たしたが間もなく自然治癒したものが,後年下部尿路通過障害による膀胱内圧上昇や外傷・炎症などが加わつて晩発性の臍尿瘻を来たすこともある。尿膜管降下不全(尿膜管はほぼ正常に形成されるが,出産後降下せぬ状態)や尿膜管性膀胱憩室が臍に破れ,また尿膜管嚢胞が感染して膀胱および臍の両方向に破れて,臍尿瘻となることは比較的稀で,かつこの場合は尿洩の程度も一般に軽度である。
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