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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科27巻9号

1973年09月発行

雑誌目次

図譜 電顕図譜・9

移行上皮

著者: 狩野健一 ,   桜井叢人 ,   外川八洲雄

ページ範囲:P.706 - P.707

 移行上皮の特徴は下層にある数個の細胞を,最も表層にある大きな細胞(被蓋細胞)が被つていることである。そして,すべての細胞は基底膜に接している。
 試料と方法 第1図は32歳の左尿管結石(下端部)の患者の経膀胱的尿管切石術の際得た膀胱,第2図は46歳の左腎結石患者の腎摘除術の際得た尿管の移行上皮である。グルタールアルデヒド,オスミウム酸で二重固定し,酢酸ウランおよび鉛の二重染色を施した。

図譜・401

後腹膜線維嚢腫

著者: 廣野晴彦 ,   高橋厚 ,   中神義三 ,   陳泮水 ,   川井博

ページ範囲:P.708 - P.709

 症例 39歳,家婦。
 主訴 右季肋部鈍痛および微熱。

図譜・402

結石を合併した尿管瘤

著者: 重松俊朗 ,   時任高洋 ,   向田正幹 ,   江藤耕作

ページ範囲:P.710 - P.711

 患者 S.N.,46歳,男。
 主訴 左側腹部痛。

カラーグラフ 腫瘍シリーズ・21

睾丸腫瘍(2)

ページ範囲:P.714 - P.715

1.睾丸奇形腫(Adult teratoma)
 症例 20歳,会社員。
 主訴 右睾丸の無痛性腫大。

綜説

前立腺の凍結療法

著者: 野中博 ,   高橋博元

ページ範囲:P.719 - P.726

はじめに
 臨床医学の分野で治療に低温を利用することは古くから行なわれていたが,外科的応用として観血的手術に代りうるcryosurgeryが行なわれるようになつたのは比較的新しいことである。泌尿器科領域ではDe Quervainが1917年膀胱乳頭腫に,ついで1925年膀胱癌に雪状炭酸による凍結療法を試み,良性乳頭腫は治癒しえたというのが最初の報告のようである(Hochbergら1)から引用)。その後も膀胱腫瘍に対する低温の応用の報告はみられるが,一般にはとくに優れた治療法とは考えられず,また合併症も少なくないなどで泌尿器科医の関心は少なかつたと思われる。
 ところが1961年Cooperら2)が液体窒素の超低温を利用して組織を急速凍結し,限局的な組織破壊が得られることからcryothalamectomyに応用し,その後の一連のcryogenic surgeryの報告から,その優秀なことが認められ広く用いられるようになつた。また近年本邦でも臨床各科でのcryo-surgeryの報告がみられるようになつた。

手術手技

腎奇形に関する手術—馬蹄鉄腎と嚢胞性腎疾患

著者: 酒徳治三郎

ページ範囲:P.729 - P.736

〔馬蹄鉄腎〕
はじめに
 馬蹄鉄腎horseshoe kidneyは,両腎の下極が正中線上で癒合している先天異常で比較的よく見られる。ほかに合併症がなければ放置していてもよいが,水腎,結石,感染などの併発を伴うことが多く,この時には手術的治療の適応となることが多い。
 本症の発生頻度は剖検600〜800例中1例といわれるが,泌尿器科患者のみにかぎるとその頻度は高くなり,Lowsley6)は284例中1例,またJuddらは腎手術142.6例中1例に馬蹄鉄腎がみられると述べている。

文献抄録

Enuresisに対する膀胱離断術について

ページ範囲:P.736 - P.736

 1967年にTurner-WarwickとAs-hkenらはSupratrigonal Deuerva-tion(Cystocystoplasty)の名で利尿筋の選択的神経遮断法を発表している。理論的には利尿筋の支配神経は下膀胱動脈の位置で利尿筋に分布しているので,尿管の膀胱接合部よりやや上位で膀胱周囲を剥離し,膀胱頸部より離断すれば膀胱頸部の知覚障害なしに利尿筋神経を遮断することができると考えられる。この考えのもとに1969年Enuretic Syndromの2症例に本手術を施行して満足すべき結果の報告があり,著者らは計19例のEnuretic Syndromeその他症例に追試して報告している。
 著者らは膀胱頸部および尿管口より2cm上位で完全に頸部を離断し,膀胱は腹膜にて覆われている部分まで周囲組織より剥離する。その後02Cut gutにて連続再縫合を行なう。

