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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科26巻5号

1972年05月発行

雑誌目次

図譜・369

対側副腎に巨大な転移を示した腎腫瘍

著者: 斯波光生 ,   南茂正 ,   高村孝夫

ページ範囲:P.356 - P.357

 患者血尿を主訴とした67歳の男子。
 現症右腎はIVPで機能なく,RP像から下極の腫瘍と診断(第1図)。左腎は機能正常だが下方に圧排され,その上部に手拳大,円形の腫瘤陰影があり(第1図),腹部大動脈撮影で左腎動脈起始部から2本の副腎枝が腫瘤をつつむように走り(第2図),遷延像では腫瘤中にpoolingが著明(第3図)。副腎機能検査に異常がないため右腎腫瘍の左副腎転移と診断した。

図譜・370

石灰化せる前立腺結核症

著者: 原三信 ,   原孝彦 ,   後藤宏一郎 ,   南里和成

ページ範囲:P.358 - P.359

 患者 川崎某,43歳,男子,船員。
 主訴 全身倦怠,排尿困難,尿混濁。

カラーグラフ 腫瘍シリーズ・5

腎実質悪性腫瘍(3)

ページ範囲:P.362 - P.363

1.腎腺癌(Adenocarcinoma)
 27歳,男子。約1カ月前,左側腹部に野球ボールが当たり,以来左側腹部痛と肉眼的血尿が続き当科受診。
 レ線学的検査(DIP, RP, PRP, Arteriography)および腎シンチグラムなどにて左腎腫瘍を疑い左腎全剔施行。手術時腎表面の著明な静脈拡張,周囲との癒着はみられず,また腎門部リンパ節の腫大や腎静脈の腫瘍栓塞などは認められなかつた。

綜説

Dysgonadism

著者: 石神襄次

ページ範囲:P.365 - P.373

 Dysgonadismとは性腺の発生異常によつて惹起された疾患の総称ということができる。しかし,発生的には異常を認めなくても,なんらかの原因によつて発育課程の性腺の機能不全,あるいは異常を示した場台もこの範疇にいれられよう。性腺の発生異常としては,無発生(gonadal agenesis)と,異発生(gonadal dysgenesis)がふくまれるが,臨床的に両者を厳密に区別することはきわめて困難であり,正確な無発生例は現在まで少数が報告されているにすぎない。
 一方,正常な高等動物においては,卵と精子の結合によつて受精卵ができるが,この時点で個体の遺伝的な雌雄の決定がおこなわれる。かくしてそれぞれの決定された性に応じた分化がはじまるものである。すなわち,性腺原基は雌雄いずれの性腺にも分化しうるpotencyをそなえているが,遺伝的性の決定によつて,他の性腺原基は萎縮消褪し,睾丸,卵巣いずれかの性腺に発達する。かかる性腺の分化にしたがつて性路も一方の方向に分化し,ここに身体的性別が形成される。さらに生後,個体の持つそれぞれの性腺の機能の発現によりいわゆる2次性微がおこなわれ,ここに始めて完全な男女ができあがるものである。

手術手技

膀胱外反症の手術

著者: 町田豊平

ページ範囲:P.375 - P.381

はじめに
 膀胱外反症の治療にはすべて外科的手段が必要である。本症をそのまま放置したり,適切な手術的処置が行なわれないと,多くの症例は幼くして感染症で死亡するであろう。外科的治療のほとんどが尿路変向術の適用であつて,腹壁膀胱の形成術で成功する例はきわめて少ない。ことに本症に対する尿路変向術(尿管性尿路変向)は第一義的に必要な手術であつて,他の泌尿器科疾患でのlastchoiceの手段とはちがうところが重大である。したがつてその手術目標も可及的に生理的な状態に近いものを始めから完成することにある。
 著者は約5年前に16歳の少女の膀胱外反症を経験し,Lowsley-Johnson法による尿路変向を行ない成功した症例を持つているので,本法の手術手技についてのべてみたい。

文献抄録

腎盂,腎杯腫瘍の保存的手術について

ページ範囲:P.381 - P.381

 著者らはYugoslaviaにおける上部尿路腫瘍の最近20年間の発生頻度を統計的に観察するとともに,上部尿路腫瘍の保存手術26例の予後について述べている。ユーゴにおいては1953年を境に腎盂および尿管腫瘍の発生頻度が急に高くなつている。1961年から70年にかけては腎実質腫瘍より腎盂腫瘍の方が症例数が増加している。著者らの大学において過去20年間にユーゴにおける上部尿路腫瘍として450例の腎盂腫瘍と257例の尿管腫瘍を集計しえた。そして著者らはこれら症例の住居地域を地図にプロットしてみたところ,ある河川流域の村においては人口200ないし157人に1人の発生をみているに反して都市においては2万ないし4万5千人に1人の発生頻度であり,このような差異の理由として村落地域にみられる風土病的慢性腎疾患が原因であろうと指摘している。そしてこの腎疾患は特殊地域の飲料水や摂取食物の腎毒性と関係があるのではないかとしている。

原著

巨大Wilms腫瘍の1例

著者: 武田尚 ,   穂坂正彦

ページ範囲:P.383 - P.388

緒言
 われわれは2歳9ヵ月男児の2700gに及ぶ巨大なWilms腫瘍を経験したので報告するとともに若干の文献的考察を行なう。

Parapelvic cystの1例(追加症例)

