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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科28巻3号

1974年03月発行

雑誌目次

図譜 血管撮影シリーズ・3

多発性腎嚢腫

著者: 永井純 ,   田崎寛

ページ範囲:P.200 - P.202

〔X線検査所見〕
DIP所見(第1図)
 左腎上極に向う大腎杯は伸展し,中下極の腎杯は弧状に圧排され偏位している。右腎上極の腎杯は大腎杯も含めて弧状に圧排されている。中下極の腎杯は拡張し,棍棒状を呈している。右腎盂は外側に向い圧排されている(←印)。また,右腎中極の腎杯に円形の陰影欠損像を認める。腎輪郭については,このX線写真からは十分追跡できない。

図譜・413

腎部打撲を契機に発見された巨大水腎症

著者: 野辺崇

ページ範囲:P.204 - P.205

 患者 19歳,男子,地方公務員。
 主訴 右側腹部膨隆。

図譜・414

副腎疾患との鑑別を要した2症例

著者: 八木拡朗 ,   真崎善二郎

ページ範囲:P.206 - P.207

 〔症例1〕 22歳,女性。
 主訴 左季肋部から背部へ至る疼痛。

綜説

陰茎持続勃起症の最近の治療

著者: 白岩康夫

ページ範囲:P.211 - P.218

はじめに
 陰茎持続勃起症はきわめて稀な疾患とはいえず,泌尿器科医である限り,誰しも幾度か遭遇する可能性がある。その場合,どう対処するのが最善なのか一瞬戸惑うことがあるかと思う。そこで最近の陰茎持続勃起症に対する治療の動向を探り,それが治療方針決定の一助になれば幸いと考え,あえて筆を取つた次第である。
 陰茎持続勃起症は大別して神経因性,機械性,特発性に分けることができる。分類上の論議はさて置き,以下治療法について述べるが,癌浸潤や海綿体炎など局所的要因による機械性のものはそれに対する治療法も自ずから異なるわけで,ここでは特殊な場合を除外し,一般的な,特発性のものを中心とした治療法に限つた。

文献抄録

女子尿道癌について

ページ範囲:P.218 - P.218

 女子尿道癌は稀な疾患であるが,著者は1940年より1970年までに16名を経験して,その治験を報告すると共に,治療について言及している。
 尿道癌は尿道の前1/3に発生するものと,尿道後方に発生して膀胱へ浸潤するものと大きく2つに分けて考えられるが,両者のリンパ節転移の様子と,治療の予後は異なるといえる。著者の症例16名では10例が前部で,6例が後方尿道癌であつた。腫瘍の組織像は扁平上皮癌9例,腺癌3例,移行上皮癌2例,未分化癌2例で,扁平上皮癌が56.2%で従来の報告同様最も多かつた。著者の症例中にはカルンクルスとの共存例はみられなかつたが,Monaco (1958)らは16%に共存例を報告している。しかし,両者の関連については明確な見解はない。女子尿道癌の症状は血尿が最も多く,ついで頻尿,排尿困難,尿道部痛などが主症状である。男子では尿道腫瘍による狭窄症は普通であるが,著者例では16例中1例に尿道狭窄症で尿道拡張術を約1年にわたつてうけた症例があり,女子では癌による排尿困難は少ないといえる。

手術手技

インポテンスの手術療法—特にsilicone prosthesis陰茎内挿入手術について

著者: 白井将文

ページ範囲:P.219 - P.222

はじめに
 器質的インポテンスに対する治療法は大別して,1)陰部の器質的変化に因るインポテンスの治療,2)神経系の器質的変化に因るインポテンスの治療,3)内分泌性インポテンスの治療,4)器質的変化に因る射精障害の治療などに区別されている。
 これらのうち神経系統に器質的障害があるための勃起不能症に対してはこれまでほとんど治療が行なわれずに放置された状態にあつた。

症例検討

後腹膜腫瘤

著者: 小川秋実

ページ範囲:P.225 - P.230

 司会 腹部腫瘤の患者さんですが,診断が非常にむずかしく,レントゲン・フィルムの読み方にも問題のある症例です。
 A患者さんは63歳の女性で,主訴は左腹部腫瘤。現病歴は古くから始まつておりまして,昭和20年ごろ左季肋部に鶏卵大の腫瘤が出現したそうです。この腫瘤があるときには嘔気,嘔吐があつて,2日から1週間すると自然に消失しました。この間,下痢も腹痛もなかつたそうです。近医を受診したところ,腸カタルの診断で治療を受けておりました。その後も春ごろになると,同じような症状を繰り返していたそうです。ところが,昭和45年以降は,このような症状が一時おさまつています。