原著

尿路感染症に関する研究—Ⅸ.計算板法による尿中白血球数について

著者: 石部知行 ,   広本宣彦 ,   仁平寛巳

ページ範囲:P.737 - P.740

 尿中有形成分の正常値を明らかにすることは臨床上重要で,小児尿中白血球数に関しては10/mm3以下9),50/mm3以下6)といつた値があげられている。尿中有形成分によつて尿路感染症(以下UTIと略記)診断の補助的検査とする場合,年齢,性,採尿法など各種の因子がその成績に関与し,著者らもこの点について二,三報告してきた。今日,UTI診断にとつて尿中細菌の定量培養法がもつとも大切であることは論をまたないが,尿中桿菌数と白血球数のいずれがUTIをscreeningする方法として有用であるかは異論のあるところである。
 今回,著者らは尿中白血球数のUTI診断における有用性を外来で得た尿を用い,計算板法により検討したので,その成績を報告する。

選択的副腎静脈撮影により確定診断しえた原発性アルドステロン症の1例

著者: 松岡俊介 ,   日台英雄 ,   公平昭男 ,   桜井英夫

ページ範囲:P.741 - P.745

緒言
 1955年Connにより原発性アルドステロン症が見出され,本邦でも1957年に鳥飼らにより第1例が報告されてから今日まで143例以上の原発性アルドステロン症が報告されているが,未だに疾患の定義そのものや診断上の問題点が多く解決されないままで残つている。
 近年,副腎静脈撮影が副腎腫瘍ことに原発性アルドステロン症診断に有用であるとの報告に接するようになつたが,われわれも最近原発性アルドステロン症の1例に副腎静脈撮影をこころみ,術前確定診断を下すことにより手術を容易に行ない得た1例を経験したので報告する。

Primary Renal Goutについて

著者: 鈴木良二 ,   堀剛治郎

ページ範囲:P.747 - P.751

緒言
 従来,わが国においては痛風は稀な疾患と考えられていたが,最近では決して少なくなく,むしろ年々増加の傾向にある。
 食生活の改善,診断知識の向上などがその大きな理由としてあげられる。

下大静脈後尿管の1治験例

著者: 宮下厚 ,   郷路勉 ,   池田務

ページ範囲:P.753 - P.756

はじめに
 水腎症は日常診療でたびたび遭遇する疾患で,その原因としては尿路結石,尿路結核および先天性腎盂尿管移行部狭窄などが多い。血管が原因になつているものとしては,異常血管が尿管をしめつけるような走行をしていることがめずらしくないが,さらに稀なものとして下大静脈後尿管(Retrocaval ureter)がある。本症は尿管が下大静脈の後を通る先天性の奇型で右側にあるのが普通である。
 現在,本邦で75例(1969年)の集計があるが,われわれは,本症の1治験例を経験したのでその概略を報告し,若干の文献的考察を行なつた。

尿膜管腫瘍7例の臨床的観察

著者: 岡本重禮 ,   稲葉善雄 ,   永田幹男 ,   宮井啓国 ,   久留主正三

ページ範囲:P.757 - P.761

緒言
 尿膜管の発生や機能についての定説は未だ見当らないが,これより発生する種々の疾患についての報告は最近多くなつているようである。なかでも尿膜管の悪性腫瘍はともすれば発見が遅れがちで周囲組織へ浸潤して初めて診断がつくため予後を一層悪くしている傾向がある。ここに記載した尿膜管腫瘍7例中5例は悪性,2例は炎症性の腫瘍であつたが,前者のうち2例は尿膜管腫瘍の特異な症状がなく,剖検で初めて診断がついたものであつた。他の1例は尿中に軟組織塊が出ることを主訴に来院した患者で,このような症例は本邦報告例中稀であつた。いずれにせよ初発症状は様々でそれぞれ異なり臨床上興味深いのでここに特に列挙した。

