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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科28巻1号

1974年01月発行

雑誌目次

図譜 血管撮影シリーズ・1

Grawitz腫瘍

著者: 永井純 ,   田崎寛

ページ範囲:P.4 - P.5

〔血管造影所見〕
 腹部大動脈造影(第1図):左腎のApical segmentに向うaberrant arteryが大動脈より直接分岐している(→印)。
 左腎動脈は腎門部に至るまで,右腎動脈より太く造影され,左腎への血流が増加していることを示している。左腎動脈は,その大動脈の基始部より伸展挙上され,腎内動脈分枝も伸展し,左腎下半分の腫瘤陰影により外上方に圧排されている。左腎下半分には細かい血管よりなるnet-workが見られ,新生血管の増生を示す所見である。

図譜・409

胸部腎

著者: 今川章夫 ,   前林浩次 ,   中野修身

ページ範囲:P.6 - P.7

 症例 2ヵ月の男児。
 主訴 胸部異常陰影。

図譜・410

尿管瘤の尿道内嵌入による男子排尿困難症例

著者: 小柳知彦 ,   上谷恭一郎 ,   能中賢二

ページ範囲:P.8 - P.9

 患者 17歳男子。
 主訴 および現病歴約2カ月前からの排尿困難および残尿感,左下腹部痛を主訴に来院,良く聞いてみると小児期より排尿時間の延長があつたという。

綜説

精嚢腺レ線診断の意義

著者: 石神襄次

ページ範囲:P.13 - P.21

緒言
 精管内に造影剤を注入し,生体における精嚢腺のレ線的描出に成功したのは1913年,Belfield1)の報告が最初である。本邦においても,柳原,宮田(1928)2)の報告以来,その臨床的意義についても数多くの報告が認められる。しかし,精嚢腺がレ線的に描出しうる臓器である可能性は,すでに1668年DeGraafによつて示されていた。彼は精管内に注入した薬液はまず精嚢腺を充満し,その後,射精管をへて後部尿道に流出する事実を確認している。

文献抄録

人為的血栓形成による腎腺癌の治療

ページ範囲:P.21 - P.21

 腎癌の広範な転移巣は,原発病巣が壊死に陥ると退行性変化を示すこと(Nalder 1971),あるいは腎腺癌はその50%の例に特異的な免疫反応を示すこと(Stjeruswärd 1970)も諸家により報告されている。もし腎腺癌の原発巣の大部分を壊死にさせると,転移巣に対する免疫学的作用も促進させることが考えられる。著者らは動物実験で簡単な手段で腎循還の栓塞をおこさせて,腎実質を広範に壊死に陥らせることに成功したので,この方法により,人体の腎腫瘍を縮少させ,腎摘出を容易にしかつ不慮の腎出血をなくすことを目的に臨床的に応用した。
 著者は19例の腎腺癌の症例について試みている。その方法は2cm立方の筋組織片を患者から無菌的に切除して,これを粉砕し,数mlの生食水に浮游させ,60%造影剤と共に15〜20mlの総量として腎動脈より注入する。症例の11例については30%糖液10〜20mlを追加注入した。症例19例中手術可能な9例は注入後10日から42日の間に腎摘出を施行して,諸種の検査を行なつた。19例の腎癌中11例に肺,骨,腔などに転移巣を認めていた。

手術手技

副腎摘除術—経胸腹膜外到達法

著者: 黒川一男

ページ範囲:P.23 - P.29

 1899年Throntonが男性化症を示した副腎腫瘍の摘除に始めて成功した。1912年Cushingの報告以来,副腎皮質ステロイドの使用できるまでは,Cushing症候群に対する副腎剔除術は治療の本流からはずれていた。1952年Harrison & Thornは,副腎皮質増生によるCushing症候群が副腎剔除術により治癒することを見ている。1927年にはMayoが褐色細胞腫の摘除に成功している。1934年には,Langeron,et al.が20例の高血圧患者に副腎部分摘除術を行ない,結論を得るまでに致らなかつたが,数例に改善を見ている。1945年Hugginが前立腺癌患者に対し,副腎摘除術を行なつた。副腎皮質ステロイドの十分使用できなかつた頃でもあつたが,生存例がなく,前立腺癌に対しては不適当としている。彼はその後3年間副腎摘除術を乳癌に対して行なつている。1951年には,Greenが悪性高血圧,糖尿病に対し副腎部分摘除術が有効であつたと報告している。1955年には,Baumがアルドステロン症患者から直径4cmの腺腫を摘除し治癒せしめている。