原著

尿路結石を合併せる腎細胞癌の長期生存例

著者: 福島克治 ,   宮崎公臣 ,   亀田健一 ,   久住治男

ページ範囲:P.233 - P.238

緒言
 腎細胞癌の大多数は血尿を初発症状とするが,この時期においてすでに癌病巣はかなり進展しているものが多く,本症の早期診断は必ずしも容易でなく,したがつてその予後も良好といえない現状である。今回われわれは,腎腫瘍がきわめて巨大であつたため,腫瘍摘除を術中に断念せざるをえなかつた腎細胞癌症例(尿路結石合併)が,試験開腹術後10年9ヵ月経過した現在なお転移形成もなく正常の社会生活を営んでおり,また腎盂癌と尿路結石の合併は約20%にみられているが,腎細胞癌との合併は稀であり,この2点から興味ある症例と考えられたので,ここに若干の文献的考察を加えて報告する。

腎盂内に鋳型状発育したWilms腫瘍の1例

著者: 川口安夫 ,   中村憲司 ,   佐々木忠正

ページ範囲:P.239 - P.243

はじめに
 最近,Wilms腫瘍の中でnon-visualizing kidneyの頻度が比較的高いことが報告されている。われわれは,腎実質が腫瘍で全部占有され,腎杯,腎盂内にも鋳型状に腫瘍発育し完全なnon-visualizingkidneyを呈した珍しいWilms腫瘍を経験したので報告すると共に若干の考察を試みた。

右腎周囲炎による下大静脈閉塞症の1例

著者: 加藤哲郎 ,   熊谷郁太郎 ,   高橋寿 ,   桑原正明 ,   宮川征男 ,   三浦邦夫 ,   根本良介 ,   所沢剛

ページ範囲:P.245 - P.252

緒言
 下大静脈閉塞症は種々の疾患によつて惹起されるが,泌尿器科領域においては腎癌の癌細胞塞栓に起因するものがよく知られているところである。下大静脈閉塞症の症状はその閉塞部位によつて異なるが一般には下肢の浮腫,腹壁静脈怒張,肝腫,腹水などによつて代表される。診断はこの特徴的な症状によつて下され,下大静脈撮影により確実となる。しかし,このような特微的な症状を現わさない例も少なくなく,とくに原疾患の病変が主症状をなす場合には診断がきわめて困難であつて,剖検にて初めて下大静脈閉塞が明らかにされることがある。
 最近,われわれは長い経過をたどつた右腎周囲炎に起因すると考えられる腎静脈分岐部を中心とした下大静脈閉塞症の1例を経験した。この症例は右腎周囲炎の増悪によつて後腹膜膿瘍を形成し,これらの症状が著明であつたために臨床的には下大静脈閉塞の合併に気づかなかつたものである。

両側単一性異所開口尿管症の1例

著者: 小柳知彦 ,   辻一郎 ,   折笠精一 ,   丸彰男 ,   平野哲夫

ページ範囲:P.257 - P.262

 異所開口尿管症はもはや稀な疾患でなく,これまでにも幾多の報告がある。大部分の症例は重複尿管と合併しており,診断治療の面でほぼ確立されたといつても良いであろう1,2,18,19)。重複尿管に伴わない異所開口尿管症は比較的稀である。これが一側性の場合,つまり偏側性単一性異所開口尿管の場合,診断はやや難しくなるが,治療法自体さほど問題はない。両側性単一性異所開口尿管となるときわめて稀であり,これまで欧米文献にも僅か33例の報告があるのみで1,3,4),本邦では学会報告例の中にThom Ⅱ型の異所開口尿管として僅か2例,奥山,沼里の累計の中に1例の記載があるが,いずれも詳細は不明であり,診断上疑問を残している16〜19)。両側性の場合,尿路に及ぼす影響も複雑となり,したがつて,治療もきわめて難しいものとなる。以下,最近当教室で経験した両側単一性異所開口尿管症の1例を報告し,その問題点について考察を加えてみた。

