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文献詳細

雑誌文献

臨床泌尿器科27巻8号

1973年08月発行

文献概要

綜説

前立腺のトリコモナス症

著者: 河村信夫12

所属機関: 1慶応義塾大学医学部泌尿器科学教室 2ベルリン自由大学

ページ範囲:P.635 - P.644

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緒言
 男子尿性器に腟トリコモナスが寄生する事実は,1893年三浦謹之助1)によつて世界で初めて見出されている。彼は男子の尿中からくり返し腟トリコモナスを検出した症例を見つけ,その妻の腟からも腟トリコモナスを見出し,性交によつて相互の感染が起こつたのであろうと推論した。しかし,当時は男子の尿中から腟トリコモナスが発見されたという事実のみで寄生部位については明らかでなかつたし,持続的な感染が起こつているのか,一時的な迷入であるかも判然としなかつた。また病原性を有するか否かも当時は知られていなかつた。1916年Höhne2)が腟トリコモナスは腟炎の原因となると主張してから,男子尿性器にも何かの病原性があるのではないかと考えられはじめたようである。1922年勝沼3)は少年の包皮炎の症例の膿汁から腟トリコモナスを見出し,腟トリコモナスが男子性器炎症の原因となつたと説明した。
 その後May(1932)4)の前立腺炎の症例から腟トリコモナスを見出したという報告があり,つづいて亀頭炎,尿道炎,精嚢腺炎,腎盂炎,膀胱炎,副睾丸炎などからの検出報告がつぎつぎと出された。現在一般的には腟トリコモナスが一部の尿道炎,前立腺炎,精嚢腺炎,膀胱炎の原因となると考えられているが,その他の疾患については,まだ検討の余地がある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1332

印刷版ISSN:0385-2393

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