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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科27巻1号

1973年01月発行

雑誌目次

図譜 電顕図譜・1

前立腺

著者: 狩野健一 ,   桜井叢人 ,   外川八洲雄

ページ範囲:P.2 - P.3

 ヒト前立腺の腺組織は単層の円柱上皮細胞と基底部に介在する基底細胞より成つている。
 第1図 上皮細胞の先端部には腺腔に面した部位に微絨毛(Mv)が見られ,頂部に多数の空胞(v)が存在する。核上部から基底部にかけてはミトコンドリア(M),ライソゾーム(Ly)およびリポフスチン様顆粒(Lf)が散在する。相接する細胞の隣接部にはinterdigitation(矢印)が見られる。基底細胞(Bc)は一般に扁平で,細胞質に比し核が大きく細胞小器管は少ない。ここでは空胞はほとんど認められない。基底膜(Bm)下の間質に毛細血管(Ca)が存在している(×5,000)。

図譜・385

小児の膀胱葡萄状肉腫の1例

著者: 西田亨 ,   稲田文衛 ,   網野勇

ページ範囲:P.4 - P.5

 患者 2歳3カ月,男児。
 経過 昭和46年7月上旬より血尿をきたし,膀胱炎として治療されたが効なく,漸次排尿困難が加わつてきた。7月下旬帯広厚生病院泌尿器科を受診し,膀胱腫瘍の疑いで8月26日当科に紹介された。既往歴,家族歴に特記事項なし。

図譜・386

後部尿道憩室

著者: 廣野晴彦 ,   川井博

ページ範囲:P.6 - P.7

 患者 64歳,男子,公務員。
 主訴 尿閉。

カラーグラフ 腫瘍シリーズ・13

膀胱腫瘍(3)

ページ範囲:P.10 - P.11

1.尿膜管腫瘍(Mucinous adenocarcinoma arising from the epithelium of the urachus)
 〔症例1〕M.S.,36歳,男。
 主訴 尿中血性粘液塊の排出。

綜説

前立腺の生理

著者: 島崎淳 ,   古谷信雄 ,   志田圭三

ページ範囲:P.15 - P.27

緒言
 雄性副性器は精子を輸送する管腔と共にいくつかの腺組織を有している。発生学的にウォルフ氏管由来の精嚢やampullary glandsと,泌尿生殖洞や尿道からできた前立腺および球尿道腺とに区別できるが,いずれもtubulo-alveolarの腺構造である。前立腺を含めて副性器の外観は哺乳動物間で差が著しく,ヒトと動物間の臓器名のみでの対比は無理である。更に機能を比較する場合にはその差が大きくなるので,副性器の研究には比較動物学の知識が必要である。第1図はヒト,牛,ウサギ,ラットの副性器であるが1),外観がおのおの特徴あるのがわかる。横線は果糖を分泌しているところを示しているが,種属による差が理解されよう。
 ヒトの前立腺は成人ではクルミ大で尿道をかこんでいる。Lowsleyの教科書2)でみるように5つの原基より発生して来るが,生下時以降では分葉はみられず,組織学的にも区別できない。しかし,Huggins and Webster3)はStilbestrolを投与すると前方の腺は退行変性を来すが,後方の腺はよく形態を保ちエオジン染色性顆粒の分泌があることから,前立腺二葉説を立てた。

手術手技

腎摘除術—腎への到達経路と偶発症について

著者: 岸本孝

ページ範囲:P.29 - P.35

 外科的腎疾患に対する手術は,悪性腫瘍を除いてはできるだけ腎保存的に行なうのが原則であるが,悪性腫瘍の他に,高度の外傷,重篤な膿腎,進行した腎結核,機能の廃絶した水腎症などでは,依然として腎摘除術が適応となることがある。なおこれらの腎疾患に対する適応とは異なり,最近では血液透析,腎移植の普及につれてdonorおよびrecipient (両側)の腎摘も増加しつつある。
 腎摘除術の術前準備は一般腹部大手術の場合と同様であるが,これに加えて反対側腎(残腎)の状態を厳密に検査しておくことが極めて大切であることはいうまでもない。たとえ外傷のような緊急を要する時でも,術前に残腎の機能を確認しておくことが必要欠くべからざる条件である。

文献抄録

腎下極部分切除による鋳型結石の治療

ページ範囲:P.35 - P.35

 過去20年以上の間腎鋳型結石の治療に関しては泌尿器科医の間でいろいろと議論がなされてきたが,外科的な切石術では術後の仮性真性再発が一番問題となる。しかし現在では鋳型結石の切石術は結石の摘出と共に結石再発の病巣となる下腎杯腎盞の摘除を行なうことが広く実施されている。著者らは過去18年間に300例以上の各種腎結石および多発性結石を外科的に治療したが,腎下極切除による鋳形結石摘出術がその再発防止にも良いことを経験し,術式と共に症例について述べている。

原著

先天性腎発育不全症の3例

著者: 岡田清己 ,   広川勲 ,   中野巌

ページ範囲:P.39 - P.43

緒言
 先天性腎発育不全症は,現在の泌尿器科学ではまず見逃がすことのない疾患である。これには発育の程度により無発生,無形成,形成不全の3型に分類される。しかし,診断上の限界もあり,さらに後天的な萎縮腎との鑑別も必要であり,それ故どの発育不全型に入るかを決めることは決して容易なことではない。この疾患には生殖器奇形,反対側尿路奇形,二次的合併症も多いことにより,その診断,治療には十分注意を要さなければならない。最近われわれは発育不全腎3例を経験したので報告すると共に,これらの診断,治療に対する意見をのべてみたい。

