文献詳細
原著
腰椎骨折を伴つたクッシング症候群の社会復帰への経過について
著者: 田口裕功1 山田哲夫1 福岡洋1 斉藤清1
所属機関: 1国立相模原病院泌尿器科
ページ範囲:P.959 - P.964
文献概要
1932年,Cushingが下垂体前葉の好塩基細胞の機能亢進によつて生ずる疾患をpituitary baso-philism (クッシング病)と報告した。その後内分泌学の進歩により一次的に副腎皮質の機能亢進によりコルチゾールの分泌過剰を来すものをクッシング症候群,病因が下垂体にあるものをクッシング病として区別している。
本邦においても1937年黒岩の第1例目の報告以降多数の症例が報告されている。われわれも副腎皮質過形成による本症候群の1例を経験した。自験例では骨粗鬆症に加えて急激な体重増加のため腰椎骨折を合併し,比較的特異な臨床経過を示した。治療として一側副腎の約1/5(1.0g)を残す副腎亜全摘を行なつた。しかし,術後改善がみられず副腎全摘を実施しなければならなかつた。わずか1.0gを残した副腎が6.8gの大きさに腫大していた。術後満2年になるが臨床的に治癒し,ネルソン症候群の発現もみない。社会復帰の過程を報告し,若干の文献的考察を試みた。
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