恥骨後前立腺剔除術の新しい止血法と手術成績

著者: シータンウン ,   斉藤豊一 ,   横溝圭治 ,   小川浩

ページ範囲:P.263 - P.267

緒言
 前立腺肥大症(以下BPH)に対する手術療法としては,もつとも多くおこなわれているのはTUR,恥骨上式,恥骨後式,会陰式という順序である1)。しかし,術中と術後の出血の多いことがこの手術の問題点であつて,内科の泌尿器科医によつて幾多の工夫改良がなされている。われわれもこの点について努力し,よい結果を得たので報告する。
 またこれに関して最近欧米と日本との報告のうち,その手術成績についてふれた論文は次のものがある(第1表)。

簡便法による血漿testosteroneのradioimmunoassay法

著者: 白井將文 ,   松田尚太郎 ,   中村護 ,   米沢健三

ページ範囲:P.269 - P.273

はじめに
 ヒトの血中には各種のsteroid hormoneが存在するが,中でもtestosteroneは睾丸間細胞で合成され,睾丸の内分泌機能を知る上にtestosteroneを測定することが是非とも必要である。最近血漿testosteroneの測定法としてdouble isotope derivativemethodとか,gas-liquid chromatographyやcom-Petitive protein binding assayなどいろいろの方法が行なわれている。一方1959年Yalow and Berson1)らにより抗原抗体反応を利用して血中のinsulinを測定するいわゆるradioimmunoassay法が開発されて以来,血漿testosteroneの測定にもこの方法が応用されるようになつた。Radioimmunoassay法は抗原抗体反応を利用するので非常に特異的であること,isotopeを使用すればきわめて微量でも測定が可能であるというきわめて巧妙な方法であり,現在ではこの方法を用いて血中に存在するほとんどの蛋白性ホルモンは測定できるようになつた。

尿道カテーテル留置による尿道炎に対する副腎皮質ホルモン・フラジオマイシン軟膏の予防的効果

著者: 中村宏 ,   矢島暎夫

ページ範囲:P.275 - P.280

緒言
 尿道カテーテルの留置によつて惹起される尿道炎は,日常の診療において泌尿器科医が頭を痛めるところである。しかし,これの予防にプレドニゾロン・フラジオマイシン軟膏が有効なことはすでにわれわれが報告したとおりである1)。今回は尿道粘膜に対する刺激がさらに少ないと思われる2つの軟膏,すなわちメチルプレドニゾロン・フラジオマイシン軟膏(ネオ・メドロールEE軟膏®)とベタメサゾン・フラジオマイシン軟膏(リンデロンVA軟膏®)との2種類を尿道カテーテル留置中の患者に使用し,その予防的効果について検討したのでここに報告する。

Urological Letter・159

前立腺癌の放射線治療

ページ範囲:P.252 - P.252

 泌尿器科医は会陰式あるいは恥骨後式前立腺根治手術が行なえるような早期の前立腺癌の発見のために注意していなければならない。しかし,不幸にも前立腺癌のほとんど多くの例は,もはや根治的手術ができないぐらいにまで進行した時期に泌尿器科医を訪れてくる。これらの例には尿流出障害を除くためにTURが行なわれる。そして更に治療を要する例にはスチルベストロールによる治療や除睾術を行なつて経過を観察する。これらの方法で治療された患者の多くは,その後数年間普通の生活をつづけ,しばしば他の疾患で死亡する。
 不幸にもこれらの患者のうちのあるパーセントの患者にはホルモン治療が無効である。この種の患者は泌尿器科医に苦情を訴える。骨盤内に限局しているステージBやCの群には5,500radsを3〜4週間中に毎日分けて2門で照射するのが最良の方法である。この方法である患者は2年以上も症状が消失したまま元気で生きている。多くの患者は尿線の勢いもすばらしく,排尿時の苦痛もまつたくなくなつている。

見聞録

ナイジェリアの泌尿器疾患

著者: 宮崎亮

ページ範囲:P.281 - P.284

はじめに
 アフリカ僻地における医療報告は本邦では未だに少なく,また泌尿器科疾患についての報告もほとんどない。
 著者らは1963年から3回にわたつて,ナイジェリア僻地において,現地人を対象に診療を行なつた1〜4)。これについては一部既に報告したが,今回は泌尿器科疾患を中心に記載する。

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内国文献

ページ範囲:P.285 - P.287


 実験的虚血性腎病変に対する副腎皮質ステロイド剤の効果,佐々木康彦:最近医学,28;(12),2434,1973.
 いわゆる特発性腎出血とアレルギー反応,飯倉洋治:小児科診療,37;(2),21,1974.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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