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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科26巻7号

1972年07月発行

雑誌目次

図譜・373

重複腎盂の腎に発生した腎腫瘍

著者: 横田武彦 ,   星野嘉伸

ページ範囲:P.532 - P.533

 患者 E.U.,59歳,女。
 主訴 血尿。

図譜・374

Pharmaco-Prostatoadenogram

著者: 岡直友 ,   杉浦弌 ,   和志田裕人

ページ範囲:P.534 - P.535

 筆者らは1968年にtelevision X-ray equipmentを用いるtransrectal prostatography6)を考案して以来,本法について詳細に研究し種々の前立腺疾患に応用してきた2,3,5,8)。その結果,前立腺はきわめて豊富な脈管系を有する組織であることをX線学的に証明した7)。このことは組織学的7)に,あるいは組織化学的4)にも実証した。これらの研究から前立腺実質内に注入した造影剤はすみやかに脈管系に吸収され,きわめて短時間に消え去る現象を解明したのである。

カラーグラフ 腫瘍シリーズ・7

腎盂および腎被膜腫瘍

ページ範囲:P.538 - P.539

1.腎盂乳頭腫(Papilloma)
 〔症例〕 41歳,男子,会社員。
 主訴 無症候性血尿。

綜説

睾丸機能検査法

著者: 西村隆一 ,   穂坂正彦

ページ範囲:P.541 - P.552

緒言
 睾丸の働きは男らしさの完成と男子としての生殖能力の形成で,このうち前者はLeydig細胞より分泌されるtestosteroneによるもので,後者は精細管上皮による精子形成作用によるものである。これらの睾丸機能を判定する方法としては従来,(1)視,触診による臨床的診断法,(2)精液検査,(3)睾丸生検,(4)尿中ホルモン測定などが行なわれている。
 睾丸機能検査法の詳細についてはすでに諸家(志田ら;19661),落合;19692),熊本;19693),佐藤;19694),白井ら;19695),原田,西村;19696))の綜説があり,このため従来の方法およびその解釈については読者も不便を感じないものと思われる。それ故,私はこの綜説で睾丸機能検査法の最近の問題として血中testosteroneについて述べることが適当と考えた。しかし,血中testosterone測定は今日なおroutineな方法でないとの意見もあると思われるが,今後測定法の簡便化に努力がはらわれroutineな検査法に近づくことは明らかであり,また睾丸機能に関する内外の報告も血中testosteroneによるものが増加することは当然と考えられるため,従来の方法についてはなるべく簡単に説明し,血中testosteroneによる睾丸機能検査法を主として述べたい。なお,この問題に関しては熊本教授一派の丹田(1971)7)の研究があるので参照されたい。

Urological Letter・135

異常動脈あるいは静脈による腎盂尿管移行部閉塞

ページ範囲:P.552 - P.552

 最近若い患者例のうちに動脈および静脈に関係した水腎症例があつた。かかる例はHellström術式を含む種々なる方法により,これらの血管の位置を変えるか,あるいは腎盂を切断し,血管の上方で再吻合するかによつて治る。
 次のことがらは特に興味ぶかい。

手術手技

膀胱拡大術

著者: 百瀬俊郎 ,   尾本徹男

ページ範囲:P.555 - P.561

まえがき
 膀胱壁の高度瘢痕化と弾力性喪失により,容量のいちじるしく減少した萎縮膀胱の治療としては,腸管を利用する膀胱拡大術が化学療法の発達とともに一般化し,幾多の改良が加えられてきた32,38)。その他には辻教授らによる補愼再生力を利用する方法40,42),有茎腹膜弁7,25)を用いる方法があるにすぎない。
 腸管を利用する術式としては,従来Scheele(1923)16)の小腸環膀胱吻合に代表される,腸管をそのまま用いるclosed loop法と,Tasker (1952)18)の小腸片膀胱吻合に代表される,腸を切り開いて布状にして用いるopen flap法の2つがある。また利用腸の部位としては,回腸,S状腸,回盲部などがあげられる。