日本人の前立腺癌

著者: 岡田清己

ページ範囲:P.765 - P.769

緒言
 悪性腫瘍のうちでも前立腺癌はホルモン療法によく反応するという点で特異な存在の癌である。それ故泌尿器科のみならず病理学的にも興味のあるもので癌の発生病理を究明する上に手がかりとなるものと考えられている。わが国においては諸外国と比較して前立腺癌が明らかに少なく,疫学的にも興味ある問題を含んでいる。今回前立腺癌を日本と外国と比較して,何故に少ないのか,また日本でも増加するであろうか,ということについて論及してみたい。癌の頻度に関しては死亡数(または死亡率)によつた。死亡数を根拠にとることは実際には癌の発生率とは異なると考えられるが,発生頻度を調べることは事実上不可能に近く,それ故一般には発生頻度と死亡率とを同義語のように使うことがある。つぎに前立腺悪性腫瘍には癌腫と肉腫があり区別すべきものであるが,この両者を分けた統計がないため悪性腫瘍すなわち癌として扱かつた。

前立腺平滑筋腫の1例

著者: 寺田洋子 ,   西村洋司 ,   北川龍一

ページ範囲:P.771 - P.776

緒言
 前立腺の平滑筋腫はきわめて稀な疾患であり,諸外国においても,1876年Lebeeにより"子宮筋腫に類似せる前立腺筋腫"として報告されて以来37例が報告されているにすぎない。本邦においては,小島が1917年第1例を報告して以来4例を数えるのみである。最近われわれも,71歳の男子にこの症例を経験し得たので報告する。

男子尿道撮影法の検討—第2報 手技について

著者: 大矢正巳

ページ範囲:P.777 - P.780

緒言
 男子尿道撮影法の検討にあたり,まずその実状を知るため,造影剤,注入量,注入器,手のレ線防護についてアンケートによる集計を行ない,第1報として報告したが,今回は実際の手技について私見をのべたい。

Urological Letter

大血管への放射線療法の影響,他

ページ範囲:P.745 - P.745

 13歳の少年が高血圧で来院した。IVPを撮つてみたところ左腎は無機能で,右腎には代償性肥大があつた。検査の結果,尿にはなんの異常もなかつた。この患者は2歳の時に左尿管周囲の神経芽細胞腫の摘出術を受け,引きつづいて型通りの放射線治療を受けたことがある。腫瘍の再発の徴候はなかつたが,しかし主訴の高血圧の検査のため最近,経皮的に股動脈から大動脈撮影を行なつた。これをみると,左腎動脈は描出されず,右腎動脈の中枢側に狭窄があり,以前の照射のために二次的に起こつた腰椎や左腸骨櫛の骨の変化部に一致して腹部大動脈に著明な狭窄があつた。放射線医や血管外科医は共に照射によつて大動脈の発育が障害したのだと考えている。そこで高血圧には薬物療法を行なうことにした。もしも読者の中に同様の経験をお持ちの方がおられたら,お知らせ願えたらありがたい。

小さな工夫

スプリントカテーテルの誘導針

著者: 加藤正和 ,   鈴木騏一

ページ範囲:P.762 - P.762

 膀胱部分切除術を行なう場合,腫瘍の好発部位が三角部周辺にあることから,東北大泌尿器科における成績では約75%の例が尿管膀胱新吻合術を要している。
 この場合にスプリントカテーテルを尿管内に留置し,これを膀胱壁を貫き,かつ腹壁を通して体外へ導くわけであるが,この操作を簡単に手際良く行ないたいと思つて,第1図に示すような誘導針を作成したところ,極めて便利であるので紹介する。

見聞記

西ドイツの泌尿器科地方会

著者: 河村信夫

ページ範囲:P.781 - P.783

 西ドイツでは,年に1回,泌尿器科学会総会が行なわれる。昨年はHanoverで行なわれて日本人も7名出席した。この総会については御存知の方も多いと思われるので,ここでは述べず,筆者の見聞した西ドイツの地方会について,日本のそれと比較することを考えながら書いてみようと思う。
 総会の他に,西ドイツの地方会が北部,西部,南部,東南部の4つに分かれて年に1回ずつ開催され,さらに各都市や州を中心の小さな地方会が年に何回かある。ベルリン(西)では年に3回,ベルリン泌尿器科医師総会という名で行なわれることになつている。

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内国文献

ページ範囲:P.784 - P.784


 術後急性不全—とくに早期診断の確立と早期治療開始の重要性について,小川秀道・他:麻酔,22;(7),672,1973.
 腎移植における医学的倫理的課題,藤本輝夫:日本臨床,31;(7),224,1973.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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