著者: 秋元成太 ,   横山良望 ,   平岡保紀 ,   近喰利光

ページ範囲:P.389 - P.393

はじめに
 Parapelvic cystについては,教室の遠藤1)が本邦8例目としてすでに報告しているが,本疾患の名称がParapelvic cyst, Peripelvic cyst, peripelviclymphatic cyst, Pyelolyphatic cyst, parapyelitic cystなど多岐にわたり,しかも臨床的に無症状のことが多く,他疾患との鑑別の際に本疾患についての概念を知ることが必要になつてくる。その意味でさらに症例追加をした。

Adrenal restのAdenomaによるPrimary Aldosteronismについて

著者: 村橋勲 ,   高崎悦司 ,   浅野美智雄 ,   岸洋一

ページ範囲:P.395 - P.399

はじめに
 Primary Aldosteronismは,1955年Conn1)により高血圧とhypokalemiaを主徴とする疾患としてはじめて発表された。その後本症に対する関心がたかまり,本邦においても既に143例以上が報告されている2)。しかし,adrenal restのadenomaでPrimary Aldosteronismの症状を呈したという報告は内外文献上見あたらない。
 最近著者らは,高血圧,hypokalemiaを主訴として紹介された,43歳,主婦にPRPを施行し,大きな腫瘍陰影をみ,手術を施行し,adrenal restに発生したadenomaによるPrimary Aldosteronismの1例を経験し,治癒せしめたので報告する。

原発性尿管腫瘍—保存的手術を施行した4例

著者: 平石攻治 ,   堀内誠三 ,   中川完二 ,   三浦枡也 ,   親松常男 ,   福谷恵子 ,   土屋文雄

ページ範囲:P.401 - P.406

はじめに
 原発性尿管腫瘍に対する手術的療法としては,腎尿管摘除術兼膀胱部分切除術が常識的に行なわれている。しかし腫瘍の悪性度,浸潤度,そして腎機能の状態などにより,保存的手術法を積極的に採用する人々もいる。
 著者の1人土屋は,わが国で初めて2例の原発性尿管腫瘍に対して保存的手術法を行ない,すでに発表した25,26)。この2例の経過を報告するとともに,最近2例に同様な手術を施行したので,ここに報告し,かつ保存的手術法の意義について検討してみたい。

女子巨大膀胱結石の1例

著者: 本多著 ,   尾上泰彦

ページ範囲:P.409 - P.413

緒言
 尿路結石症は,現在最も頻度の高い疾患であるが,大部分は上部尿路結石であり,膀胱結石は相対的には少ないが,それでも日常の泌尿器科臨床ではしばしば遭遇する疾患である。しかし,巨大な膀胱結石はそれ程多いものではない。
 われわれは最近,女子にみられた230gの巨大膀胱結石の1例を経験したので報告する。

新生児睾丸回転症の3例

著者: 公平昭男 ,   宮崎一興

ページ範囲:P.415 - P.418

 睾丸回転症は本邦では,すでに250例近くの報告があるが,今回われわれには,新生児(生後1ヵ月未満)の睾丸回転症3例を経験したので,症例報告と併せ,その特異性などにつき若干の考察を加える。

女子尿道下裂症の1治験例

著者: 鈴木唯司 ,   三国恒靖 ,   白岩康夫 ,   舟生富寿

ページ範囲:P.419 - P.423

緒言
 女子尿道下裂症は極めて稀な疾患とされている。われわれは最近尿路感染症を度々繰返していたと思われるが放置しており,偶然尿道下裂症を指摘された1例を経験し,これに対し尿道形成手術を行なつたので,以下に報告する。

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外国文献

ページ範囲:P.425 - P.427

THE JOURNAL OF UROLOGYVol.106, No.3, September 1971
Current Concepts in Genitourinary Oncology: Multidisciplinary Approach.P.Rubin 315
Renal Artery Embolism: Case Report With Return of Complete Function of Involved Kidney Following Anticoagulant Therapy.J.M. Parker and J.D. Lord 339

内国文献

ページ範囲:P.429 - P.430


 大動脈炎症候群による腎血管性高血圧症にたいする外科的治療後の妊娠分娩.竹内正七・他:産と婦,39;(3), 93, 1972.
 高年者と腎臓,尾前照雄・他:診と療,60; (3), 41,1972.

Urological Letter・133

末端部尿管結石の経膀胱截石術

ページ範囲:P.430 - P.430

 末端部尿管ことに膀胱壁内尿管に膀胱外から到達することは困難である。筆者は最近,簡単なことと組織障害の軽減という理由から経膀胱的到達法を用いている。この方法は膀胱壁内尿管あるいは尿管口から上方3cm以内の尿管内に結石が嵌頓している場合にだけ行なうのである。
 正中または恥骨上横切開で膀胱に達する。ついで膀胱の正中線上に切開を加えて膀胱を開く。もし石が尿管口に嵌頓していれば単純に尿管口を切開すれば結石をとり出すことができる。しかし,結石が膀胱壁内または2〜3cm上方にあるとぎは,後方粘膜を傷つけないようにして尿管口のまわりに切開を加える。ついで三角部の筋層を尿管から分離する。こうすれば尿管下端部を膀胱内へ移動できる。そして尿管口から上方結石のあるところで切開すれば,結石は摘出できる。そのあとは尿管の後方の分けた筋層を5-0または4-0のクローミックで閉じて尿管をもとのように再移植する。尿管口の位置を少し後方に移動させてもかまわない。原則として尿管内にスプリントは入れない。膀胱の前壁の切開創は普通の通りに,ドレンを入れて閉じ,膀胱周囲にもドレンを入れて腹壁を閉じる。

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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