症例検討

Cushing症候群—慢性肝炎,蛋白喪失胃腸症を合併し,一側副腎剔除後に改善のみられなかつた症例

著者: 小川秋実

ページ範囲:P.31 - P.37

 司会 今回は,先日Cushing症候群ということで当科に入院いたしまして,右の副腎摘除をしたところが,tumorと思われたものがhematomaであつたという症例です。症状の改善をみないままに内科へ転科いたしまして,さらに内科で詳しい検査をして,やはりtumorがあるということで,もう一度手術をしてみてくれないかという話がありました。
 この症例は非常に複雑で,ただCushing症候群というだけではなくて,ほかにいろいろな合併症を持つております。

原著

両腎にAngiomyolipomaを合併したBourneville-Pringle母斑症の1例とその統計的考察

著者: 平石攻治 ,   津曲一郎 ,   田尾茂

ページ範囲:P.41 - P.47

はじめに
 Bourneville-Pringle母斑症は,全身の外胚葉,中胚葉由来の諸臓器に腫瘍を形成し,先天性発育異常とされる疾患である。泌尿器系統では,主に腎に,Hamartomaを形成することで有名である。
 今回,両腎にAngiomyolipomaを伴つた本症の1例を経験し,腎病変を主体に本邦44例の統計的考察を加えて検討したので,ここに報告する。

膀胱尿管逆流時における膀胱内圧上昇と尿管蠕動および腎盂内圧の関係

著者: 土田正義

ページ範囲:P.49 - P.54

緒言
 膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflux VUR)のある場合,尿管の蠕動運動は膀胱内圧上昇時にどのような変化を示すだろうか。それに伴つて腎盂内圧はどうなるかという問題は,腎機能に直接関係する点で臨床上重要な意義を持つている。ところが従来この問題についての研究は非常に少なかつた。それは膀胱内圧を上昇させたときの尿管機能を知る優れた方法が知られていなかつたからである。
 現在尿管機能を知る方法としては,尿管内圧の変動曲線を記録するurometryが広く行なわれているが,VURがあれば膀胱と尿管内腔は直接交通するから尿管静止圧も上昇し,収縮曲線は記録できなくなつてしまう。またレ線映画法もVUR存在下では実際の尿管収縮運動と単に造影剤が尿管腔を上行する状態とを区別できない。このような点から私ども1)は尿管筋電図法がこの研究にもつとも良い方法であることを述べた。

尿膜管形成不全による尿膜管臍瘻の1例

著者: 高木隆治

ページ範囲:P.55 - P.59

はじめに
 尿膜管の先天奇型による疾患は,従来比較的稀であるとされてきたが,近年尿膜管に関する関心が高まるにつれてその報告も次第に増加してきた。最近著者は,尿膜管形成不全によると思われる尿膜管臍瘻の1例を経験したので報告する。

女子尿道憩室結石の1例

著者: 本永逸哉 ,   酒徳治三郎

ページ範囲:P.63 - P.65

緒言
 女子尿道憩室は現在それほどまれな疾患とはいえないが,女子尿道憩室における結石の合併は比較的まれである。
 われわれはこのたび,68歳の女子で排尿困難を主訴とし,結石を合併した尿道憩室の1例を経験したので報告する。