腎盂尿管静脈瘤の1例

著者: 黒木隆亨 ,   岩崎昌太郎 ,   天本大平

ページ範囲:P.45 - P.50

緒言
 腎盂あるいは尿管の静脈が怒張し,なんらかの臨床所見を呈して来る疾患を静脈瘤の存在場所により腎盂静脈瘤,尿管静脈瘤,腎盂尿管静脈瘤,上部尿路静脈瘤などと呼んでいる。本症はまれな疾患であり,今までに欧米では17例,本邦では井上の1例が報告されているにすぎない。われわれは最近本症の1例を経験したので報告する。

慢性膀胱炎類似の膀胱鏡像を呈した原発性浸潤性膀胱癌の2例

著者: 林田重昭 ,   小宮俊秀 ,   桐山啻夫 ,   酒徳治三郎

ページ範囲:P.51 - P.56

緒言
 原発性膀胱癌はその大多数が膀胱内腔に向つて乳頭状または実質性の腫瘤を形成し,また一部散在性の小結節状ないしは潰瘍状に浸潤する。腫瘤を形成するときはもとより後者の場合においても,粘膜表面の不整,壊死状および白色痂皮様物質や粘液膿性物質の付着,石灰沈着など,内視鏡的所見を十分検討しておけばその診断は比較的容易である。しかし,膀胱癌のうちには比較的まれであるが頑固な膀胱炎様症状をきたし,注意深い膀胱鏡検査を繰返しても,その悪性変化を断定しがたいものを経験することがある。これらは一般に慢性または結核性膀胱炎と酷似した像を呈し,しばしばこれらの誤まつた診断のもとで治療を継続することになりやすい。
 現在まで私達はこのようないわゆるPrimaryinvasive carcinoma of the bladder simulatingchronic cystitisともいうべき2症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

膀胱癌剖検例31例の統計的観察

著者: 白井千博 ,   津川龍三 ,   黒田恭一

ページ範囲:P.57 - P.62

緒言
 当教室における膀胱癌剖検例に関しては,第53回日本泌尿器科学会総会(1965)1)および第4回癌治療学会総会(1966)2)において報告したが,その後さらに症例が増加したので全例につき総合的に検討した成績について報告する。

膀胱扁平上皮癌20例の臨床統計的観察

著者: 里見佳昭 ,   公平昭男 ,   中尾日出男 ,   高井修道

ページ範囲:P.67 - P.72

緒言
 膀胱腫瘍の大部分は移行上皮癌であるが,扁平上皮癌も全膀胱腫瘍の10%内外を占めており決してまれな疾患ではなく,しかも,移行上皮癌とは臨床所見,経過,予後をはじめ治療方針も異なる部分を持つており,当然,膀胱扁平上皮癌について臨床的観察を行なつた多くの文献があるべきであるが,残念ながら内外とも少ないようである。そこで今回,昭和35年1月から昭和47年4月までの12年4カ月の間に横浜市大泌尿器科に入院した20例の膀胱扁平上皮癌患者につき,移行上皮癌と異なる点に重点をおき臨床統計的観察を行ない臨床上意義あると思われる若干の知見を得たので報告する。

Urological Letter

経尿道機械的操作に対するTrileneの効用/腎瘻管中の凝血塊の除去法

ページ範囲:P.50 - P.50

 膀胱鏡検査に際しての麻酔について先般Rawli-ng博士がかいていたが,筆者は数年来Trileneを使つている。上手に使うと通常Trileneは非常に効果的である。しかし,患者にマスクと本剤のガスの臭に慣れさせておかなければならない。また,良い麻酔の状態に達するにはどうしたらよいか,すなわち深呼吸をしばらく我慢してつづけなければならないし,その間,マスクを顔にしつかりつけておかねばならないことなどをよく説明しておかねばならない。まれにはeuphoriaの状態になつたとき,いくらか騒ぎだす人もいるが,こんな例ではマスクを取り去らねばならない。
 Trileneによる麻酔中にいくらか不快感が起こることがあるが,これは差しつかえはない。Brevitalよりもすぐれていると思われることは必要な期間続けられることである。経静脈的麻酔よりも明らかにすぐれている点は,やめると2〜3分で覚醒するので,検査のあと病変について討議できることであり,患者自身で車を運転して帰宅することもできることである。

見聞記

第67回 AUA総会印象記

著者: 田崎寛

ページ範囲:P.73 - P.78

 1972年のAmerican UrologicalAssociation Inc.(AUA)の総会は5月21日から25日までWashington,D.C.のWashington Hilton Hotelで行なわれた。たまたま筆者と教室の村井勝,馬場志郎と共同で行なつた副腎腫瘍の研究がinvitationで講演できることになつたので,これを機会に大学から2週間の暇をもらい卒後臨床研修状況の視察という名目も兼ねて米国珍道中となつた次第である。
 今回の会長はMississipiのDr.T.Ainsworth,事務総長は例によつて,W.F.Leadbetterである。日本からの出席者は神戸大,石神嚢次教授,慈恵大,町田豊平先生,St.Louis,Mo.のDr.S.Boyarskyの下に留学中の東北大,土田正義先生,九大,坂本公孝先生,San Franciscoに日本医大から留学中の遠藤先生,慶大よりJohnes Hopkinsで修練中の実川正道君,同じくWest Virginiaで修練中の久留主君,それに筆者ら3名であつたと思う。

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内国文献

ページ範囲:P.79 - P.80


 腎性高血圧の管理,柊山幸四郎・他:診と療,60;(12), 25, 1972.
 腎合併症のある本態性高血圧の管理,守一雄:診と療, 60;(12),61, 1972.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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