文献詳細
原著
右腎周囲炎による下大静脈閉塞症の1例
著者: 加藤哲郎1 熊谷郁太郎1 高橋寿1 桑原正明1 宮川征男1 三浦邦夫1 根本良介1 所沢剛2
所属機関: 1秋田大学医学部泌尿器科学教室 2秋田大学病理学教室
ページ範囲:P.245 - P.252
文献概要
下大静脈閉塞症は種々の疾患によつて惹起されるが,泌尿器科領域においては腎癌の癌細胞塞栓に起因するものがよく知られているところである。下大静脈閉塞症の症状はその閉塞部位によつて異なるが一般には下肢の浮腫,腹壁静脈怒張,肝腫,腹水などによつて代表される。診断はこの特徴的な症状によつて下され,下大静脈撮影により確実となる。しかし,このような特微的な症状を現わさない例も少なくなく,とくに原疾患の病変が主症状をなす場合には診断がきわめて困難であつて,剖検にて初めて下大静脈閉塞が明らかにされることがある。
最近,われわれは長い経過をたどつた右腎周囲炎に起因すると考えられる腎静脈分岐部を中心とした下大静脈閉塞症の1例を経験した。この症例は右腎周囲炎の増悪によつて後腹膜膿瘍を形成し,これらの症状が著明であつたために臨床的には下大静脈閉塞の合併に気づかなかつたものである。
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