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雑誌目次

雑誌文献

臨床泌尿器科29巻11号

1975年11月発行

雑誌目次

図譜・449

Cirsoid Angioma著明な小児の腎性高血圧症例

著者: 斯波光生 ,   大橋伸生 ,   丸彰夫 ,   寺島光行

ページ範囲:P.904 - P.905

 症例 12歳,女児。
 主訴 めまい。

図譜・450

腫瘍を合併した膀胱憩室内結石の1例

著者: 黒田泰二 ,   日根野卓 ,   藤井昭男 ,   守殿貞夫 ,   斉藤宗吾

ページ範囲:P.906 - P.907

 患者 矢○仁○,85歳,男性。
 主訴 血尿と乏尿。

図譜 走査電顕図譜・5

腎(5)

著者: 野田進士 ,   河田栄人 ,   江藤耕作

ページ範囲:P.908 - P.909

 腎乳頭の表面は腎杯の表面を包む移行上皮に被われ,その内部はHenle係蹄,集合管,乳頭管などからなる。
 試料と方法 試料は正常マウスより得た。グルタールアルデハイトにて還流固定後細切し後固定を行ない,Critical point法にて乾燥,Au-Pdを蒸着し観察した。

綜説

進行性腎癌の治療と予後

著者: 田崎寛 ,   畠亮 ,   勝岡洋治

ページ範囲:P.915 - P.924

緒言
 腎癌とは正確には腎腺癌であり,一般に言うGrawitz腫瘍またはhypernephromaである。腎腫瘍としては腎癌のほかにWilms腫瘍と腎盂腫瘍を含めて記載される場合が多いが,ここではいわゆるGrawitz腫瘍についてのみ述べることにする。
 Grawitz腫瘍は古くからhypernephroma(副腎腫)という名が使われて,その組織像の類似性から副腎組織の迷入によつて発生するという考え方が支配的となつていた。1960年代に電子顕微鏡による観察1)で近位尿細管のbrush borderに類似の構造が認められた結果,腎の尿細管上皮細胞を起源とするという結論に落ち着いた。したがつてGrawitz腫瘍は腎癌または腎腺癌という考えがようやく定着しようとしている現状である。腎癌のこのような発生母地に関する混乱以上に臨床像の多彩性はむしろこの腫瘍の特徴と言つてよい。それはGrawitz腫瘍の原発巣自体によるよりも転移巣によるもののほうが先行し,しかも重要である場合が多い。

シンポジウム

膀胱尿管逆流

著者: 辻一郎 ,   土田正義 ,   酒井晃 ,   生駒文彦 ,   川村猛 ,   瀬尾康平 ,   折笠精一 ,   高村孝夫 ,   三品輝男 ,   大田黒和生 ,   園田孝夫 ,   新島端夫

ページ範囲:P.927 - P.945

はじめに
 辻 Hutchが幼小児や成人女子の慢性あるいは頻回再発性腎盂腎炎との関連においてVURが従来考えられていた以上に重大な意義をもつことを強調すると共に積極的逆流防止手術を提唱して以来,VURは泌尿器科以外の臨床各科とも関係の深い問題として広く注目されて来た。病因・診断・治療に関し今日まで応接にいとまがない程多数の研究発表が続いているが,この問題は極めて複雑で今日なお諸家の意見にはかなりの対立があり,殊に幼小児期のVURの意義とその治療方針(逆流防止手術の適応と時期)については混乱が多い。泌尿器科学会としてこの問題を主題目として論ずるのは今回が始めてである。Hutchの問題提起以来20年を越え,わが国のVURに関する本格的研究も漸く10年に達した今日,この難問を総会シンポジウムとすることはまさに時機にかなつており,この企画をされた新島会長に敬意をささげたい。
 なお本日は,問題を複雑にしないため,明らかな下部尿路通過障害や神経因性膀胱に合併するVURは除き,いわゆるprimary or non-obstructive VURにしぼつて論議を進めることとしたい。

原著

腟転移を来した腎細胞癌の1例

著者: 中村順 ,   新家俊明 ,   大川順正 ,   井手辰夫

ページ範囲:P.949 - P.954

緒言
 腎腫瘍が発熱や多血症もしくは高Ca血症といつた非特異的な症候を契機にして発見されたり,また無症候に経過していたものが転移を来し,そのために発見されたりすることは珍しいことではない。しかしながら,一般に腎腫瘍の転移は肺,肝,腎やリンパ節に起こることが多く,腟や外陰部へ転移することは極めて稀とされている。
 著者らは,最近,腟壁に発生した腫瘤の生検により腎腫瘍の転移と診断され,精査の結果,右腎腫瘍が発見された症例を経験したので,ここにその詳細を報告する。

結石による巨大水腎症を合併した腎癌の1例

著者: 森田隆 ,   松村文隆 ,   桑原正明 ,   石館卓三 ,   渋谷昌良

ページ範囲:P.955 - P.958

緒言
 Renal cell carcinomaは腎腫瘍中最も多く,国内国外において多数の報告例がある。しかし,Renal cell carcinomaに結石の合併することは少なく,本邦においては23例の報告例があるにすぎない。最近われわれは腎盂尿管移行部に陥入した結石により生じた巨大水腎症を合併したRenalcell carcinomaの症例を経験したので報告する。