先天性膀胱臍尿瘻の2例

著者: 福岡洋 ,   寺島和光

ページ範囲:P.67 - P.75

緒言
 尿膜管開存による膀胱臍尿瘻は泌尿器科医にとつては周知の疾患であるが,典型的な症例に遭遇することは案外少ない。これは本症が特異な臨床像により良く知られている割には発生頻度が少なく,Campbell15)によると19,046例の剖検例中25例(1:761)をみたにすぎないという。本邦においても1967年に大和21)が22症例を,また1968年に土田ら17)が約50例を集計しているにすぎない。
 また報告例は泌尿器科あるいは外科で治療を受けており,境界領域の疾患という印象を受けるが尿膜管開存に臍帯ヘルニアなど腹壁の重篤な異常を伴つた場合は当然小児外科で治療を受けるべきである。最近当センター外科でも尿膜管開存を伴つた臍帯ヘルニアの1例を経験し,柴田ら16)が詳細を報告しているが,その後われわれも典型的な先天性膀胱臍尿瘻の2例を経験したので追加報告するとともに若干の文献的考察を加えた。

遺残膀胱症に対するtubeless vesicostomyの応用

著者: 松田稔 ,   高橋香司 ,   森義則 ,   永田肇 ,   坂口強 ,   柏井浩三

ページ範囲:P.77 - P.82

はじめに
 各種疾患により下部尿路を生理的な状態に維持することが困難となつた場合,各種の術式により尿管あるいはそれ以上のレベルでの尿路変向術(supravesical urinary diversion)が広く行なわれている。そしてその原疾患がたとえば神経因性膀胱や尿道狭窄のような良性疾患の場合には,膀胱は尿路とはまつたく隔絶された状態でそのまま放置されることが大部分であろう。このようになつた膀胱はほとんど無症状に経過することが多いが,時にはいろいろな病的症状を発する原因になることがあり,"bladder left behind1)"とか"for-gotten bladder2)","pyocystis syndrome3)"などの名でよばれ近年関心を寄せられている。筆者らも最近青年男子の難治性外傷性尿道狭窄に対し尿管回結腸S状結腸吻合術4)(ureteroileocolic sigmoidosto-my)を施行したのちに生じた空置膀胱に起因する合併症を経験し,その治療として性的機能を維持するため,膀胱全摘除術をおこなわず,Lapides5)により紹介されたtubeless vesicostomyをおこない好結果を得ることができたので,ここにその経験をのべ,あわせて本症のいくつかの問題点につき文献的考察をくわえて報告する。

外尿道口より脱出した尿管瘤の1例

著者: 松岡俊介 ,   岩本晃明 ,   小川勝明

ページ範囲:P.83 - P.87

緒言
 尿管瘤は,尿管膀胱移行部に発生する疾患としては比較的多く報告されてはいるが,尿道外にまで脱出せる症例報告は少ない。これは,尿管下端が嚢状に拡張し膀胱内に隆起する現象であり,発生原因や治療法についてなお今日でもいろいろと議論されている疾患である。私達は,最近尿道外に脱出せる尿管瘤の1例を経験したので文献的考察を加え報告する。

Urological Letter・157

恥骨上膀胱瘻へのCampbell's Trocarの応用

ページ範囲:P.75 - P.75

 今までは膀胱内へ十分な太さのドレナージチューブを恥骨上部から入れることは難しかつた。しかし,BardCatalogur #488の26FのCampbellのSuprapubictrocarが最もこれに適している。このTrocarの側管からは#22F,5mlのバルーンカテーテルを入れることができる。
 適応症としては経尿道的にカテーテルを入れることが好ましくない例で,しかも肥満体でなく,膀胱が充満された場合が望ましい。局所または全身麻酔のどちらを用いてもよい。まず初めに恥骨の上縁から上方5cmの処に小さい皮膚切開を行ない,#20の腰椎麻酔針を下方に向け,充満した膀胱の中に注意深く穿す。スタイレットを抜いてみて尿が噴出したら,急いでスタイレットを一旦元に戻しておく。ついで,針のすぐ下でメスを用いて直腹筋膜を切開する。次に,この針を導子としてTrocarを刺入する。このとき常に針の下側で針に接しながら刺入する。そしてTrocarの先が拡張している膀胱内に入つたと感じた時,導子として用いていた針を抜去する。

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内国文献

ページ範囲:P.89 - P.90


 腎血管性高血圧,河合喜孝:メディチーナ,10;(11),36,1973.
 高血圧と腎臓,尾前照雄・他:メディチーナ,10;(11),48,1973.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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