パネルデイスカッション

先天性神経因性膀胱の診断と治療・1

著者: 辻一郎 ,   折笠精一 ,   今林健一 ,   小川秋実 ,   宮崎一興 ,   遠藤博志 ,   黒田一秀 ,   大田黒和生

ページ範囲:P.563 - P.574

 辻 脊椎奇形(脊椎破裂や仙骨欠損など)に伴う腰・仙髄形成不全に基づく先天性神経因性膀胱は小児の慢性排尿困難と尿失禁の原因として最も頻度の高いものであり,絶えざる尿失禁が患児と家族の精神的苦悩となるばかりでなく,放置すれば排尿困難・残尿を基としてかつ高率に続発する尿感染・膀胱尿管逆流も加わつて進行性の腎,上部尿路障害が起こり,成人期に達する前に腎不全やurosepsisで死亡するものも多い。先天性神経因性膀胱は神経障害の形式が多彩でかつ年と共に病像が変化してくることも多いうえ,対象が幼小児であるための診断,治療上の制約もあつて,成人の脊髄損傷の場合よりも一層問題が難しくなつてきます。
 この問題についてわが国は欧米に比しかなり立ち遅れの現状にあり,また以下の各論者の意見にもかなりの差がありますが,本日のパネルで本症の診断,治療面の問題点を明らかにすることができて,今後の発展の一つの足がかりとすることができれば司会者として幸いです。

原著

遊走腎の組織学的検討

著者: 星野嘉伸 ,   北川龍一

ページ範囲:P.577 - P.580

はじめに
 遊走腎の組織学的所見については,すでにいくつかの報告1〜3)がみられるが,遊走腎の定義自体に未だあいまいな点があり4〜7),組織学的変化の特長といつたものは認められていない。著者らは少なくとも立位で2椎体以上腎の下垂を認め,疼痛などの遊走腎によると思われる主訴を持つ患者の腎組織について検討した。

成人腎のmixed teratoid tumor(wilmsoid tumor)の1例

著者: 宇山健 ,   森脇服介

ページ範囲:P.581 - P.587

緒言
 Wilms腫瘍は小児の腎に発生する特異な悪性腫瘍とされているが,まれに成人例の報告がある。またWilms腫瘍の組織像に対して,その多様性から種々の名称が用いられ,組成により,あるいは発生学的に各種の分類が行なわれているが,いまだに定説はない。
 われわれは成人腎腫瘍の手術例で,広義のWilms腫瘍あるいはwilmsoid tumor, mixed teratoidtumorともいうべき組織像を呈した1症例を経験したので報告する。

下大静脈後尿管の3例

著者: 工藤潔 ,   千野一郎 ,   町田豊平 ,   増田富士男 ,   小林睦生 ,   佐藤勝 ,   大石幸彦 ,   吉良正士 ,   南武

ページ範囲:P.589 - P.596

緒言
 近年,尿路および血管のレ線診断法の進歩により下大静脈後尿管の診断は容易になり,ここ数年来多数の報告がみられる。欧米では,Hochstetter(1893)1)が剖検上初めて発見し,臨床ではKim-brough(1935)2)が最初に報告した。その後,Pick&Anson3)が26例, Abeshouse&Tankin4)が58例,Quershi&Mulvaney5)が131例を集計した。本邦では,喜多(1928)6))が剖検上2例を初めて発見し,臨床では山本(1941)7)が右腎結核患者の術中に初めて発見している。その後,西浦8)が11例,前川ら9)が32例,今村ら10)が56例,石部ら11)が75例を集計している。最近,われわれは3例を経験したので報告し,自験例3例を含め,1970年末までに集め得た89例について統計的考察を加える。

