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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科28巻4号

1974年04月発行

雑誌目次

特集 泌尿器科領域における生検

開放性腎生検

著者: 阿曾佳郎

ページ範囲:P.307 - P.312

はじめに
 腎炎のような汎発性腎疾患の診断,治療,予後判定の上に腎生検が有力な手段となつていることは周知の通りである。この腎生検の施行法については,大きく三通りに分けることができる。第一に最もポピュラーな方法は経皮的生検法であり,これにもVim-Silverman針を用いるpunch biopsy法とTurkel針によるaspiration biopsy法がある。
 第二はわれわれが主として行なつている開放性腎生検であり,第三は開放性に腎の一部を露出し,腎を確認した上で針を用いて生検材料を採取する方法である。第三の方法は第一,第二の法を折衷したようなやり方であるが,あまりポピュラーなものではない。ここでは第二の開放性腎生検法につき述べ,経皮的生検法と比較して,その利点,欠点について論ずることとする。

経皮的腎生検法の問題点

著者: 日台英雄

ページ範囲:P.313 - P.322

はじめに
 非観血的方法で行なわれる経皮的腎生検法が1951年IversenおよびBrun1)らにより確立されてから四半世紀近い時間が経過し,本邦でもIversenに3年おくれるのみの1954年に木下ら2)により実施され紹介されて以来,多くの先人の努力により本法は一般病院での日常検査法の一つとしてとりいれられるまでに普及するようになつた。
 全国大学内科教室および300床以上の一般病院内科に対して行なつた木下のアンケート調査3)によれば,すでに1966年8月までに9,695名に対して経皮的腎生検が行なわれており,また今回著者が1973年末までに医学中央雑誌に収録されている本邦医学文献について調査したところでは腎生検に関する論文は65,学会報告をいれると122にも達し,合計5,081例の経皮的腎生検例について方法,病理組織像,臨床的意義,組織像と他の検査所見や臨床経過との相関関係などに関する報告がなされている。

TURによる膀胱生検

著者: 小柴健

ページ範囲:P.327 - P.336

はじめに
 膀胱腫瘍の診断は膀胱鏡によつて比較的容易になしうる。熟練した専門医であれば,その所見によつて腫瘍の悪性度に関してもおおよその見当をつけることができ,それが組織学的検査結果とかなり高率に一致することはすでに知られている。しかし一方,膀胱腫瘍も比較的大きなものでは全体が同一の組織学的悪性度のものであるとは限らず,比較的低悪性度の腫瘍の一部に高悪性度の所見が認められたり,多発性腫瘍においてもそのすべてが同一悪性度とは限らず,その一部のものに悪性度,浸潤度の異なつたものが見られるのも事実である。したがつて従来しばしば行なわれてきた経尿道的な生検鉗子による生検では,病変全体の臨床像を正確につかむには不十分であるといえよう。
 著者は昭和35年以来,もつぱらTURにより膀胱内の諸種生検を施行しているので,その経験ならびに臨床的価値に関する考察についてのべることにする。

直視下細胞診・生検併用型螢光膀胱鏡ユニットの開発—in situ癌の早期発見のために

著者: 三谷玄悟 ,   横川正之

ページ範囲:P.337 - P.344

まえがき
 膀胱腫瘍の予後は一概に良好とも不良とも決めるにはあまりにも多様である。予後の良いものはあくまでも良く,腫瘍の初発以来10年以上も生存するものは74例中26例,つまり35%にも至つている(東医歯大統計)。一方悪いものは極めて予後不良で,2年以内に死の転帰をたどるものは15%(同統計)もある。後者の予後の悪い腫瘍群では,しばしば非乳頭状で時にはほとんど内腔増殖を示さないことがある。しかもこのような病巣は未だ大きく増殖しないうちにしばしば浸潤性である。当然のこととして,この種の増殖性病変に対しては早期に内視鏡的に見出し,生検することが望ましい。それも可及的,数多くの標本を多面的に摘出して(mutiple specimens),病理学的悪性度を決めることが肝要であろう(Rubinら1968)。
 ところで,膀胱内の腫瘍性病変に対する病理組織学的検索を行なうにあたつて,提供されている経尿道的試切標本が極めて不都合に切除されているのを著者らはときに経験してきた。

前立腺生検

著者: 岡本重禮

ページ範囲:P.349 - P.354

はじめに
 前立腺疾患の診断としてもつとも信頼性が高いのは直腸診であり,この方法が洋の東西を問わず広く普及している所以である。熟練した泌尿器医の右示指が前立腺疾患特に前立腺癌の鑑別に重要な役割を演じていることはいうを待たない。しかし,この直腸診による診断にも自ずから限界があり,たとえば肉芽腫性前立腺炎(Granulomatous prostatitis)と前立腺癌の鑑別はほとんど困難であるし,前立腺癌の直腸診による的中率も著者ら1)の統計では65%となつている。Kaufman2)によれば前立腺被膜外に浸潤した前立腺癌すなわち非治癒期にあるものでは90%の的中率であるが,治癒期にある早期癌では47%と的中率が低くなつている。
 一方,前立腺癌の治療は漸く反省期に入り,単にホルモン療法だけによらず,他の治療法との併用療法が要求されるようになつてきた。そのためには,前立腺癌の浸潤度も的確に決める必要がでてきている。これらの要求をみたすためには直腸診だけでは当然足りないわけであるが生検をうまく利用するのも一策である。