腰椎骨折を伴つたクッシング症候群の社会復帰への経過について

著者: 田口裕功 ,   山田哲夫 ,   福岡洋 ,   斉藤清

ページ範囲:P.959 - P.964

緒言
 1932年,Cushingが下垂体前葉の好塩基細胞の機能亢進によつて生ずる疾患をpituitary baso-philism (クッシング病)と報告した。その後内分泌学の進歩により一次的に副腎皮質の機能亢進によりコルチゾールの分泌過剰を来すものをクッシング症候群,病因が下垂体にあるものをクッシング病として区別している。
 本邦においても1937年黒岩の第1例目の報告以降多数の症例が報告されている。われわれも副腎皮質過形成による本症候群の1例を経験した。自験例では骨粗鬆症に加えて急激な体重増加のため腰椎骨折を合併し,比較的特異な臨床経過を示した。治療として一側副腎の約1/5(1.0g)を残す副腎亜全摘を行なつた。しかし,術後改善がみられず副腎全摘を実施しなければならなかつた。わずか1.0gを残した副腎が6.8gの大きさに腫大していた。術後満2年になるが臨床的に治癒し,ネルソン症候群の発現もみない。社会復帰の過程を報告し,若干の文献的考察を試みた。

先天性膀胱憩室の1例

著者: 松野正 ,   稲田文衛 ,   小柳知彦

ページ範囲:P.965 - P.969

 小児の先天性膀胱憩室は,従来稀とされている。われわれは,最近生後5ヵ月男子の1例を経験したので,ここに報告するとともに,本症に関し若干の考察を加えた。

男子尿路性器とHerpes simplex virus—特に前立腺癌を中心に

著者: 廣瀬欽次郎 ,   今尾貞夫 ,   松本恵一 ,   瀬戸輝一 ,   川名尚

ページ範囲:P.973 - P.977

緒言
 単純性庖疹ウイルス(Herpes simplex virus,以下H.S.V.と略記)により極めて一般的なvirus感染症が招来され,種々の臓器への感染例が報告されているが,このvirus自体のnatural historyについてはなお今のところ不明の点が多々ある12)。
 H.S.V.は抗原的に異なる2型に分類され,そのI型は口腔,皮膚,眼球結膜など非性器系に,一方II型は女性性器系より分離される頻度が高いとされ,II型の感染経路が性病的観点より論議されつつある3)。また近年,H.S.V.II型は子宮頸癌との関連より注目を浴び4),子宮頸癌の疫学的解析より,初交年齢が若く,かく雑婚者にその発生頻度が高率であるとの報告56)より,子宮頸癌の病因論が性病的観点より論議され性行為により伝染する発癌物質の一つの候補としてあげられて来た。

陰茎壊死をきたしたWegener's granulomatosisの1例

著者: 松田尚太郎 ,   光川史郎 ,   石井延久 ,   白井将文

ページ範囲:P.979 - P.982

緒言
 Wegencr’s granulomatosis(以下WGと略す)は1931年Klingerによつて始めて記載されたが,1936年Wegener1)の報告以来一つの独立疾患として扱われるようになつた。これは気道とくに上気道の壊死性病変が先行し,ついで全身に撒布性病巣を生じて各臓器の症状を呈しついには死に至る予後不良な疾患である。全身撒布性病巣の一つとして生殖器や会陰部に潰瘍や壊死を認めたという報告は少なく,Stewart2)が女性会陰部に潰瘍を認め,長田ら3)が陰茎壊死を認めたと報告しているのみである。
 われわれも今回陰茎壊死をきたしたWGと思われる1症例を経験したので若干の文献的考察を加えてここに報告する。

文献抄録

腎腺癌の臨床経過観察と化学療法の経験

ページ範囲:P.954 - P.954

 著者らは1960年から12年間にPeter Bent Brigham HospitalとSidney Faber Cancer Centerにて105例の腎癌を経験し,うち腺癌の84例につき臨床観察と治療,予後などにつき報告している。
 症例は39歳より84歳にわたり,男女比は2対1であつた。主訴として局所的腫瘍による三主徴を示したもの39例(50%),転移巣症状を主訴にしたもの23例(29%),その他16例(20%)となつている。転移部症状を主訴とした23例についてみると,骨転移の疼痛,病的骨折15例,肺症状5例,中枢神経系2例,リンパ節腫脹1例である。

Urological Letter・177

下部尿管結石に対する新尿管切石術

ページ範囲:P.969 - P.969

 バスケット・カテーテルでは安全には除去できない下部尿管結石を摘出する私のやり方を述べよう。
 下腹部にホッケークラブ型切開(hockey-stick incision)を行ない,適宜に筋肉を分けて後腹膜腔に入る。尿管を探し出しベンローズドレンをその下に通しておき,尿管に2カ所牽引糸をかける。ついで尿管に小切開をおき,その切開口からドルミアバスケットを下方に向けて入れ結石を越えて進める。この方法で下部尿管結石の約70%は摘出できる。つまり,70%の例においてはこのドルミア手法で難かしい下部尿管の切石術を手早くて簡単な手技に変えることができるわけである。

小さな工夫

包茎手術における工夫

著者: 三品輝男

ページ範囲:P.983 - P.983

 真性包茎および仮性包茎でも亀頭包皮炎などの合併症を繰り返す場合には包茎手術の適応となる。小児の場合にはすべてdorsal incisionにて十分であるが,成人の場合にはcircular incisionが望ましい。日常茶飯時の手術であるとは言え,いろいろな点で種々な工夫がこらされているが,私の行なつている方法について述べてみる。

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内国文献

ページ範囲:P.984 - P.985


 ○最新のスクリーニング検査法特集一腎臓,白井 洸:  臨床と研究,52;(9),38,1975.
 ○実験的水腎におけるPlasminおよびPlasmin関連酵  素の研究,宇山 健:西日泌尿,37;(5),693,1975.

基本情報

臨床泌尿器科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1332

印刷版ISSN 0385-2393

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