当教室で経験した20例の原発性尿管癌症例

著者: 黒沢昌也 ,   鈴木騏一 ,   加藤正和 ,   佐々木健二 ,   杉田篤生

ページ範囲:P.597 - P.601

緒言
 原発性尿管癌を組織学的に診断し,はじめて発表したのはWising&Bilix(1878)1)で,また術前検査で尿管腫瘍と診断して報告したのはAlbarran(1902)2)が最初である。最近の欧米における統計的観察に関する報告は,1963年に行なつたScott3)の474例があり,また1971年にはHautrey4)が自験例52例について臨床病理学的に報告を行なつている。本邦における最初の報告は,1935年の伊藤5)によるものであるが,その後多くの報告例がみられ,最近では1969年に安藤ら6)が行なつた自験例2例を含めた231例の本邦報告についての統計的観察がみられる。このように原発性尿管癌の報告例は年々増加し,現在ではそれ程まれな疾患ではなくなつてきた。しかし,診断的には未だ困難な点もあり,誤診率が高い尿路疾患の一つで,泌尿器科領域における重要な疾患である。当教室においても,1959年4月から1971年3月までの12年間に20例の原発性尿管癌を経験しているが,このうちの5例についてはすでに教室の今野ら7)と小野寺ら8)によつて報告されているが,今回はこれらの症例も含めて統計的観察を行なつたのでここに報告する。

スプリントカテーテルを用いない尿管形成術—近位における一時的尿流変更による

著者: 伊藤秦二 ,   加野資典

ページ範囲:P.603 - P.608

緒言
 近年尿管の形成手術には広くスプリントカテーテルが用いられるようになつた。しかしながら,カテーテルという異物を長期間にわたつて尿管内に留置することの弊害もいくつか考慮されねばならない。
 その1つは尿路感染である。これは尿道へのカテーテル留置が早晩尿路感染をもたらすのと同様である。第2にはカテーテルの存在は尿管の正常の蠕動を妨げるし,特に尿管内径に対してスプリントが太すぎる場合には尿管壁の虚血,ひいてはその線維化をもたらし,これらは上部尿路の水力学的な見地から好ましくないことはZimskindら(1968)の実験によつても明らかなことである。

文献抄録

精管結紮後の精液中精子の消長

ページ範囲:P.601 - P.601

 精管結紮後の射精液中の精子は漸減するが,Davisらの報告(1969)によれば10回程度の射精で精子は完全に消失するといわれている。著者らはこの点について200例の精管結紮者について検索追試して,その結果を報告している。取扱つた200名は,年齢では25歳から60歳で,大部分の者は30歳台である。
 手術方法は精管の一部を切除し,断端内腔を電気焼灯後絹糸にて両端を結紮する。精液の検査は,術前のものをまず記録し,ついで術後第4回目毎の射精液について4回検査を実施する。かつ最後の2回の精液が無精子になるまで検査するが,無精子となるには2ヵ月近くを要する。著者らの検査結果によると,12回目の射精で無精子となつた者は65.5%,24回目ではなお2.5%の者が精液中に精子が見られており,全例が無精子となるまでには36回を要している。この期間は精管結紮後最長5ヵ月を要している。年齢的にみれば若年者ほど射精回数が多いので精液の無精子になる期間は短い。

学会印象記

第60回日本泌尿器科学会総会

著者: 桐山啻夫 ,   石部知行 ,   生駒文彦 ,   江藤耕作 ,   前川正信 ,   川井博 ,   緒方二郎 ,   藤田幸利 ,   大森弘之

ページ範囲:P.609 - P.617

第1日(4月8日)・午前
 学術大会第3日の4月10日を除いて,会期中はいずれも天候に恵まれず,"長崎と雨"は流行歌によく歌われ付き物のように思つたが,土地の人の話では偶然ということで,折角お世話していただいた近藤教授を始め長崎大泌尿器科学教室員諸氏のご労苦に水がさされ,まことに気の毒でした。
 本総会も60回となり,還暦を近代医学発詳の地長崎で迎えたことを,"原点から将来"へと牽強付会して解釈し,このような見地から本総会の印象なり,感想なりを述べてみたい。

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外国文献

ページ範囲:P.619 - P.620

INVESTIGATIVE UROLOGY Vol. 9, No. 2, September 1971
In Vitro Maintenance of Human Hyperplastic Prostate Tissue. G. Randolph Schrodt and Charles D. Foreman 85
The Effect of Vesicoureteral Reflux on Renal Growth and Development in Puppies. Lowell R. King and H. Grady Sellards 95

内国文献

ページ範囲:P.621 - P.622


 糖尿病のRadioisotope Renogram,鴛海良彦・他:臨放,17;(5),326,1972.
 教室で行なわれた腎生検の検討,松本光仁:内科,29;(5),954,1972.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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