電顕写真とその所見—特に糸球体について

著者: 坂口弘

ページ範囲:P.355 - P.364

 泌尿器科領域においても腎生検を行なう機会が次第に増えてきたようである。内科,小児科領域の腎疾患,腎炎,ネフローゼ症候群では,光顕のみならず,できれば電顕,螢光抗体法を行なうことがよいとされ,われわれの所でも腎炎,ネフローゼ症候群はすべて光顕とともに電顕用の包埋を行なつている。今日,腎臓病学,病理学の学会誌に報告される腎臓の組織変化を論ずるものでは,特殊なものを除いては大部分のものが光顕とともに電顕所見に言及している。このことは,腎臓では電顕所見の読み方が一部の人のものではなく,これに関心をもつ人は誰でも一応は知つていないと腎臓の組織学に関する文献が読みこなせないということになる。そうはいつても,医学が専門分化し,そのすべてに通饒することは至難なことで,光顕所見もあまり得意でない多忙な臨床家に腎臓の電顕所見まで要求することは少々酷であると思われる。
 日常電顕に関する仕事に従事して,各方面からいろいろの試料を依頼されると,中には電顕で一体何をみてくれというのだろうか,この人は電子顕微鏡というものを知つているのだろうかと思わせられることも少なくない。

上部尿路の走査電子顕微鏡による観察

著者: 高田準三

ページ範囲:P.369 - P.376

 組織の表面微細構造を拡大し観察する手段として,最近走査電子顕微鏡(以下SEMと略す)が医学領域に使用され始めている。
 この装置の原理は1935年にKnollによつて発表されたが,当時の電子顕微鏡の開発主眼が分解能の向上におかれたこと,および技術的問題などから,透過電子顕微鏡(以下TEMと略す)に研究が集中された。その結果,TEM装置が完成し,医学領域でも早くよりTEMによる研究が始められ,多くの業績が蓄積されている。

尿の細胞診—とくに剥離と再生の立体的観察について

著者: 田崎寛 ,   木下英親

ページ範囲:P.377 - P.384

はじめに
 近年,尿路癌の診断法の1つとして細胞診が注目されているが一般的には補助診断法の域を出ず,病理組織診断との間には依然大きなgapが存在する。
 尿の細胞診が補助診断法の域を出ない一つの理由は,目的とする細胞が尿中できわめて多様性のある形態学的な修飾を受けることにある。さらに泌尿器科領域の内視鏡とX線検査の進歩が著しいのに比べて細胞診には技術の自動化以外に見るべき進歩がなく,Papanicolaou法のclass分けにのみ終始するisolateされた領域"細胞診の世界"を造つていることにあると思われる。

図譜 血管撮影シリーズ・4

腎過誤腫

著者: 永井純 ,   田崎寛

ページ範囲:P.300 - P.302

〔X線検査所見〕
腹部大動脈造影(第1図)
 左中腹部にX線透過性を持つ巨大な腫瘍が存在する。左腎動脈は大動脈基始部より下方に圧排伸展され,左腎上極に向かう腎内動脈分枝は,この腫瘍を取り囲むように円孤状に走行する。すなわち,左腎上半分に巨大なX線透過性を持つ腫瘍があり,この腫瘍により左腎下半分は下方に圧排されている。

文献抄録

両側腎腺癌の腎摘出症例と文献的考察

ページ範囲:P.322 - P.322

 腎癌は生体の悪性腫瘍の2.8%に発生し,米国の1971年の1年間で約6,700名が死亡している,妊婦に腎癌をみることは極めて稀であるが,著者は24歳の妊婦に発生した両側性腎癌の摘出症例を報告し,併せて文献的な報告を行なつている。
 著者の症例は24歳の白人の妊娠4ヵ月の婦人で,右季胸部に10×15cmの腫瘤を主訴に入院した。血液とその生化学的検査ではまつたく異常を認めないが,IVPおよび腎選択的動脈撮影により右腎腫瘍と診断して腎摘施行,組織は淡明細胞癌であつた。摘出時に反対側の腎触診で3個の硬結が触知され,左側にも腫瘍の存在を認めたので,日を改めて重要臓器・骨などに転移のないことを確認のうえ左腎をも摘出し,以後人工透析を行なつている。

Urological Letter・160

前立腺癌の生検—根治手術標本では癌は否定

ページ範囲:P.354 - P.354

 67歳の患者を診たが,前立腺の左葉に硬い部分があつた。IVP,膀胱鏡検査,血清酸フォスファテースの検査などを行なつたが,いずれも正常であつた。シルバーマン針で会陰式に生検を行なつたところ,病理の解答は前立腺の浸潤性腺癌ということであつた。そこで1970年11月に根治的前立腺摘出術を行なつた。ところが,この摘出標本については何ヵ所も繰り返ししらべたが,悪性所見はないという答が病理から返つてきた。そこで多くの病理学者が前の生検標本や摘出標本について検討した。そして総ての人が初めの診断に同意した。
 この患者は今日でも健康である。手術して以来,レ線学的にも臨床的にもまた生化学的にもまつたく前立腺癌の徴候は出ていない。この明らかな矛盾を適切に説明できるものはない。しかし,あえて考えれば次のことが挙げられる。

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内国文献

ページ範囲:P.385 - P.385


 レニン・アンジオテンシン,アルドステロン系の分泌 調節とその異常—レニン・アンジオテンシン系を中 心として,国府達郎:代謝,臨102,1974.
 —アルドステロン系を中心として,熊谷朗・他:代 謝,臨117,1974.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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